小松原朋子
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小松原朋子 17歳
身長168㎝ 体重52㎏
すらりとしたモデル体型の美少女である。
真っ黒な髪は艶を持ち、俗にいう天使の輪がいつも持っていた。
きつめの涼しげな眼差しと高い鼻梁、8頭身の体型、適度に膨らんだ胸、絶妙な感覚で造形された美術品のような美少女であった。
彼女には兄がいる、正確にはいた。
彼女にとって兄は自分が8歳の時に死んでしまった。
思い出の中の兄は美しいとされている自分よりもなお美しく、優しい笑顔でいつも自分を守ってくれていた。
朋子が怖い夢を見て眠れなくなると手を繋いで一緒の布団で寝てくれた。布団の中に兄の香りと暖かさがこもっていき、この世界のどこよりも安らぎを朋子に与えてくれた。
朋子の中では兄は憧れのヒーロー、男性像だった。
どんな時でも自分を守ってくれるヒーロー、TVアニメで見るどんな主人公よりも輝いて見えた。
いつも兄の傍を離れなかった。
そこが朋子の居場所だったのだ。
他の場所などなかった。
両親は兄弟に絶え間ない愛を注いでくれた。
兄は口数が少なく、表立って感情を表さなかったけど両親と朋子の事を一番大切に思ってくれていることは感じられた。
余りにも自分が兄に引っ付きすぎていたせいか兄にはあまり友達がいなかった。
他の子と遊ぶより朋子を優先してくれた。
それでも兄は朋子にいつも優しく微笑んでくれていた。
兄が小学校へ入り、一緒に保育園に行けなくなった時は泣いた。
悲しくて寂しくて泣き続けた。
兄は必死で慰めてくれ、毎日一緒に寝てくれた。
保育園で保育士さんにお歌を褒められた。
ごはんを残さず食べられた。
そんな些細な事を本当にうれしそうに聞いてくれた。
朋子は毎日、兄に報告できるのが嬉しくて頑張って保育園に行った。
兄の隣、それが朋子の全てだった。
勇気を出して初めて自分から同じ組の女の子に話しかけた。
「・・・一緒に遊ぼ・・・」
女の子は喜んで一緒に砂場遊びをやってくれた。
頑張ってお城を作った。
ただ砂を積んだだけの不細工な城だったが朋子にはどんなきらびやかなお城よりも輝いて見えた。
お友達ができた、一緒にお城を作った。
そう朋子がい言うと兄は本当に嬉しそうに朋子に言ってくれた。
「・・・凄いな・・・朋子は。本当に自慢の妹だよ・・・」
朋子は嬉しくて兄に抱き着いた。
小さな布団の中、兄のぬくもりに包まれて眠った。
朋子は満たされていた。
・・・お兄ちゃん、大好き・・・
朋子は保育園でも兄の事を話した。
自慢の兄である。
最高のヒーローである。
輝く憧れの人である。
兄の事をいつも話していた。
話してしまっていたのだ。
やがて保育園も卒業してみんな一緒の小学校へと通う事となった。
大好きな兄も通う学校である。
朋子は兄と一緒に登校できることが嬉しくて一睡もできなかった。さぞや小学校でも兄は目立っているだろうと思っていた。
手を繋いで校門を入るときはドキドキして顔が真っ赤になった。
下駄箱で兄と別れた。
「頑張ってきてね、朋子。」
そう優しく笑って兄はクラスまで送ってくれた。
他の保育園から来た子たちもいたが知っている子もいた。
友達となった女の子もそこに居た。
朋子はすぐにクラスに打ち解けられた。
友達の女の子が会話が苦手な朋子に代わって仲立ちをしてくれた。
たくさん友達ができた。朋子は類まれなる美貌を持っていた。
朋子を中心にコミュニティーができていった。
・・・1年がたった。朋子は2年生になっていた。
ある時、変な噂を聞いた。兄がいじめられている。
何も言い返さなくてへらへら笑っている間抜け、どんな事をしてもいい存在。
クラスの男子がそういう話をしていた。
朋子はその男子を呼び出し話を聞いた。
男子は朋子に呼び出されたことで舞い上がったのだろう。
顔を真っ赤にして興奮していた。
そしてペラペラと話し始めた。
朋子はその男子を殴った。
そんな訳がなかった。
兄は誰よりも頼もしく優しい存在であった。
そんな話自体がある事が許せなかった。
家へ帰ると兄が母に叱られていた。
兄が叱られる事をするはずがなかった。
できるはずがなかった。心配した。
何か母が勘違いしているに違いない。
朋子は説教が終わった後、兄に声をかけた。
「お兄ちゃん、どうしたの?・・・」
兄は力なく笑って何も言わなかった。
見た事のない顔に朋子は兄の姿が一瞬ぶれたような気がした。
・・・そして見てしまった。
複数の男子に殴られ、蹴られ、身体を縮めて丸まっている兄の姿を。
男子に何を言われても言い返さずへらへらと笑ってごまかしているだけの兄の姿を。
どろどろになった服を公園で泣きながら洗ってトイレに入って行く兄の姿を。
・・・そこに居るのは兄の姿をまねた、ただのいじめられっ子の姿だった。
朋子の兄はその瞬間に消えた。
兄の姿を奪い成り代わったただの情けない男の子がいた。
