竹原の末路
主人公登場しません、いつもお読みくださってありがとうございます。とりあえず竹原君ざまあの二回目です。
竹原はいらだっていた。
柔道部が、自分の居場所が消えた。
隆文に何もできずに負けた。勝負にもならなかった。
隆文は竹原の事など眼中になかった、興味などなかったのだ。
大事に壊れないように遊ばれた。
数か月前まで自分の下で泣いて汚い叫び声を上げていた豚に大切に扱われたのだ。
もし隆文が容赦なく竹原を叩き潰していれば竹原は病院のベッドの上であってもここまで苛立たなかっただろう。
無関心、圧倒的に弱い簡単に壊れてしまうもの。相手にならない程にか弱い存在。
そう扱われてしまった。屈辱の一言では言い表せない程に気持ちが荒れた。
同じ柔道部だった奴からは無視された。
当然であろう、さんざん好き放題やってきたのだ。
稽古の名のもとにリンチ、いじめを繰り返して何人もやめさせてきた。
柔道部では竹原は王だったのだ。絶対的な存在だったのだ。
それが自信満々で隆文を潰そうとして何もできなかった。
隆文を動かすこともできなかった。
反則に反則を重ねて最後にはバーベルで殴りかかった上に、
間抜けにもそのバーベルに自分の頭をぶつけて気絶したのだ。
柔道部で行ってきた事は全て学校にばれた。
佐々木は教員免許をはく奪されて懲戒解雇となった。
部員は全員一週間の停学となった。
学校に戻ってきた竹原に居場所はなかった。
当然であろう、学校側も柔道部で成績を上げられるから竹原を認めていたのだ。
佐々木が上手い事ごまかして体裁を保ってきたのだ。
その柔道部がもうない。それも竹原本人のせいで。
周りの目は冷たかった。部員だった者はもう竹原に近づかなかった。
どうしようもなくイライラした。
菜穂子を呼び出してさんざん嬲りながら抱いた。
それでも収まらなかった。・・・・隆文の・・・あの豚のせいだ・・・
竹原は直接隆文に潰されたわけではない。
ほぼ自滅で負けたのだ。気絶していたためその後の隆文の壮絶な打ち込みも見ていなかった。
だから隆文の恐ろしさがまだ分かり切っていなかった。
仕返ししてやる。どうせもう自分に失うものなどない。
そのうち学校もやめさせられるだろう。
だから・・・その前にあの豚だけは殺してやる。
それで少年院に入ってもいい。絶対に許せない・・・
一対一で勝てない事は解った。素手では勝てないことも解った。
だから人手が居る、武器が居る。
竹原は取り巻きたちを放課後、呼び出した。
いつも自分に従って言う事を聞いていた奴らだ。
一緒に悪い事をやってきた奴らだ。こいつらの弱みも握っている。
俺の言う事なら何でも聞くはずだ・・・
来たのは柴田と二人の男子だけだった。
「・・・他の奴らはどうした?」
「みんなもうお前に関わりたくないんだとよ、まあ当然だな。」
「ふざけるなよ!!!俺を誰だと思ってるんだ!!俺に逆らって無事に済むと思ってるのか!!」
「思ってるんだろうよ。」
「なに!!」
「もうお前には何にもない。頼りの柔道もない。庇ってくれる人間もいない。それも全部自業自得ときたもんだ。みんな近づきたくないんだよ、お前みたいな馬鹿に。」
「・・・てめえ・・・柴田・・・自分が何言ってんのか解ってんのか?」
「解っているから言ってるんだろ?そんな事も解らない程馬鹿なのか?」
「ふざけんなよ、てめえらが俺に逆らえるはずねえだろ!!俺に逆らったら・・・」
「画像データはみんな削除させてもらった。徹底的にな。もうあるのはお前がもっているスマホの中だけだ。だから俺はそれを回収しに来たんだ。渡せ。」
「・・・何・・・何を・・・」
「データは俺が管理していたのは知っているだろう?俺たちの中ではお前はただの道具だったんだよ。褒めて持ち上げていればホイホイ乗ってくる間抜け。それがお前だ。」
「・・・・馬鹿な・・・嘘だろ・・・」
「お前にもう何にも価値はない。ただの頭の悪い腕力だけが強い馬鹿なガキ、それがお前だ。」
