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788  ボーッとする時間

 左を見ても、右を見ても、どちらも変わらず大地の裂け目。向こう岸に掛かる橋なんてのも見当たらない。

 ここまで来ておいてなんだが、手詰まりのようである。


「いっその事ここに留まっていた方が良いか?俺がやった事を調査しにきっと獣人族が来るんじゃないか?」


 森をあんな派手に「やっちゃって」いるのだ。おそらくはソレを異変と見なして獣人族が様子を見に来るのでは?そう考えた。

 これ以上進むも戻るもする気にならないのならこの場で待ってみてもいいかもしれない。

 魔族の国でゆっくりとして居られなかった反動もあり、俺は近くの木に寄り掛かりながら座ってぼーっと空を眺める事にした。


 こんなに物騒な森なのにもかかわらず、長閑である。ピヨピヨぴょろろ~、と何の動物かは分からないがそんな鳴き声が辺りに響く。

 かれこれ一時間ほどそんな風に心の洗濯をしていただろうか?視界に流れる雲と、どんな種類かはわからなかったが、鳥の飛んで行く姿を眺めていた。

 そんな時、ふと気づくと俺のすぐ横にはそれはもう巨大な巨大な「ひよこ」が居眠りをしていた。


 訳が分からない。ひよこである。鶏では無い。

 ここはファンタジーである。バジリスクもコカトリスも、もしかしたら存在しているだろう。


「あぁ・・・だけど、これは無いわー。ひよこだよ?デカイひよこ。え?何でひよこ?」


 一向に混乱が収まらない。大抵の事は「ファンタジー」で片付けて来た俺もこればっかりはすぐには呑み込めなかった。

 しかも、気付いたらそこにいたのだ。何の音も立てずに近くに来た。このひよこは。

 隠密スキルでも発動できるひよこ?訳が分からない。

 俺に気付かなかったのか、それとも警戒心を持っていないのか?俺のすぐ隣である。寝ているひよこは。


 フワフワな毛並み、目に眩しい黄色、全体のフォルムは丸っこくて、正しくあのひよこ。

 高さは2m程だろうか?幅は1.5m?本当になんでデッカイひよこ?


「ああもう!未だに目の前の事実が呑み込めない!目の前の現実を受け入れるんだ!俺!しっかりしろ!」


 頭を空っぽにしていたのが悪かった。一時間と言う長さは俺の頭脳を停止させるのに十分な時間だったのだろう。

 ジワジワと現実を受け入れてこれてはいるが、未だに頭は回り始めてくれない。


 そんな状態でいる俺の事など関係無いと言った感じでひよこが目覚める。


「ピヨ?ピヨピヨ!ぴょろろ~。」


 それは俺がぼーっとしている時に聞いた鳴き声だった。結構最初から近くにいたらしい。


「・・・お前は何処の子だ?迷子なのか?うーん?・・・何?別に迷子じゃない?散歩をしていただけ?あ、そう。」


 どうやら俺がぼーっと空を眺めているのを見て気持ちよさそうだったのをマネて休憩をしようと思ったらしい。


「で、それを何で俺のこんなすぐ側で?あ?ここが日当たりが良かったから?あ、うん、そうだね。うん、そうだ。」


 闇夜の森、そんな場所を真っ二つにするかのように走る亀裂。その切れ目から天より日差しが入ってきているのだ、丁度ここは。

 森から流れてくるヒヤリとした空気と、日差しの温かさが絶妙にマッチして昼寝に最適な環境になっていたのだ。


 そんな会話?を続けている内に段々と俺は目の前のひよこを「これが普通なんだ」と無理矢理納得させていく。

 そもそもこの世界で巨大な魔獣などいくらでも、とはいかないまでも、それなりの数この目で見てきたのだ。

 デカイひよこが存在するからと言って何なんだ、と言った具合に、これも「普通」だと、この世界の常識だと考えて頭の中で消化していく。


 しかし心の中では違う。盛大にツッコミを入れたい、そう叫んでいた。

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