朋子の兄はそんな人間ではない、だから兄はあんな人間ではない。
だからあれは別人だ。兄の皮をかぶった別人だ。
その日から両親に頼んで部屋を別にしてもらった。
一緒に登校しなくなった。もう大好きな兄はいなかった。
兄だったものはブクブクと太り始めた。
美しい兄を汚されていくようで耐えられなかった。
いつの間にか豚と呼ぶようになっていた。
何を言っても豚はへらへら笑っているだけだった。
泣きながら笑っているだけだった。
・・・情けない・・・醜い・・・お兄ちゃんを返せ・・・
朋子は豚に当たった。
この豚が消えれば大好きな兄が帰ってくるような気がした。
豚は泣きながら笑っているだけだった。
やがて朋子はこの豚が家族だと思えなくなってきた。
兄の面影はもうなくなっていた。
醜い脂肪の塊と化したただの汚い豚としか見えなくなった。
一緒の空気を吸うのも嫌になった。
同じトイレ、洗濯機、お風呂を使う事が堪えられなくなってきた。
そして豚を隔離するよう親に言った。
朋子と同じ気持ちだったのだろう。
豚はすぐに隔離された。
豚はそれでも何も言わず涙を流しながらへらへら笑っていた。
中学校は豚とは別の所へ行った。
学校に行ってまで豚と顔を合わせたくなかった。
家ではもう豚とも会わずに済む。
だから学校で会わなければ完璧だった。
・・・豚にそっくりな奴がいた。
肌が黒いが雰囲気が豚そっくりだった。
体つきも一回り大きいが豚の面影があった。
朋子は切れた。
消したと思った豚そっくりな奴がいる。
許せるはずがなかった。
この時朋子は美貌に磨きがかかり、クラスの中心とも言っていい存在になっていた。
そんな朋子に誰も逆らえなかった。
男子は朋子の気を引くためなら何でもした。
その男は堪えなかった。何をされても黙っていた。
腹が立った。どうしようもなく腹が立った。
豚のくせに!!豚のくせに!!
一度わざとらしいくらい優しくその男に話しかけてあげた。
それまで朋子が直接その男に何かをしてたことはなかった。
だから朋子がいじめを扇動しているとは気づかれてない筈であった。
クラスの中心となっている綺麗な自分に声をかけられればその男、義明という男も反応して間抜けな顔で舞い上がるに違いない。
もし義明が泣いて縋り付いてきたら少しいじめも考えてやってもいい。
そんな考えで朋子は表向き心配している優しい美少女という態で反しかけた。
「大丈夫、酷いよね・・・私に何かできればいいんだけど・・・」
「・・・ああ・・・お前か・・・朋子というのは・・・」
朋子の事を知っていた。当たり前だ。
比べる程もない美少女であるはずだ。
クラスの中心なのだ。
私に気にいられればいじめもやむかもしれない。
そんな存在なのだ。
だから私に頼れ、泣きつけ、みっともなく泣け。
「・・・しっていたの?同じクラスだもんね、よろしくね。義明君。」
しかも名前を知っていた。これで落ちないはずがない。
朋子はどす黒い愉悦を隠して嬉しそうに微笑んだ。
「・・・俺に話しかけるな・・・」
「・・・え?」
「俺は知っている。お前が頭なんだろう?それくらいわかる。俺を殴った奴らの普段の視線と雰囲気で解る。お前があいつらをあおってたんだろう?」
「・・・そんな・・・」
「別にいい。だから俺に関わるな。お前になど興味はない。他の奴にも興味はない。だから俺を刺激するな。俺も何かをするつもりはない。」
「・・・あんた・・・全部・・・」
「あたりまえだろう、最初から解っていた。どうでもいいんだ。俺は俺を抑えるのに必死なんだ。だからお前らに興味などない。勝手に俺の知らない所で好きにやればいい。」
「・・・てめえ・・・何様のつもりよ・・・」
「・・・ゴミだ・・・俺はゴミだ、もう一度言うぞ、お前になど一つも興味はない。俺に関わるな。目障りだ。」
「・・・・・」
「後、お前演技下手だな。どうでもいいが・・・」
そう言って義明は何事もなかったように去って行った。
朋子の頭の中は真っ白になった。
怒りで気が狂ってしまいそうになった。
興味がない、どうでもいい、目障り、朋子の人生でこれ以上の屈辱はなかった。
しかも一番大嫌いな豚によく似た男に言われたのだ。
豚が自分を馬鹿にしていいはずがない。
っ豚が・・・豚が・・・・
「ああああああああああああ!!!」
朋子は傍にあったバットを滅茶無茶に地面へ叩きつけた。
何度も叩きつけた。
・・・後悔させてやる・・・死ぬほど後悔させてやる・・・泣いて謝らせてやる・・・ぶーぶー醜く泣かせてやる・・・
ふー・・・ふー・・・
髪を振り乱し、怒りに染まったその顔は美少女の面影はなかった。
一匹の夜叉の姿があった。
そして朋子は義明を直接蹴り、暴力を振るうようになった。
どんなに責めても義明は黙っていた。
そんなところも豚そっくりだった。
どんな事をしても怒らせてみたかった。
泣いた顔を見たかった。
義明が抑えていると言う自分というものが見てみたかった。
出してみろ!!!この豚!!!この豚!!
