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時に九星財閥の暗殺者を背負い、時に改造ジェットパックを背負い、死神の娘を抱えながらタカが誰にも見つからないように、慎重に向かったのは扉の壊れた家。彼が扉を壊した家だ。彼はジェットパックで上空からゆっくりその家に近づき、勝手にお邪魔する。中には警備員はおらず、一人、記録を確認している男がいるだけだった。

「よお、調子はどうだい?」タカが暗殺者をしまい、いたって普通に話しかける。

「なっ、いつの間に、いや、その子はどうした?」長官が一目見ればわかる彼の異様な点に気付く。

「いい奴だったからな。安心できる場所で寝させてやろうと思ったのさ。お前ならいい場所知ってるだろ?ああ、死神の、イマイケの娘さ。」とタカが答える。タカが長官を訪れた理由の一つは一度ゲームをして楽しかったから、なんとなく、若干ではあるが好感を抱いていたからである。

「少し聞きたいことがある。その子はベッドに寝かせておけ。私が手配してやる。」長官もタカが壁外生物だからと言ってすぐに突っかかったりはしない。聞きたいことがあるのも事実だが、ゲームとその結果を通じて彼はだれも殺しはしないと信じているのだ。「ああ、そのつもりさ。」とタカが答え、彼女の遺体を寝室の一つに移動させると二人は話を始める。

「まず聞きたいのは、あの子はどうした?」。長官が口を開く。

「知っていること全部教えてやってもいいが、」タカが答える。「カードに誓え、俺の質問にも答えると。」

カードに誓えば必ず履行しなければならない。タカは長官の知りたそうなことを知っている。情報を交換するためにも彼は長官を訪れたのだ。長官は一瞬言葉に詰まるが、彼の知りたそうなことを考えれば誓ってもいいだろうと判断し「カードと金山家の名に誓おう。」と答える。

「あいつは洗脳パーティーの余興の品だったのさ。相変わらずこっちは趣味が良い奴が多いね。」と長官の答えに満足した彼は話し出す。

「洗脳パーティー?なんだそれは?」と長官が掘り下げる。

「そのまんまの意味さ。オフィサーが主催してるって噂だぜ。ずいぶんと流行ってるようで何よりだぜ。」とタカが答える。それを聞いた長官は驚愕する、彼はまったく知らなかったのだ。だが同時に彼が記録の中に見ていた違和感がそれのせいである可能性が十分にあることに気が付くとタカの話により興味がわく。しかし彼はゲームの時と同じようにそれを顔には全く出さない。カードに誓っているので駆け引きの意味はない。タカは答えられることにはすべて素直に答えないと自身が知りたいことも知ることができないのだ。それは長官もわかっているが、ゲームプレイヤーの癖である。

「どこでやっていた?」と長官が聞くとタカは「そんなもん、あっちのほうとしか言えねぇが、本部ではなかったみたいだな。」と指をさしながら答える。長官は支部までできるほどその手を伸ばしているのかと心の中でため息をつくと次は何があったか詳しく聞いていく。タカもすべて素直に話し、長官が聞きたいことをすべて聞いた、と思っているところでタカが最後に付け加える。聞かれていないので答えなくとも良いが、そもそも彼はこの情報を長官が一番知りたがっているだろうと思いここまで来たのだ。

「ああ、死神を、イマイケを殺したのは、そこの“キョーソ様”ってやつらしいぞ。あいつが言っていた。」

その言葉で長官の中にあったいろいろなものがつながる。彼が疑っている男が現在の地位に就任してから行方不明者やオフィサーの離職率が、短期的に見ればあまり違和感がないが、歴史的に見れば異様に上がっていること、伝統的に見ればあり得ない経歴の者の昇任要請が多々あったこと、有能だった部下が突然無能になったこと、そして誰が今池一等徴収官を殺害することができたのかを考えると彼の中では答えは一つしかない。しかし証拠は何一つない。強引な捜査を行えば証拠の一つや二つ、直ぐ出てくるだろうがあの治安維持部長がそれを許すわけがない、長官はそう考え、一つたくらむ。

「なるほどな。参考にする。それで、お前の聞きたいこととは何だ?」。長官は相変わらず表情を変えない。

「わかってるだろ?まずは部長の住処だ。アンダーグラウンド セキュリティを持っているやつのな。」タカが答える。

「なるほどな。教えてやる。」と長官は彼に詳しい場所を教えると聞かれてもいないのに「彼は日が落ちてしばらくは、行きつけのバーにいる。」とその場所も詳しく語りだす。

「おいおい、サービスが良いな。嵌める気か?」とタカは少し笑いながら突っ込むが長官は表情を変えず「それも悪くないな。」と答える。その後トップオフィサーについても聞いたタカは壊れて簡易的に修理されている扉をくぐり、建物を後にする。


タカはその日の昼間は目立たないように長官の家を見張りながら日が落ちるのを待つ。空が赤くなってきても誰も建物から出てこないのを確認すると治安維持部長がいるというバーに向かう。襲撃するなら早いほうがいい、長官と部長が接触すれば自分は罠にかけられる、何よりできるだけ早く仲間のカードを取り返したいという思いからの行動である。タカは一番栄えている道から少し離れたそのバーの扉を開け入っていく。タカがそこにわずかにいた客が妙に殺気立っていることに気が付いた時にはもう遅く、その客も、バーテンダーも、店の奥に隠れていたものも飛び出し、いかつい機械を展開する。さらに彼の後ろからは清水治安維持部長を先頭にさらにオフィサーが現れる。

「よお、調子はどうだい。長官もずいぶん都合の良いカードを持ってたみたいだな。」とタカが言う。彼の予想通り、長官は離れた相手に連絡できるカードを家の中で使い治安維持部長に連絡していたのだった。

「本当に今日すぐに来るとはな、フットワークの軽さは誉めてやろう。」と治安維持部長は言う。さらに「ゲームをさせると思うな。確実に拘束させてもらう。」と続ける。

ここにいるのは手練ればかり、流石のタカも強者に囲まれてしまえば何もすることはできない。「言っておくが、ドクター トランスファーは返さないぜ。」と言いながら彼は手錠をかけられる。彼を囲むオフィサーはこうは言っているがどうせ拷問にかければ引き渡すだろう、と考えているが実際に彼と対戦した清水治安維持部長だけは違う。彼は本当にどんなことがあろうとタカはドクタートランスファーを引き渡さないのはわかっている。彼の頼る法には壁外生物に奪われたカードについての記述は特にはないが、彼もドクタートランスファーの重要性はわかっている。どうするべきかと考えながら彼を拘置所を併設している壁の中で一番高い建物であるオフィサーの本部に連行する。


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