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750  懐かしい稽古

 と考えていたら攻撃が止んでいる事に気付いた。警戒して俺を囲むようにして一定の距離を保っている。

 五人はイキリ君の回復を待つ事にした様子だった。

 息を整えて立ち上がろうとしているイキリ君。しかし俺がソレを見逃すはずは無い。放って置く事は無い。

 相手を何の理由もなしに見下し、あるいは害するのに何の抵抗も無く、もしくは自分は強いと勘違いしている者に対して容赦をしてやる義理が無い。


 そのまま立ち上がって俺へとガンを飛ばそうとしてきたイキリ君を再びコケさせてやる。


「おや、どうしたんだい?まだふらつくのかな?どうやら勝手に転んで背中を打っていたようだけど?大丈夫かい?」


 もちろん二度目にイキリ君がスっ転んだのも俺の仕業だ。加速に入ってすぐにイキリ君のつま先を軽く蹴飛ばしてまた元居た場所に戻る。それをしたのである。

 傍から見ればイキリ君がまたしても勝手に派手に転んだだけに見えるのだ。しかもあからさまに不自然に。

 脚が勝手にぐるりと勢いよく振り上がって身体がソレに引っ張られて回転、そのまま着地を失敗して背中から落ちるなどと馬鹿げているのだ。不自然極まりないとはこの事であろう。不自然にも程がある。


 二度目だったからなのか多少受け身を取ろうとしたらしいが、中途半端に背中を打ったようだ。

 先程よりかは痛みも無いようだが、それでもゴロゴロと地面をまたしても転がっている。


「おや、どうした残りの五人?かかってこないのか?なら俺からいっても良いだろ?」


 俺は正面に居た奴に歩いて近づく。昔の稽古で得物を持った相手とどう立ち回るかの稽古もしていた事が有った。懐かしい、今では。


「く、くく、くるんじゃねーよ!」


 その掛け声と共に俺へと袈裟切りが放たれる。もちろん、いや、ホント。ド素人の方がもっとマシな斬りかかりをしてくるんじゃないかと言えるような無様なソレ。


「得物を見ない。その手を見る。持っている得物は手の延長線上に攻撃が来るわけだから、その手元をしっかりと見ていればその先も予測ができるからしっかりと相手の全体の動きは把握する事。」


 剣が襲ってくる軌道とはそう言ったモノである。だから得物だけに視線が囚われない様に相手全体を観察する事が重要である。

 刃物とはソレだけで視線を集める存在感がある。だからソレだけに囚われると相手の動き、そして思惑がどう言った所にあるのか見逃してしまう。


 そうして俺は剣を避けて相手の右側面へと立つ。

 文字通り人差し指でそいつの脇腹を突いてやった。ちょっと強めに。それは少し危機感を感じるくらいに人差し指は脇腹にめり込んでしまう。

 だけど別に刺さった訳でも無い様子でホッとする。


(素手で人を殺せるとは言え、撲殺までだろ・・・刺し殺すとか・・・いやまあできなくは無さそうと言うのが恐ろしいよ・・・)


 相手は相当な痛みだったのか青い顔をして「うげぇ・・・」と呻いて脇腹を抑えて膝を付いた。

 でもそこで追撃を入れる。しっかりと戦闘不能になっていないと回復した後にまた再び襲ってこないとも限らない。

 情けは人の為ならず。いや、使い方が違う。


 俺はそいつの顎に向けてデコピンしてやった。もちろん加減はした。デコピンでアッパーカットである。

 全力でやった場合、こいつの首の骨が折れてしまうだろう。だからかなり弱めでやったが、それは正解だったようだ。

 跳ね上がった頭、それが戻って来ると既にそいつの意識は無く白目を剥いてそのまま横たわった。

 息はしている。手加減は成功していた。

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