朋子の中で義明と隆文が重なって見えていた。
歯止めが効かなかった。
家という同じ空間に存在しているだけでも許しがたい隆文の存在と重なって見えた。
隆文とはもう何年もまともに顔を合わせていない。
だからストレスがたまり続けていた。
もういないモノとして扱っていたがどうしても同じ空間に存在している。
顔を合わせたくないので直接ぶつけることもできない。
死ね・・・死んでくれれば・・・本当の兄が帰ってくるかもしれない。
そんな訳の分からない考えに至るまでになっていた。
憎らしかった。隆文という存在が憎らしかった。
自分の大好きな兄の身体を奪ったあの豚が憎らしかった。
そしてその豚を思い出す義明の事も憎らしかった。
朋子は常軌を逸していた。
豚を消せば、義明を消せば兄が帰ってくる。
自分を大切に守ってくる兄が帰ってくる。
優しく微笑んでくれる兄が帰ってくる。
また一緒に寝てくれる。
身勝手な思い込みだった。
朋子は全部隆文のせいにしていた。
朋子の中では豚を迫害するのは正しい事だった。
そうすれば元の兄が戻ってくると思った。
隆文が死ねば元の隆文になって戻ってくると思っていた。
そんな思いは全部義明へと向かった。
豚の味方をする豚。そんな感情しかなかった。
隆文と混同しながら義明を責め続けた。
いつの間にか義明=隆文には何をしてもいいと思っていた。
成長期を迎えて巨大になって行く義明の事など気が付かなかった。
抑え込んでいる感情に我慢するように巨大になって行く身体に気が付かなかった。
朋子は自分が今取り返しのつかない真っ黒なものを義明に与え続けているのか解らなかった。
豚を殺す、豚を殺せばお兄ちゃんが帰ってくる。もう朋子も前が見えなくなっていた。
そして中学を卒業した。
当然隆文とは別の高校へと入った。
頭の良かった朋子は進学校へと入学した。
中学のことなど忘れたように朋子は振舞った。
隆文を思い出すような存在がいなかったことが大きい。
このころには家でも完全に隆文の存在を無視できるようになっていた。
隆文自身が気を付けていたのもあるだろう。
一切顔を合わせることもなかった。
だから朋子は思い出に生きていた。
幼いころの兄の思いでだけを感じて生きれた。
いま豚がどうなっているのかなど知りたくもなかった。
朋子の理想は兄である。豚ではない。
朋子は兄を求めていた。毎日求めていた。
・・・そして同じ匂いがする崇と出会った。
優しい笑顔と雰囲気、安心をくれるぬくもり。
そして崇も妹がいた。想像の兄とよく似ていた。
朋子は夢中になった。崇は一生懸命生きていた。
そんな姿に朋子は付いていきたいと感じていた。
日々、崇と結婚後の生活を夢見ていた。
電話をする時はいつもドキドキしながらかけた。
・・・そして隆文は出て行った。
何故だか解らないが最後に交わした会話、ドア越しに交わした会話。
想像の兄とぴったりと重なった。
強くて頼りになり、自分を守ってくれた兄と重なった。
気になった・・・次の日、こっそりと豚の部屋をのぞいてみた。
空っぽだった・・・人が使った形跡がなかった。
虚無だけがその空間を支配していた。
誰が住んでいたのか一つも解らなかった。
・・・本当に隆文がいたのか?自分に兄はいたのか?
・・・あれ?兄の顔は・・・幼いころの記憶は・・・
最後にこの前の玄関であった時の顔は・・・よく思い出せない・・・
・・・アルバム・・・家族のアルバム・・・
朋子はリビングへ行き、家族のアルバムを手に取った。
開いた。・・・兄はいなかった。自分がやったのだ。
そんなことまで忘れていたのか・・・お兄ちゃん・・・どんな顔だっけ・・・
呆然と朋子は立ち続けていた。
自分は何か取り返しのつかないモノを無くしてしまったんじゃないか・・・
むしょうに崇の声が聴きたくなった。
そして自分がやった事の付けを払う時はやってくる。
全部自分がやってきた事への取り立てはやってくるのだ。
本人が忘れようと、忘れまいと、関係などない。
虐げられた人々には関係ないのだ。
とっくに謝ってすむ段階は通り過ぎた。
自分で選んで、自分で起こした事への責任を取るときは来るのだ。
他人を、家族だった者を虐げてきた結果、どうなるか・・・
朋子はそんな事は解らず立ち続けていた・・・
朋子さんどうなっていくんでしょうかね。




