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855  見通しの甘さ

 さて、こうして話は終わりだ。後は闘技場都市に向かう。到着してからだその後の事は。


 なのでここでグルードスに元気に走って貰うために少々ドーピングをしてもらう事にした。

 そう、地竜の肉をちょっとだけ食べさせた。肉を前にしたグルードスは興奮状態になりかけていたが、それを俺は抑えた。


「こらこら、お前ら、そんなに興奮していると食べさせてやらんぞ?こちらの言う事をちゃんと聞くと約束したらこいつを食わせてやる。どうする?大人しくできるか?」


 子供に言い聞かせるように落ち着いた口調で話しかける俺。

 ソレを何をしているのかと言った感じで見つめてくるリティア。


「じゃあ出発だ。おい、お前ら気合入り過ぎだ。昨日の速度と同じで良いから。安全運転で頼むぞ?」


「なあ?私は馬車の上に居てもいいか?中は退屈でな。昨日は寝ていたが、今日はこんなにいい天気なんだ。屋根の上から景色を眺めたい。」


 さあ出発だと言う所で問題児である。バハムは馬車内は暇だと言う。リティアと会話していろと言うのも酷だ。

 何せ知り合ったばかりで共通の内容は無いし、そもそもバハムが余計な事をリティアに教えたりするともっと物事がデカくなる可能性も秘めている。


「ああ、自由にすればいいんじゃないか?俺が駄目だと言ってもお前登ってただろきっと。」


 この返しにニヤリと笑うバハム。一言俺へと断らないでもいいのに義理だろうか?こうして聞いて来たりする時と無い時がある。

 気まぐれで、それでいて突然だ。バハムの乗りこなし方のコツが掴めない。


 こうして馬車の屋根の高さまでひょいと飛び上がって乗っかるバハム。

 ソレをみて驚くリティア。コレは当たり前のリアクションだろう。何せ普通の人種なら不可能であるからして。

 ソレを気にしない、バハムの正体を解っている俺はリティアに馬車の中に入るように促す。

 未だに驚きから出てこれないリティアの顔は言葉を発さずとも「なんなんですかあれは!?」という気持ちが読み取れる。

 ソレを無視して俺はリティアの背中を押して馬車に乗り込ませる。


 こうして出発したのだが、道は大分空いており、俺がグルードスに声を掛けて他の旅人を避けさせるまでも無かった。

 そうなるとドーピングしているグルードスは少しづつペースを上げ始めてしまう。

 ちょっと調子に乗り始めている二頭を冷静にさせようと思って綱を引いてブレーキを掛けるのだが、その時は速度を落としてもまた前方に何の障害物も無いと速度を上げようとする。


「おい!こら!お前らふざけてると痛い目に遭わせるぞ!おいおいおい!速度を落とせよ!」


 俺がそう言っても段々と言う事を聞かなくなってきた。この現象は魔族の国でのサシャを乗せた馬の時と似てきている。

 食べさせた肉はそんなに多くない。ほんの半切れだ。なのにコレである。見込みが甘かった。グルードスの体躯は大きく、これ位の量ならそこまでの事にはならないだろうと。

 サシャの時は馬の求めるがままに与えてしまったのであそこまで爆走したのだが、じゃあ量がそこまで多くなければ大丈夫だろうと思ったのが駄目だった。

 少しづつ、だが確実に速度が上がって行っている。俺は事故が起こる前に覚悟を決めた。

 グルードスに上下関係を叩き込まねばならない。俺は御者台から降りる。

 しかし馬車は勝手に道を走り続ける。もうこの馬車は俺の手から離れているも同然だろうこうなったら。


「俺はグルードスに乗った事が無い。だけど、そんな事を言っていられない。くっそ!マジかよホント。」


 俺は片方のグルードスの背中に飛び乗った。

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