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振り返ると誰もいない、クエストしかいない

いつのまにかブックマークや評価をして頂いたようでありがとうございます。

今後も精進して面白いと思ってもらえるように書いていけたらと思います。

「ああ、ああ」

「その、すまん。そんな大事なものだとは思わず」

「ああ…」

「ごめんて」


目の前で粉々になったウサギの仮面をかき集めていたらおっさんに謝られた。

うん、全然気にしてないさ。

俺だっていい大人さ。

ただちょっと心の整理に時間がかかるだけで。

拾い集めたらくっついたり…しないね、うん。

カチカチと粉々に欠片を合わせても戻らない。

あはは、戻らない。

戻らないよー。


「本当にすまん」


何度も何度も誤ってくるおっさん。

っていうかNPCの筈なのにやけに感情豊かというか。

新しいゲームはやっぱり一味違うねー。

だからと言って仮面を壊されたことは一生忘れないけど。


「うん、気にしてないから」


嘘だけど話を聞かないことには先に進まない。

というよりおっさんという情報以外この人のことを知らない。

結局お願いして裏から持ってきてくれた箒で壊れた仮面を一緒に渡されたゴミ袋らしきものにいれて供養(廃棄)する。

さらばウサギの仮面。

キミのことは忘れない。


「まずなんでそんな物騒なもんで構えてたんですか?他に人も見かけませんし」

「ああ、そのことなんだが」


まずこのおっさんは酒場件冒険者ギルトを兼ねてるここのオーナーでサモレさんというらしい。

冒険者ギルドとは平たく言えばフリーターのための依頼の斡旋所らしい。

どうも就職できない、親の跡も継げないみたいなろくでなしのやつらのためにあるらしい。

どこの世界も就職難ですか。

世知辛い。

それでそういう冒険者という名のフリーターを使い、この町の警備とか危険なモンスターの狩りを依頼していたらしいのだが。


「ある日を境に町の外に出た商人や冒険者が全員戻ってこなくなった。

原因究明のために依頼をだしたがそれを請けた連中も帰ってこなくなった。

そしてとうとう町の中でもいなくなるやつが出てきた。

それ以来外に出ると『何か』に連れ去られると思って誰も外にでなくなっちまった」


だから無人だったのか。

ノックしても反応が無かったのは家に誰もいない、というより隠れてたんだな。

納得納得。

でもゲーム始めたばっかなのにいきなり問題が発生してるとは。

始まりの町ローグとか言ってたけど、これ何もしなければこの町滅ぶのでは?

いいのか運営これで。

全然他のプレイヤーとも会わないし。


「だからあんたが来たときはてっきり俺を連れ去りに来たモンスターかと。本当にすまない」


と過剰なぐらい謝ってくる。

話を聞いてみるとどうにも『ブギー』である俺を撃ったことがとてもまずいことらしい。

人間の言葉を喋るが姿かたちは異形そのものである存在。

国からもし現れても敵対はするなとお達しが出ているらしい。

めっちゃ撃たれたけど。

それがバレるのが嫌ということで。


「おまえさんを撃ったこと、黙っててもらっていいかな?」


テへへと頭をかきながら恥ずかしそうにこちらを上目遣いしてくるおっさんの図。

うん、あとで絶対チクってやろう。

サモレさんの断罪を心に決めていたら上目遣いのままサモレさんが急に動かなくなった。

この図はやっぱりきつい、じゃなくて、あれ?


「おーい、サモレさん?大丈夫ですか?」


反応なし。

お約束の手を顔の前に持ってきて振ってみる。

反応なし。

鼻の穴にまだ落ちてたウサギの仮面の欠片を突っ込んでみる。

反応なし。

鼻に詰め物をして上目遣いしてるおっさんの図が出来ただけだった。

これはなんだろう?

何かのバグだろうか。

額に肉を書いたりするべきだろうか?


そう思っているとサモレさんの後ろに等身大の鏡が。

光を発している。

自己主張が強い鏡である。

ステータス画面を見たときの鏡に似ているような。

どうにも怪しさ満点だが光のアピールが激しいし、

なんかサモレさん止まっているしで手詰まりなので鏡に触れてみる。

そうすると文字が浮かびあがってきた。


『消えた住人を元の世界へ帰る手伝いをされますか?』

『消えた住人を見捨て新たな町へと移動されますか?』


上下に選択肢らしき言葉が浮かびあがる。

これがチュートリアルで言ってたクエストか。

っていうか選べるのね道が。

二つ目の選択肢、好奇心で選んでみたい気持ちもあるけど。

見捨てたら絶対後味悪いよなー。

まあ始まったばっかりだし王道っぽいので行きましょう。

さっさと選ばないとサモレさん固まったまんまっぽいし。

上の選択肢に触ればいいんだろうか?

軽くまた鏡に触れてみると文字が消え、鏡の謎発光が止まる。


よし、じゃあもっと詳しい話をサモレさんに聞かないと。

地理とか分かんないし。


「あのー、サモレさん。さっきの話の続きなんだけど」


とサモレさんに話かけてようとすると。

いない。

振り向いたらそこには誰もいませんでした。

普通に怖いんですが。


「あの、サモレさん?悪ふざけはやめて出てきてくださーい」


もう少し大きな声で呼びかけるが反応しない。

やまびこでも帰ってきそうなぐらい異様な静けさ。

どこかおかしい。

何かがさっきと違う。

何がどう違うと言われてもただどこか、空間が広くなったような。


そこで初めて周りの景色がおかしくなっていることに気づく。

周りの配色がさっき見たのと変わってきている。

先ほど入ってきた扉を見ると赤く染まっている。

そこから浸食するかのように周りが赤と黒で塗りつぶされていってる。

建物そのものは変わらないのに。

そして全部の色が赤と黒に塗り替わった後に、頭の中で声が聞こえた。


『クエスト:捕らわれた住人を開放せよ』


うん。

よく分からないんだけど。

普通に怖いんですが。

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