表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/1346

74  契約

 エルトス、彼は全部忘れたい一心で言われた事を実行に移していた。


 六人のエルフの一時の保護。

 ダモーの屋敷の金、及び金目の物全てを回収、売却。

 悪事は今後一切働くべからず。組織を根本から別組織に変える資金はダモーの資産を売却した金でやり繰りしろ。

 他にも居る組織幹部への対応、及び囲い込み。


 最後の注文が一番難しいだろう。だけどあいつは恐ろしい事をサラリと言ってきた。


「時間かけて説明しても恭順してこなかったら、全員会議とでも言って集めた所で一網打尽にすればいいんじゃね?」


 まるで脅威とは感じていない様子で「全員の首を取る」と言ってのけた。

 それを聞いて思わず「狂っている!」と非難したが、意に介されなかった。


 ダモーの屋敷には回収要員の第一陣は向かわせてあるが、あの50人近い屍を見て部下たちは何か言ってくるだろうか?増員した後詰に自分も同行して現場指揮に入るが、心が重い。胃が縮む。

 逆らえば自分の命がどうなるか分かったものでは無い。

 組織改変なんてどうしろと言うのか?ボス殺しの下克上。今後の見通しは真っ暗だ。吐きそうになるのをずっと我慢している。精神はもう潰れて這い上がれない。

 だが弱みなんて見せる訳にはいかない。舐められ、軽んじられ、裏切られ、付け込まれるのは御免だ。

 常に自信がある様に胸を張っておく。そうでなくては組織なんて回らない。そうやっていそいそと足早に準備をして出発の合図を上げる。


(あんなバケモノが横に居たんじゃ落ち着いていられない。付いてこなくてホッとした)


 ここに着いた後、少しして商会に探りを入れさせていた部下が報告してきた時だ。

 経緯とその詳細を知った。ボーナッツに一杯食わされたせいで今のこの現状。

 その事にあまりにも頭にきて地団太を踏んだ。


「あの腹黒爺!人の良い顔してやる事が薄汚い癖にぃぃぃ!あいつのせいでぇぇぇぇ!」


「あー、分かった。うん。ちょっとその件で商会行ってくるわ。後の事はザックリ全部頼んだ。」


 そう言って出て行った。正直もう戻ってこなくていい。それが本音だ。いや、全てが夢であって欲しい、が正解だ。

 そんな気持ちを心の奥にそっとしまって、エルトスは部下に指示を出すのだった。



 =====  =====  =====



 契約書を正式に作って判を押させ、アリルに渡した。


「これで俺は御役御免させてもらうよ。短い間だったけど世話になりました。」


「えっ!?どうして?それにこれって!?」


「書類に書いてある通り。被害者はアリルでしょ。それと用心棒の仕事は降りるよ。俺の見た目じゃ向いてないみたいだしね。」


「本当に・・・何から何まで・・・こんな・・・」


「後は商会長の客人扱いで暫くは御厄介になるといいよ。ね、商会長。」


「・・・分かった・・・もういいだろう。契約は済んだ。」


 こんなにボーナッツが静かなのは契約書作成中に入ってきた密偵から情報を受けてからだ。


「言っときますけど反故にしたり破ったりしたら絞めますよ、今度は徹底的に。」


「・・・分かっておるわ!早く消えてくれ!」


「じゃあまたいつか。失礼しますよ。」


 そう言ってドアに向かうと後ろから別れの言葉が投げかけられた。


「私の人生、あの時、助けてもらってから狂いっぱなしです。・・・有難う御座いました。」


 振り向いたらアリルは笑顔だった。少々苦笑いだが。深々と頭を下げてくるそれに、一言も掛ける事無く部屋を出る。返事の代わりはドアの閉まる音。それが小さく辺りに響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