「・・・てめえも一緒だろうが!!俺と何が違うってんだ!!!」
「そうだ、俺もおまえと同じだ。だから馬鹿は馬鹿同士で責任を取らなけりゃならない。だからスマホを渡せ。それを学校に提出して俺たちがやってきたことを全部ばらす。」
「そんな事をしてみろ!!!俺たちの破滅だぞ!!」
「覚悟している。やってきた事には責任を取る。自己責任、隆文君がそう教えてくれたことだ。その結果そうなろうともそれは自分で招いたこと。甘んじて受け入れる。」
「・・・隆文!!てめえ隆文に寝返ったのか!!!」
「隆文君は何もしていない。隆文君を見て俺がそう思ったんだ。俺は美由紀に一生かけて謝らなければいけない。美由紀が俺の事を怖がっていたらすぐに離れて行く。そして遠くから美由紀を守り続ける。・・・それだけの事を美由紀にしてしまった。・・・それで考えた。俺たちはこのままここに居ちゃいけない。そうしないと美由紀や不幸にしてしまった人に申し訳ない。一回清算しないといけない。」
「柴田・・・てめええ!!!」
「竹原、お前ひとりじゃない、俺も行く。一緒に償おう。だからスマホを渡してくれ・・・」
竹原は混乱していた。柴田が柴田に見えなくなっていた。
これは・・・まるで隆文だ・・・
柴田は怒っていない。ただ穏やかに竹原に諭すように話しかけている。
柴田と隆文がダブって見える・・・そんなわけがない・・・
竹原は我を忘れた。本心では隆文の事を恐れていたのだ。
試合での無様な姿を忘れたかったのだ。
本当に隆文に仕返しをしたかったら竹原一人でもう一度隆文に挑めばいい。
数を集めて武器を用意して襲おうとしていたこと自体が隆文を恐れていた証拠であった。
圧倒的な有利を保っておかないと安心できなかった。
集団の暴力に訴えないともう一度隆文の前に立てる気がしなかったのだ。
竹原の高いプライドはそれを認めたくなかった。
自然なことと思って人を集めようとしていたのだ。
リンチを加えようとしていたのだ。
だが一番傍にいた柴田が隆文に見えた。
当てにしていた暴力の担い手が隆文に見えた。
竹原は我慢できず柴田につっかけた。
「おあああああああああ!!!!」
竹原は柴田よりはるかに強いと思っていた。
柴田は空手の猛者であった。
しかし特に大会などにも出ず熱心に稽古している姿を見た事もない。
ここで柴田を締め上げていう事を聞かせて隆文に復讐する!!
ぼこぼこにして言う事を聞かせる!!それで元通りだ!!
お前らは俺のいう事を聞いてりゃいいんだ!!
勢いよく竹原は柴田に組みかかった。柴田はわずかに腰を落としていた。
関係なかった襟を引き、投げ技に入ろうとした瞬間
「ぜああああああ!!!!」
裂ぱくの気合とともに竹原の鳩尾で何かが爆発した。
竹原は吹っ飛んだ。腹が爆発したようであった。
起きようとした。体中に力が入らず動けなかった。
何とかうつぶせになった。瞬間大量の吐物を吐き出した。
「おげええええええ・・・・うえええええ・・・」
腹を抑えてのたうち回り吐物にまみれて竹原は苦しみ続けた。
柴田は正拳中段の構えで竹原を見ていた。
思い切り竹原が近寄り、引きこんだことで見事なカウンターとなって鳩尾をえぐったのだ。
鍛えていない人間ならば内臓が破裂するほどの一撃であった。
そんなものをまともに受けた竹原は動けるはずがなかった。
柴田が近づいて竹原の制服からスマホを取り出した。
「・・・じゃあな。しばらくそこで蹲っていれば回復する。大丈夫だと思うが後で病院へ行くといい。」
そして3人とも去って行った。
「うげえええええ・・・あえええええ・・・・」
うめき声をあげながら竹原は虫のように身体を丸めていた。
一週間後
竹原と柴田、取り巻きたちは退学となった。
美由紀、他の女の子は巻き込まれてしまっただけとなり特に処分はなかった。
柴田はほとんどの罪をかぶり少年院へと行った。
やってきた事の責任を取る。少年院へ行くことになっても柴田の心は澄んでいた。




