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 わたしが今までに書いた作品の多くは人目に触れることなくノートに書き殴られている。何作品かはコンテストに出してみたりもした。結果は選外。

 趣味といえばそれまでだというのはわかっている。書けなくなる苦しみもあるけどそれでも私は書かないでいられなかった。


 取り残されたベンチでノートを開いて100円ショップで買った大して大事でもないシャープペンシルを取り出して文章を綴る。

 いつもはノートに文章を書いているだけで大抵の悩みは消えていくのにもやもやとした気持ちが離れてはくれなかった。綴った文字の羅列を眺めてはふぅと息を吐いた。また一冊、行き場のないノートが出来上がる。



 ピコンとなったスマホにはにわとりのマークがついている。

 にわとりマークが目印のSNSはコケットーっといって簡単に投稿して簡単に人と話せるわたし達世代に受けているアプリだ。

 サヨに誘われてからはじめたが今では自ら開いてしまうほどコケットーにハマっている。

 よくお話する人の中にわたしがすごいと思っていて親しくしてもらっている人がいる。アーティスティックでぶれないその人のハンドルネームは方舟さんという人だ。その人が珍しく、自分の内容をコケットーにあげていた。


「レポート提出重なりすぎて笑いしかでん HN_方舟」


 方舟さんは今週の1分動画と銘打って毎週タイプの違う動画をアップしている。なめらかな動画は方舟さんのすごさを感じる。


「HN_方舟 がんばれー HN_文芸部員」


 方舟さんに返事を送るとそうそうにピコンとなる。


「HN_文芸部員 頑張ったらアイスおごって HN_方舟」

「HN_方舟 いやだ HN_文芸部員」


 返事を返して久しぶりにコケットーに投稿する。


「文芸部で学祭。何ができるだろう? HN_文芸部員」


 方舟さん含めて何個かついた返事を見ていると、思わずぽろりと言葉がもれる。


「あにめ」


 これだ、と思わずぎゅっとスマホを握りしめる。

 自分で考えたことかと聞かれたら頷けない。それでもこれが一縷の望みのようだった。アニメが本当に作れるのかどうかはわからない。わからないけど、とりあえずベンチに広げていた荷物を片付けて片手にかばんを持つ。もう一方の手で、宮村にショートメールを送った。


「学祭でしたいこと、思いついた! 手伝って! 部室集合!」


 宮村からの返事を確認せずに足早に部室に向かった。




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