9
アニメ制作の話をした時にきっと浮上する問題の一つに他のサークルの存在があった。ノア先輩が知り合いがいるということで早速アポイントメントをとったらところだった。
「ダメに決まってるだろ」
ふざけてるのか。
そういうその人にノア先輩が舌打ちを隠しもせずに鳴らした。
「おい」
「あ?」
「なんで、俺が誘ったときには靡かなかったくせにそっちにいるんだよ、天野」
ノア先輩ははぁ? と言うと、それが気に食わなかったのかその人は声を荒げた。
「はぁ? じゃねぇよ! お前一回もこっちの参加したことねぇじゃねぇか」
「落ち着けよタネダくん」
「棚瀬だよ!」
「俺誘われた事あるか?」
いつもの穏やかさなどないような言い方にびくりと思わずわたしが背筋を伸ばしてしまう。
「いつだって誘ってるだろ」
「あれか? 勝手に俺の友達とか親友とか言って名前を使ってることか?」
「いや、そんなんじゃなくて」
「じゃあなんだよ」
「何あの人そんな事されたの?」
ひそりと宮村が言う。
「まえ、勝手に名前使われたって言っていたことはあるけどそれがこの人なのかはわかんないなぁ」
「こいつだから。勝手に名前使ってるの」
ひそりひそりと話していた会話に声のトーンを落とすわけもなくノア先輩は言った。ノア先輩に呆れたように言われて顔を真っ赤にさせたその人は今度はわたしと宮村とマッチーを見た。
「お前らどうせ卑怯な手を使ったんだろ」
「卑怯な手ねぇ」
それに答えたのはノア先輩だった。
「確かに。あれは卑怯だった」
「ほらなっ」
「あんな絵を描くやつがいるのかって。一緒に作りたくなったんだよなぁ」
しみじみ言うノア先輩に顔を真っ赤にさせて泣きそうな顔をした棚瀬さんは、絶対許可しねぇと叫ぶように言った。宮村はどこがだとかうそばっか言いやがってとぶつぶつ言いながらも嬉しそうに見えた。
「で、どうする?」
部室に戻った瞬間どこか楽しそうに言うノア先輩は対してアニメ研究会のことを気に止めていないようだった。
「どうするって」
「場所だよ、学祭の申請しないといけないだろ」
ぺらりと出したその紙には文芸部と癖のある右傾きの字で書いてある。
「やるからにはマジでやろうと思ってるからな」
コクリコクリと頷くと宮村が、でも実際、と口にする。
「でも部屋どこも空いてないっすよね」
開催場所は暗黙のルールでその殆どが決まっている。今から急に文芸部をと押し込むのは厳しいのが現状だ。
「そこは大丈夫」
「え?大丈夫っすか?」
「軽音部が今年出場バンド少ないらしくてそこを借りればいいと」
ぽんぽんとかわされる会話を聞きながら、ん? と聞き返す。
「軽音のところ?」
「アキラちゃんも知ってるだろ?」
「あの、そこって」
「屋外だけど?」
さらりと言うノア先輩は平気な顔で笑う。
「できないよりはマシだよね?」
くらりとした気持ちになりながらもアニメ制作の話を3人ですすめていった。