70 信じられない
目的地は商会ギルド。あのオッサンに「落とし前」を付けて貰わないといけない。
こんなゴタゴタに巻き込まれ、面倒な目に遭わされている支払いをしてもらわなければ。
せっかく今日、アリルは初商売のスタートを切る記念の時だったのだ。あんまりなこの仕打ちには高い利子をつけてやる。
たとえ逆恨みだのなんだのと言われても引き下がるつもりはない。文句の二つや三つ所では済まないほどだ。
俺はエルトスの館から出て、まっすぐ足早に商会へと急ぐ。
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ボーナッツは入り口に立ち、荷をどこに運ぶのかを指示出ししている真っ最中だった。
そこに先日の駆け出し商人が顔を青褪めさせて近づいてくる。
「しょ、商会長・・・き、緊急でお話が・・・」
「おや、先日の。何かあったのかね?」
ボーナッツのその言葉は棒読みに近い、普段なら違和感が頭を過ぎるようなわざとらしさだが、今のアリルにはそれを気にする余裕はない。
「実は・・・ここでは・・・」
「ふむ、では部屋を用意しよう。ちょっと待っていてくれ。」
ボーナッツは残りの荷の指示を全てし終わらせると、アリルを手招きをして商会内へと入る。
部屋に着き茶が運ばれてくる。彼女はそれを一気に飲み干すと、捲し立てるように事情説明が始まった。
一段落終えた次の言葉は不安にまみれたものだ。
「今後、ど、どうすれば・・・」
ゆっくりとボーナッツは腕を組み思案する。
「ふむ、よくわかった。調査、対処はこちらでとにかくやっておこう。」
(朝から後を付けさせていた密偵の話と一致するな。あまり近づかないよう遠目の監視にさせていたが概ね合っている。だが・・・何だ?あの青年があのゾルデンをヤった?にわかには信じられんが・・・その後の詳細も疑わしい)
「つらかっただろう。しばらくこの部屋で心を落ち着かせていなさい。遠慮せずゆっくりしていなさい。」
「はい、ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。」
この件の直接の原因を作った張本人は「優しい商会長」という笑顔を張り付けて言葉をかける。
「では、私はこの件の調査に入ろう。ここで失礼するよ。」
今回の動きで「裏」に大きい打撃を入れるに対し、密偵を二人放っている。一人は中間報告で戻ってきたのが、ゾルデンの「死亡」が確認された時なので、もう一人が戻って来るはずだった。
そこに一人の男が商会に堂々と入ってきてボーナッツに近づいて耳打ちし始めた。
「・・・本当なのか・・・信じられんな。危険を感じてその後の動きを追わずに戻ってきた、か。仕方が無いな。奴らはその後はダモーの所に確かに向かったんだな?」
その質問に男は首を縦に振ると、また堂々と歩いて商会を出て行った。
ボーナッツは先程までの顔とは打って変わって、しかめっ面になっていた。
その皺をより深くして、慌てたように商会での最大戦力、用心棒ランドルフの部屋に向かった。
「どうかしましたか?」
「大事になるやもしれん。この件を収めるのにお前が必要だ。」
この短い会話で互いに意味が通じる。二人は部屋を出て、より奥の部屋、商会長室へと向かう。
だが、その前を塞いだのは、件の用心棒だった。
「あんたを締め上げに来た。」




