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クエストクリア

勝ち逃げされた感じがするのは気のせいだろうか。

俺、勝ったのになー。

仮面置いてってくれよ。

剥がさせてくれよ。

いいじゃないちょっとぐらい。

だってステータス確認したらまたHPが1/1に戻ってるんだもの。

割れたからねー。

派手に割られたからねー。

ヘドバンが今となっては名残惜しい。


しょぼくれていもしょうがないので骸骨さんが消える前に言ってくれた先の道を進んでいく。

ただ、気になるのが『あの子』の存在。


『あの子の「夢」を終わらせないために、貴様を犠牲にすることを』


斬りかかってくる前に言ってたあのセリフ。

骸骨さんの仮面を改めて剥がせば何か分かりそうだったんだけど。

夢を終わらせるってどういうことなんだろう?

確かチュートリアルではプレイヤーキャラはブギーって言って人類救済の願いが形になったのどうだの言ってた気がするのに。

その俺が壊す側ってどういうことなんだろう?

しばらく先を進んでいるとまた嫌なものが出てきた。


おびただしい数の檻。

そして収監されている人、もしくは人だったもの。

それが見事にバラバラにされている。

死体の山でも見たバラバラの死体に似ている。

恐らくここで死んでるやつをあそこに捨てに行ってたのだろう。

というかこのゲームこんなんばっかだな。


『骸骨のオジちゃん?』


俺がこの光景を観察していると誰かが話しかけてきた。


『あれ、オジちゃんじゃない?誰?』


不思議そうに子供の声で問いかけてくる俺の目の前にいる小さな男の子。

この子のサイズにしては大き目な服を着ている。

そして外見はどう見てもただの普通の男の子だけど。

目を開いてるはずなのにその奥は瞳では無く黒い空洞だった。

目、そのものが見当たらない。

なのに男の子は俺を真っ直ぐ見つめてくる。


『オジちゃん、人間じゃないんだね』

「そうだね、ブギーっていう存在らしいんだ」


どう考えてもこの子が『あの子』なんだろうな。

骸骨の仮面を被ったときに見た記憶の子とどこか似ている。


「これをやったのはキミかい?」


檻の中のバラバラになった死体を指さして聞いてみる。

違うって言ってくれないかなー?なんて


『うん、僕だよ』


ですよねー。


「なんでこんなことしたのか聞いてもいいかな?」


見た目通りの年齢なのかも分からないし恐らく敵なんだろうけど子供を相手にするのはゲームでもちょっとしんどい。


『合わなかったんだ』

「うん?」

『僕の体に合わなかったんだ』

「ごめん、ちょっと意味が」


そこで男の子が来ていた大き目の服を脱いでいく。

そして男の子の身体の両腕、両足、そして首の付け根にツギハギの跡が残っている。

凄く痛々しいその姿に違和感を覚える。

皮膚の色がツギハギされている部分毎に違う。


『あとは目玉だけなんだ』

「何を言って」

『腕と足、頭は分けて貰えたけど、目玉だけ合うのが無くて、腐り落ちちゃうんだ』


まさかこいつ


『もうちょっとで僕も人間に戻れるんだ。ちゃんとした体さえあれば、あとは目玉さえあれば人間に』


原理は分からないけど人間の体を自分にくっつけてるのか?


『僕のことを殺すの?』


突然そんなことを聞かれた。

いや、うん殺すって言ってもなあ。


『骸骨のオジちゃんを殺したんでしょ?』

「まあ、うん、そうだね」


察しが良い子供ですね。

あ、剣持ってるからか。

というか子供の声でそんなことを問いただされるとすごい罪悪感が。

そもそもこの子も戦えるんじゃなかろうか?


『大丈夫、僕は弱いから』


こちらの疑問を察してか律儀に答えてくれる。

でもそういうことじゃなくてその


「えっと、キミはその目玉探しはやめれないのかな?」

『うん、だってやっと人間に戻れるんだもん。奥にまだ試してない人たちがいるからあとは目玉さえ入れば』


俺は男の子の話を遮り剣を男の子に向ける。


「どうしても無理かな?」


剣を向けられてるのに男の子は俺に向かって笑う。


『無理だよ。だって僕の『夢』だもの』

「そのままでも良いじゃないか」

『この空間はね、僕が、僕の夢を叶えるために作った『骸骨の揺り籠』なんだってさ。オジちゃんが教えてくれた。僕が夢を叶えるか死ぬまで僕はここから出られない、迷いこんだ人もここから出られない』


それってつまり、この子が夢を叶えるまでは被害者が増え続けるってことになるのか。


『どうするオジちゃん?』


そう問いかけられたとき、俺の目の前に鏡が出現した。


『骸骨の少年の夢を断ちますか』

『骸骨の少年の夢を叶えますか』


また選択肢が浮かびあがってくる。

そして人間の姿になってるけどやっぱりこの子も骸骨なのか。

嫌な選択肢だけど俺はこの男の子のことを知らない。

そしてそんな狂気染みたことに協力も出来ない。

いくらこれがゲームだったとしても。

俺が上の選択肢を選ぶと鏡が消える。

握り直した剣に力が入る。


「ごめんな」

『ううん、僕もいっぱい殺したし。でもね』


男の子の首目掛けて力一杯剣を振るう。


『恨むね』


剣が彼の首を刎ねる瞬間、男の子は俺に笑顔でそう言った。


『クエスト:捕らわれた住人を開放せよをクリアしました』

『ステージ:骸骨の揺り籠の浄化に成功しました』

『称号:「夢を壊す者」を手に入れました』


無機質な声が頭の中で流れた。

どうやらクエストをクリアしたらしい。

なんとも言えない後味の悪さと凄く嫌な称号を手にいれてしまった。

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