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チュートリアルは唐突に終わる

あらためて自分の姿をマジマジと見つめる。

やっぱり不気味だ。

まずピエロが黒着ちゃダメでしょっていうね。

しかも仮面の目の部分からダラダラ流れ出てくる赤い液体(断固として血液だとは認めない)も怖いし。


そうですね。

完璧悪サイドの恰好ですねこれは。

これは果たして意図されてこうなのか、それとも単純に俺の運の問題で自動でこうなったのか。

その辺を確認したい。

ようは谷崎さんの嫌がらせでこうなったのか自業自得でこうなったのかを確認したい。

なぜかって?

後で谷崎さんにネチネチ文句言うためですよ。もちろん。

どこに責任の所在があるのかを確認するのが大人の気味ですよ。


しっかし本当に自分の姿が怖い。


『お似合いですよ』


とチュートリアル妖精のワンドがフォローしてくる。

激しく黙ってください。

そのフォローがまた突き刺さります。

そしてもう外見のことはどうでもよいとばかりにワンドが先に話を進めてしまう。

冷たいのね最近のNPCって。


『まずこの世界であなた様にして頂くことは世界を平和へ導くことです。方法はいくつかございますがモンスターを狩られたり、クエストをこなして頂くなどの方法が『一般的』とされております。』


ふむふむ。

王道RPGと似たような展開ではある。

でも自分のキャラが世界を平和へ導く姿がどうにもしっくりこない。


『仮面マトイ様はこの世界の人類を救済するため生まれた『願い』が形になったものです。その願われた存在皆様のことを異端者、こちらの世界ではブギーと呼ばれるもの達です。システム的に言えばあなたが潜在的に抱えた願望を叶えるキャラとしてこの世界で新たな自分として作られました、あなたの願望の形です』


人類救済まではわかったけどこのキャラが俺の願望?

嘘でしょ?

こんなホラー映画でしか出ないような姿をしたやつになりたいなんて思ったこともないぞ?


『ちなみに他のテストプレイヤーのキャラメイクの中にはこんな方もいらっしゃいます』


お、やっぱり俺の他にもテストプレイヤーいたんだ。

そりゃそうか一人や二人だけじゃテストにならないよな。

そして気になる。

自分の姿がまともな方なのかヤバめの方なのか。

と目の前の鏡に俺の姿ではなく別の姿が映りこんだ。

そこに映っていたのはなんとゾンビでした。

ゾンビ?


「ゾンビが映ってるんだけど」

『そちらが別のキャラクターの生ける屍様です』


うん。

どうやら俺はまだマシな方らしい。

仮面マトイ万歳。

っていうか長いな。

マトイでいっか。

マトイ万歳。


『ちなみに他にも幽霊船長、巨大蝙蝠様など様々な方が誕生しています』


幽霊船長はカッコよさそうで正直羨ましい。


『続いてはステータスの説明に入らせて頂きます』


あー。

正直MMOで一番面倒なのがこのステータスの管理だったりする。

自由度が高すぎてスキルどんどん覚えていった後、無駄になっているものもしばしば。

ぶっちゃけHPとMP?

ぐらいのレベルでいいんだけど。

技が4つしか使えない昔のゲームとか。


『ステータスと唱えて頂くと情報が開示されます』


文句を言っても仕方がないので言われたとおりにする。


「ステータス」


すると目の前の鏡がまた変化し、文字に変わる。


名前:仮面マトイ

種族:???

HP:1/1

異能:ジャグリング、血涙、仮面収集、仮面憑依


あれ?

これだけ?

っていうか嫌な予感がするものがいくつかあるんだが。


「ほかに情報はないの?」

『はい、こちらのみでございます』

「少なくない?」

『はい、こちらのみでございます』

「これって後で情報が開示されたりとか」

『質問の意図がわかりかねます』


急にポンコツになったワンダさん。


「いくつか確認したいことがあるんだけど、まず種族???って」

『種族???はよく分からない生き物の総称です』

「はい?」

『種族???はレアな種族ですよ。何せ情報が他に当てはまらないぐらいしかありません』

「ちなみに幽霊船長は?」

『種族:ゴースト になりますね』

「ちなみに普通の人っていうのは」

『もちろん種族:人族 の方もいらっしゃいます、おもにこの世界の住人ですが』


プレイヤーにはほとんどいないのね。

うんよく分かった。


「あとHP1?って」

『仮面マトイ様のHPが1ということです』

「これって攻撃くらったら?」

『死にますね』

「転んだら?」

『死にますね』

「足の小指をタンスにぶつけたら?」

『それですと2ダメージなのでオーバーキルですね』

「だめじゃん」


嘘でしょ?

