激突、壊れ切った男。勇者と言う存在
段々、勇者とは何か書き手の思いが出てきてしまいました・・・
どれくらいたっただろうか・・・
俺が死んでから、もう何十年も生きていない・・・
俺は自分がなかったんだ・・・そうか・・・最初からなかったんだ・・
いい子に思われたい、頼りになる兄貴でいたい、頼もしい、かっこいい幼馴染でいたい・・・
俺は他人に自分の全てを任せていた・・・人から見られる自分が全てだと思ってきた・・・
自分がどう見られるのかを考えて生きてきた・・・
そして17歳に限界が来て死んでしまった・・・
良く解った・・・義明、お前を見て良く解った・・・
どれだけ俺が馬鹿でとんまな生き方をしていたのか良く解った・・・
俺は自分を誰よりも馬鹿にしていた、自分自身が自分を見放していた・・・
当然なんだな、誰からも見放されるのも・・・
一番近い奴、自分をこの上なく嫌っている人間に人が好いてくれる訳がない。
俺は何をしてきたんだろう・・・勇者と呼ばれても、英雄と呼ばれても何一つ俺には響かなかった・・・
当たり前だ、俺自身が俺に絶望していたんだからな・・・
義明、お前は・・・凄いな・・・応援されているじゃないか・・・お前に声をくれている奴がこんなにいるじゃないか・・・そうか・・・足りなかったのは俺か・・・
俺が足りていれば、両親も優しかったのかもしれない・・・
朋子も歪まなかったのかもしれない・・・何より・・・お前にこんな思いをさせずに済んだかもしれない・・・崇はまっとうに生きて行けたのかもしれない・・・
そうか・・・義明・・・お前がそんなになってしまったのも俺のせいかもしれない・・・
お前に何が起こったのかは俺には解らない・・・でも朋子の事は俺が起こした事かもしれない・・・いや・・・俺のせいだ・・・ごめんな・・・
バカだなあ・・・俺は・・・お前を・・・また俺のような奴を作っちまった・・・
朋子・・・朋子・・・ごめん・・・情けない兄貴でごめん・・・俺はお前を拒絶した・・・
俺自身が生み出したことでお前を拒絶した・・・お前が受けるべき悲しみは俺が受けるべきだった・・・
馬鹿野郎だ・・・俺は、義明と会って初めて解った・・・
弱い人の盾となる、そんなのは言い訳だった。俺は俺を見捨てていただけだった・・・
何が勇者だ、英雄だ・・・此処にいるのはただの情けない男だ・・・
17歳の隆文よう・・・お前が何も言わないのが良く解った・・・
俺はお前を救うと思ってながらお前を殺し続けていたんだな・・・
お前は壊れていた。だけど誰よりも求めていた。自分に寄り添って一緒に居てくれる存在を求めていたんだな・・・俺は・・・救うと思っていた。違う。お前はそんな存在を求めてなかった。
・・・ただ、頑張ったな、もう我慢しなくていい、そう言ってほしかったんだな・・・
同じ目線で見てくれる人が欲しかったんだな・・・それだけでどこまでも行けたんだな・・・
ああ・・・この馬鹿野郎・・・そんなのいるわけがないじゃないか・・・
自分と言う存在は世界で一人だけだ。お前と同じ思いなんて持っている奴がいるわけがないじゃないか。
そんな奴は・・・義明だけだ・・・
俺の目の前の馬鹿野郎だけだ・・・こいつは17歳の隆文、おまえと同じだ・・・
どこまでも一人で情けなく歩いていたお前と同じだ・・・
俺がどうにもできなかったお前と同じだ・・・お前にもできたはずなんだ。
今義明を応援してくれている奴らみたいな声ができたはずなんだ・・・
お前は、俺は、大馬鹿野郎だ・・・一人で自己満足に浸って、我慢し続けている大馬鹿野郎だ・・・
義明、義明、羨ましいな・・・お前は応援されて・・・俺は一人だ・・・
ここまで一人で来てしまった・・・馬鹿だったな・・・もっとイルムトのみんなと仲良くしていれば・・・皆元気かな・・・無性に会いたい・・・会いたいな・・・
・・・やっと・・・言葉が通じた・・・
頭の中に聞こえた・・・俺よりずっと幼い声、でも間違えようがない俺自身の声・・・17歳の隆文・・・お前か・・・
・・・うん、僕だよ、君は僕なんだ。ずっと話しかけていた。でも君はずっと一人だった。だから僕の声も届かなかった。当たり前だよね、僕は僕の事が世界で一番嫌いだったんだから・・・
そうだな・・・いまだに俺は俺の事が一番嫌いだ・・・こじらせて、ここまで生きてきちまった・・・結果どうしようもない俺がここに居る・・・ごめんな・・・17歳の隆文・・・
違うよ、君は自分の事をさげすんできた。自分の事は死んだ人として生きてきた。でもそのおかげでどれだけの人が君に助けられたんだい?どれだけ感謝されてきたんだい・・・
でも、俺は感謝されるような人間じゃない、たった一人の妹にも居なかったことにされた馬鹿な人間だ・・・忘れようとしてたんだ・・・そして忘れてしまったんだ・・・
もうここに来てからは名前も顔も忘れてしまっていた。
完全に他人としか思えなかった。家族なんて名前も思い出せない程忘れてしまった・・・
もうどうでもいい存在として切り捨ててしまった。
・・・だから、大事なんじゃないか・・・今の君を見てくれる人が大事なんじゃないか・・・崇君は?由香ちゃんは?君がどういう人間だったか知ってて付き合ってくれていたかい?
