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712  本物の「馬」

 そして、ボンズルがマヌケでも馬鹿でも無い事が道を塞ぐ百名の兵士で分かった。


 村から出て一キロ程歩いただろうか?目の前には馬、そう、正真正銘、「馬」に乗った厳つい顔した兵士長らしき者が大声で俺たちに止まるように命令してきたのだ。

 人の生活圏内で「馬」を見た事が無かった。しかしこの魔族の国では「馬」が主流だと一目見ただけで理解できたのだ。騎獣グルードスはこちらの魔族の国には存在しないのだろうか?

 しかし今はそんな疑問に心を漂わせている場合じゃない。

 サシャは被ったフードをより下げて顔を完全に見えない様にして立ち止まり、俺もソレに従って歩みを止めた。

 どう見ても逃げられないのである。兵士たちは道中の林の中や草むらの中に隠れていて、いきなり目の前に出てきたのだから、さあ大変。


(あぁ・・・やらなきゃ駄目かコレ・・・)


「我々は逃走した王女を探している。そこの者、被り物を脱げ。顔を見せろ。」


 静かに、そして威圧を掛けるような声音でそう命令される。

 それにサシャは動かない。俺も動かない。しかしそんな事はどうでもいいらしく兵士長はニヤリと笑った。


「正体を現さないと言う者がおれば斬って捨てて良いと大臣様から、いや、もうあと明日で国王様になられるのであったな。命令が出ている!貴様ら、死にたいようだな?三つ数えるうちにその被り物を取れ。でなければ即刻貴様らを殺さねばならぬぞ?」


 どうも聞き捨てならない言葉が出て来た。それにいち早く反応したサシャは訊ねる。


「・・・大臣が王に?そんな馬鹿な!どういった事だそれは!?奴がそんな地位に立てばこの国は戦争になるぞ!何を馬鹿な真似を!」


「貴様、無礼な物言いだな。ボンズル様を奴呼ばわりか・・・。決まったな。貴様は不敬罪で即刻処刑だ。」


 剣を抜き放ったその兵士長は馬をそのままサシャに近づけて攻撃してきた。

 まあそれを俺が許すはずも無いのだけれど。


(馬さんゴメンね。ちょっと持ち上げるよ。驚かせるけど許してちょ)


 その馬の横へとスッと近づいてその腹下に手を入れる。そのまま俺は気合を入れてフン!とそのまま持ち上げた。そのタイミングはバッチリで兵士長が振り下ろした剣は空ぶってサシャには当たらなかった。むしろもちろんの事ながら当てさせないタイミングで持ち上げたのだが。

 それにビックリしたのは兵士長だけではない。周りを囲む兵たちやサシャもである。そして当然持ち上げられた馬も。

 流石に素直な動物は即反応して暴れてその身をよじる。驚きは一瞬だった。

 その暴れ具合に兵士長は落馬、背中をしこたま地面に打ちつけて悶絶した。突然の事で受け身が取れなかったようである。


 兵士長が呻き声を上げている間に俺は馬を地面に下ろしてやる。一言「驚かせてゴメン」と謝罪をしながらだ。

 そのまま馬は大人しくしてくれた。どうやら俺の謝罪が通じたらしいと言う事が理解できた。


「さて、サシャ、もう顔を隠している事に意味はないから正体を現そうか。それと、詳しくボンズルの事を聞かせてもらおう。」


 でも、話を聞くのは一人だけでいい。周囲にいる兵士は俺が加速状態に入って一気に全員吹き飛ばしておく。全員の肩をデコピンで弾くかのようにして回る。

 加速を解けば漏れなく全員錐揉みしながら吹き飛んだ。もちろん殺してはいない。多分死んでいない。おそらく殺してはいない。

 ちょっと雑に扱ったので少々そこら辺に不安を覚えたのだが、今はそれどころじゃ無かった。


「で、お前さん。知っている事を話してくれないかな?何、殺しはしないよ。いや、態度次第では殺すけど。もう既に国民が知っているだろう今の状況を教えてくれるだけでいいんだ。」


 そうして俺は周囲にいる兵が一瞬でぶっ飛んでいく事に驚いている兵士長から剣を取り上げて尋問を開始した。

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