ゲームの自分がこんなに虚弱になっているとは。


「なんでこんなにHPないの?」

『仮面マトイ様の本体はその仮面となりますが、すべての衝撃がその仮面に伝わります。仮面が少しでもヒビが入るような衝撃をうけますと死にます』

「ちなみに死んだら?」

『とくに大きなデメリットは。しいて言うなら所持金が半分になり、以前泊まった町からのスタートになることぐらいですかね』

「それはぐらいとは言わないのでは」

『おお勇者よ、死んでしまうとは情けない』


どこからか王冠と付けひげを取り出し、どこぞの王様になりきるワンダさん。

なぜそこだけ忠実に再現するのだろうか。

嘆いてもしょうがないのでとにかく死なずに町に泊まることを目標とする。


そして最後、一番重要なのが異能。

ジャグリングはもう聞かなくてもわかる。

絶対これ使えない能力だ。

運営(谷崎さん)の悪意を感じる。


「ちなみにこの異能っていうのは」

『他のゲームでいうところのスキルとなります』


そこはメタるのね。

適当なのねワンダさん。


「このジャグリングっていうのは?」

『鍛えればストリートパフォーマーとして稼げます』


うん、やっぱり使えない能力だった。


「この血涙っていうのは」

『目から血がいっぱいでます』

「・・・」

『何かご不満でも』


どうしよう。

これってキャラを作り直さないといけないレベルではずれを引いたのでは?

っていうかやっぱり流れてたの血なんですね。


「えっとじゃあ、この仮面収集は?」

『倒された敵の顔を剥ぎ、仮面を作成することができます』

「怖っ!」


薄々思ってたことだけど絶対俺のキャラ、ヒーローとか勇者ムーブできねぇ。

嬉々として狩ったモンスターの顔を剥ぐ仮面から血涙が出る化け物。

絵面が酷すぎる。

っていうかHP1でまず倒せない。


「えっとじゃあ、もう最後の仮面憑依っていうのは」

『投げやりになるのはよくありませんよ』


NPCにツッコまれてしまった。


『仮面憑依はあらゆる仮面を自身の顔にすることができ、仮面によって一部能力が変更されます』


ん?まてよ。

さすがに何にもなさすぎてあれだったけどこうやって聞くと面白い能力かもしれない。

つまり仮面収集でグロい作業をしたのちに作った仮面を自分の能力アップに使えるっぽい?

でもそれ倒したやつの仮面被るんでしょ?

うん

なんか嫌だな。

殺したヤツの仮面を被るとか。

あれ、でも結局敵を倒せないと強化できない。

だけど俺はHP1でよそ見して転んだら死ぬレベル。

結局詰んでるんじゃ?


『なお、今後の異能解説は情報開示をオプションからヘルプを選んで頂きますと情報が出てきますのでそちらをご確認ください』


だからメタいってワンダさん。


『ぶっちゃけ私が全部説明するのがダルイです』


きみ、NPCだよね?

チュートリアルの妖精だよね?


『このチュートリアルを終えますとあなたは始まりの町、ローグでのスタートとなります。定期的にクエストが自然発生する、もしくは依頼を請ける形でクエストが増える場合もございます。それらを完遂するかしないかはあなたの自己判断となります』

「クエストが発生したからといって必ずしも受けなくていいってこと?」

『はい、ただ選択肢には必ず結果が伴いますのでご注意を』


うん、この辺は普通のRPGっぽいな。


『以上がチュートリアルの説明となります』

「え?嘘っ、これだけ?」

『はい、このチュートリアルを終えますとあなたは始まりの町ローグから活動されることとなります。町を出るもよし、住民を助けるもよし。はたまた悪事に加担、はおすすめしませんがそれもまた選択肢の一つでございます』

「いや、まてまてまて、ちょっとまだ早いって」

『本日の営業時間は終了しました』

「妖精の営業時間ってなんだよ!」


といってワンダさんがすーっと光に包まれて消えていく。


『それではまた機会がありましたらお会いしましょう』


消えた。

というかこれは逃げられた。

ただワンダさんが消えたあとには箱が残っていた。


クエスト:チュートリアルを終えよう

報酬:???


と目の前の鏡がまた文字を変えて映った。

どうやらこれは残ってたみたいだ。

なるほど、この箱がそうだと。

いつの間にかクエストとして処理されていたみたいだ。

おそるおそる箱を開けてみる。

そこにはなんとウサギの仮面が入っていた。

ウザギ?

なぜウサギ?


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