73 ツケの支払い
「じゃあアリル、君にも聞いてもらう。けど、途中で口だしは無しね。」
俺はエルトスの館に着いた時に、彼の部下からもたらされた報告を一緒に聞いた。
商会に潜り込ませた工作員で割符の手引きを画策していた事。
その目論見がバレていて、目的の割符がボーナッツ自身の手により入れ替えられた事。
その痕跡を辿り調べを入れたら、その行き先がアリルに回る様に意図的に入れ替えられていた事。
俺はそれを悪意に似たモノ、と、そのせいであんな面倒な奴らに絡まれた、と最後に付け加えた。
そしてその「ツケ」を払わせるとも。
「違う、そんなつもりは無かっ」
「黙れって。言い訳は聞かないから。結果的でも、ましてや偶然ですらない。狙ってやったんだろ?それ以上ゴチャゴチャ言うようなら、この商会めちゃくちゃにしてもいいんだよ?」
ボーナッツは即座に黙った。ランドルフとの大立ち回りが効いているようだ。
俺の隣ではアリルが話をまだ消化できていないのか、赤、青、黄、と目まぐるしく顔色が変わっていた。
それを気にせずにこの一連の出来事を終わりにするための話の続きをする。
「要求は全部飲んでもらう。脅しと捉えてもらっても結構。そん時は衛兵に訴えるなりなんなりすればいい。で、慰謝料だけど、商会の金から出すんじゃ無く、商会長自らの財産からお願いしますよ?」
「このような真似を・・・お前ただで済むと・・・」
「じゃあ力を見せてください。ただで済まないって言うだけの力を。いつにします?今すぐ?それとももう少し時間を置いて?いつでもいいですよ?どうぞご自由になさって結構。だけどその時は覚悟してくださいね。あんたの人生最後の時になるだろうから。」
そう言って満面の笑みでボーナッツを見返したら、苦い顔をしてとうとう黙った。
もしこの先で、ボーナッツからの襲撃があったら、その時は容赦する気は無かった。
自らの立場を利用して弱者を罠にかけ、あまつさえ利用するような手口を使う奴は虫唾が走る。
「はぁ~。ここからは愚痴なんで聞き流してください。まあ意味が分かるとも思えないけど。よくさ、実力も無い癖に強いキャラ使ってオレツエー気取ってる奴、あれ好きじゃないんですよ。そんなん誰でもできるわ、っていうちゃちな戦いかたするとか。分かってもらえないでしょうけども。商会長、あんたは確かに今まで培ってきたものがあるからそれで勝負できるでしょうよ。だけど、商売始めたばかりの弱小にシワ寄せするみたいなマネするのはただの苛めでしょうよ。あの時の話は何だったの?的なね。」
篩にかけられたのは、つい昨日の事だ。押し黙って何も言い返してこないボーナッツにさらに話をする。
「あ、それとは別で一つ勉強になった事があった。用心棒ってさ相手に舐められたら余計な面倒になるから、だから、見た目も必要な要素なんだなって。強さだけじゃ足りない。そこら辺が今回で良く分かった。さあ、それじゃ部屋に行きませんか?ここじゃ何なんで。あ、契約書作りましょう。せっかくの商人ですしね。」
そうボーナッツの肩に手をポンと置くと、ビビったのか激しく体を跳ねさせて、その後は渋々と言った感じで歩き出した。




