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9  コミュニケーション

 3日の畑と家の往復で判ってきた事はまだ少ない。

 俺の生まれたここはそれなりに大きな村だ、という事。

 貧しい訳でもなく、裕福とも言えない。過不足無い、そんな緑豊かな村。


 そばには深い森があり、その恵みを貰うこともできる。まだ俺は入らせてもらえてないが。

 水源も村の中に井戸が3つとかなりのものだ。けどここでも井戸には近づくな、と言われている。


 その事情は一週間後に知る事になった。

 いつもどうりに畑に出て収穫を手伝っている時、父が忘れた道具を取りに家に戻っている間に起きた。


「や-い、加護無し野郎~。」

「マナは家にすっこんでろよぉ~」



 俺と同い年位の子供が四人組で現れた。

 こちらに向かって何やら言っている、が、なんのことか俺にはさっぱり分からない。

 なんと返してよいか混乱する。父母以外の人との会話はこれが初なのだ。


「こいつ最近まで喋れなかったって本当かぁ?」

(うん、本当だよ。)


 心の中で返事を返す。


「俺たちゃ3つの頃にはペラペラだったのによ」

(え?それマジ早くない?)


「やーい出来損ない、気持ち悪ぃんだよ」

(ん?こいつらは俺をバカにしている?)


「早く消えろこの疫病神め」

(からかってきてるのは間違いなさそうだな)



 ここで言われた言葉の中に引っ掛かる単語に頭を捻る。


(確か初めて畑に行った日にも加護無しって言われたな。それと今日は追加で「マナ」?)


 自分の名前は違うので、これは何を指しているのか悩んでいたら・・・


「悔しかったらやり返してこいよぉ!」

(いや、別に何の感慨も無いんだけどね)


 中身の精神は成熟した大人なので、子供のチープな煽りには反応しない。

 つーか、言われている言葉の意味が俺のどこに係っているのか?この世界の知識にまだ乏しいので、言い返したくてもできないよ?むしろ教えてください。


 思考が若干、斜めになっているところに、足下に石が飛んで転がってきた。

 それはどんどん数が増え、こちらに向かってくる精度も上がってきた。


 子供四人での投石は、次には一斉にこちらに狙いを合わせて正確に投げられる。

 かなりの数の石のシャワーが俺に当た・・・・



 パシッ!  パシパシパシ!  パシパシッ!



 らない。

 石は足元にポトポトと勢いは無くなり、ただ落ちる。


(防御に回し受けは基本だね、うん、よくできました)


 俺は自分に当たるものを見極めて、キャッチ&リリース。

 それが難無く成功して自分自身驚きつつ、できた自分を褒める。

 前世だったころにも練習してたが、それがここにきて見事に花咲いた事は喜ばしい。


「ねえ君たち、危ないからよしてよ」


「こ、こいつ今なにしたんだ!?い、一個も当たってねぇぞ!?」


 不動の構えでそこから一歩もうごいていない俺にビビッている様だが、そこへ。


「お前たち!何してる!?」


 慌て怒る声は父の声だ。子供達はそれにまたびっくりしながらも、その場を一目散に逃げ出す。


「お、覚えてろ~~~」


 雑魚の悪役が残すセリフを残して。

(お約束だ、初めて生で目の前で・・)

 その場面、内心、感動と共に面白かったです。





 父は悲しい顔をして謝ってくる。何も悪いことはしていないのに。


「すまない、居ない間に嫌な思いをさせてしまったな。」


「何も気にしてないよ?むしろ何だったのアレ?」


 今度は苦虫を嚙み潰したような表情を向けられてしまった。

 余計に疑問が大きくなる。


 そんな顔をするのは、それは、それだけの大きな問題だからだ。

 そしてそれは俺に係わる重大な事の様だ。


 それが父の様子でありありと伝わってきている。


「父さん、教えて。加護無しって何?マナって、・・・何?」


 前世の自分の次は、この「世界」の自分を知る時だ。

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