・・・それは・・・違う・・・あいつらは俺を見て付き合ってくれた。叱ってくれた。泣いてくれた。それだけは確かだ・・・
なら、今君はその人達のために立っているんだ。その為にここに居るんだ。自分がない?いいんじゃないか?その分他人に求められれば・・・それでいいんじゃないかな・・・
・・・俺は・・・それでいいのか?・・・自分がないままでいいのか?
僕は君を通じて見ていたんだ、ずっと・・・だから君がずっと頑張ってきた事が解る。自己評価が限りなく低かった君、僕だから解る。勇者、英雄、それは君じゃない。君を見た人が、関わった人が君に付けた君の評価だ。だから、君は勇者なんだ。英雄なんだ。
俺は・・・自分の事を勇者なんて思った事はない・・・ずっと他人より劣っている人間だと思って来た・・・
それは君が自分につけていた評価だろう?だけど・・・君は周りの人間にそう言われてきた・・・だとしたら君は・・・勇者なんだ、それは責任なんだ・・・誰も選べない、選んじゃいけない道を歩んでしまった君の責任なんだ・・・
勇者は誰にとっても憧れなんだ、そこには甘えなどない、ひたすらに弱い人々のために盾となる。その恩恵など一つもない。勇者、人々の希望であるがために私欲など許されない。ただただ弱い人の盾となり続ける。
そして、それは自分というものが消えてしまった人間だけができる・・・
自分がないだけ、その分他人の気持ちをこれ以上ないほどに受け入れられる。
痛いほどに、泣きたいほどに他人の気持ちに立てる。受け止められる・・・
そして傷つこうが死にかけようがあくまで自分の身を顧みず、進み続けられる。
全ては人のために・・・笑ってくれる人のために進み続けられる。自分など捨てて進み続けられる・・・
だから君は勇者と呼ばれた。英雄と呼ばれた。我が身を顧みず他人のために死に続けてきた・・・
・・・僕は憧れたんだ・・君に・・・僕である君に憧れたんだ・・・僕も勇者になりたい・・・自分の事など考えずに他人の笑顔のために進みたい・・・そう思ったんだ・・・
解るだろう・・・僕は君にとっくに救われていたんだ・・・だから・・・
君は、君の思うように生きて行けばいいんだ・・・僕はそれが一番うれしい。君が勇者であることが何よりも嬉しい・・・自分の事を捨てて他人のために死んでしまえる君の事が誇らしい・・・
だから・・・いつまでも勇者であってくれ・・・それが僕を救う事になるのだから・・・
そして、君の前には救いを求めている悲しい君(僕)がいる・・・誰よりも何よりも君を求めている義明(僕)がいる・・・
君は・・・どうする?
・・・決まっている・・・俺は勇者だ・・・人々の盾だ・・・哀しい思いをしてきた人の守りだ・・・全部だ・・・全部俺が止めてやるんだ・・・守るんだ・・・俺は気づきもしなかった・・・
そんな生き方もあるんだ・・・来い・・・義明・・・
止められなくなったお前を、俺が止めてやる!!!!
・・・俺は・・・勇者だ!!!!!!
「がああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
俺は勇者だ!!!!!!死んでも!!いや!!!死んだってお前を受け止めてやる!!!!
まあ、勇者って都合のいい存在なんですよね・・・




