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713  口臭

「王位簒奪だ!あんな王に靡いていた貴族たちはボンズル様の勢力に恐れをなして動きはない!いずれ王位に上がったボンズル様に忠誠を誓う事になるだろうがな!奴らは腰抜けだ!どいつもこいつも!」


 どうやらサシャが言った「良い意味、悪い意味」の悪い方が起こっているらしい。

 コレはどうも早くこちらも動かないと戦争は始まる。獣人の国との。


 そして下手をすれば内紛である。いや、もう既にそれしか止める方法は無さそうだ。しかも一時的に止めるだけしかできないだろう。そんな悪い意味での「力」の流れが起こっているのだ。

 そこへと流れが集約していけばもっと最悪な未来もある。国が獣人国との戦争をしているその時に内戦である。

 大人しくしている貴族たちが力を蓄えるために静かにしているだけだったら?

 そんな事を考えられる未来が無いとは言えない。

 それをサシャはすぐに思いついたようだ。


「馬鹿な!お前たちは最悪の判断を下そうと言うのか!?確かに遥か昔の国ではそのような事が四六時中起きていた時代があると勉強はした事が有る!だからと言ってこの平和な時代にソレを起こそうと言うのか!私のこの身は一体なんだと言うんだ!?ボンズルはそこまで愚かなのか!被害を!民の平穏を脅かす事の何が王だ!民は王の「力の保護」を受ける者たちだぞ!?それを容易く壊していい理由も道理も無い!」


 サシャは「良い意味」での力の在り方を説いているが、兵士長には響いていないようだ。


 戦国時代か?とツッコミを入れたくなるくらいの余裕が俺にはまだあるらしい。

 だけれどもそんな冗談を今、口にしていい場面じゃ無い事ぐらいは空気は読める。

 しかし兵士長は笑った。


「はっ!ボンズル様の兵力は既に少数派の貴族どもが束になっても敵わぬほどになっているのだ!どのように転べどもボンズル様の邪魔になるような者は存在せんのだ!天下だ!ボンズル様のな!」


 明日には戴冠式、そして即その翌日には出兵。そう、ボンズルは己の野望を実現したと言っていい。

 戦争は止められなくなったようだ。

 そしてサシャはと言えば既に自分がどう動こうがその戦争が止められ無い物になった事を受け入れてしまい愕然として地に膝をついた。


「もう、お終いか。早かったな、私の覚悟が何も為せぬままに終わった。これでは逃げ出さずにまだ城に残って抵抗しているだけの方がマシだった。」


「なあ?知っているか?諦めたらそこで全て終わるんだ。まだやるべきことがあるんじゃ無いのか?できる事は何か考えられるんじゃ無いのか?俺がこんな偉そうな事を言えるのは確かに他人だからだし、魔族でも無いこの国の民じゃないからだが、でもサシャ、それでも励ますくらいは出来るんだぜ?」


 兵士長は黙っている。どうやら俺がフードを取って顔を晒したからだろう。

 人族、それを飲み込むのに時間が掛かっているようだった。で、把握したらしたで「何故人族がこんな所に!?」と陳腐なセリフしか吐かなかった。


 それを俺は放っておいてサシャをクサイセリフで励まそうと試みた。

 俺がそもそも加速状態に入って今すぐに城に行ってボンズル、以下略、共を綺麗サッパリとこの世からおさらばさせてやっても何の解決にもならないだろう。

 しかも俺がそこまでの労力を使ってやるだけの義理がこの国自体に無い。

 だから俺はサシャに立ち上がって貰おうと試みる。クサイセリフを口にしてまで。


(俺の口臭はどうなってしまうのか?なんて冗談はさておき、コレで立ち上がってくれないともっとクサイセリフを言わないとアカンのかな?)


 どうやらこの世界の人々は捻くれておらず、純粋なのが多い。

 ならば俺のこのクサイセリフもまともに受け止めてくれる。スルーされて、ツッコまれて、俺だけが恥ずかしい目に遭わなくていいのが救いだ。

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