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660  保障はどうする?

 オルドンが席に着く。そしていきなり話をするのかと思いきや、注文し始めた。しかも酒付きである。

 先程俺が食べた夕食と同じものが彼の前に出される。その後ろには俺が金貨三枚を渡す約束をした兵士。

 ここに来たのはこの二人だけである。ちょっと怪しい。


「先ずは腹ごしらえをさせて頂きたい。すみませんな。この者の話を聞いて仕事終わりに一目散でこちらに来たので食事を取っておりませなんだ。」


 そう話すオルドンはきたあの赤いスープを食し始める。


「うーん!こいつは美味い!おお、おお、酒だ酒だ!ゴクゴク・・・くーッ!コレは堪らん!この店の料理を食いにまた来る事にしよう!辛さが後をしっかりと引いて、しかし旨味も口に残る。酒も進むわい。」


 この様子にオルドンの後ろに立つ兵はごくりと唾を飲み込んでいた。


「さて、お話をしましょう。貴方はドラゴンを倒す事ができるとこの者におっしゃったんですな?で、どのように倒すのかお聞きしても?何せウチの自慢の兵たちでは奴の皮膚に傷一つ付けられぬほどでしてな。」


 それは言葉通り、俺の様などこぞの誰とも知れない存在が、鍛えた兵で傷一つ付けられないドラゴンにどうやって対抗するのか問うているのだ。

 これに俺はしっかりと馬鹿正直に答える。


「真正面から斬り伏せますけど?」


 何もそんな身も蓋も無い言い方をしなくとも良かったかもしれないが、だからと言ってこれ以上に言う事も無い。

 俺のできる事と言ったらこれしかないのだから。


「・・・ふむ?貴方ならソレができる。だからドラゴン討伐を自分に任せろと?」


 俺はこれに黙った。後はあちらがどの様に判断するかだけだからだ。

 俺からはもう何も言う事は無い。むしろこのオルドンがこんな言葉だけでリスクの大きいドラゴン討伐を実行すると言う事は無いだろうと思えるからだ。

 国の明暗が掛かっているだろう。おいそれと安易に「じゃあお願いします」と口には出せないはずだ。軍を預かると言っていたのなら軍団長である。

 そんな軍事最高責任者がこんな場所に少人数で、二人だけで来るなんてその事実からしておかしいのだ。


(詐欺かな?上官をここに連れてきたって事実で金貨を俺からせしめて話だけ聞いて判断は翌日にとか言って何も返事が返ってこない)


 そのまま金だけ受け取ってドロン。後は俺が門まで行って経緯を話しても相手にされずにハイサヨウナラ泣き寝入り。

 この二人はグルで俺を騙そうとしている。そんな事を考えたのだが、どうやらそうでは無いらしい。


「保証は?もし討伐失敗ならこちらが被害を大きく被る事になります。貴方の後ろ盾は誰かいますか?貴方のその「自信」を裏付けてくれる存在は?」


 こんな話をしてくると詐欺である確率がどんどん下がる。

 俺としては詐欺でも良かった。いや、考えたら別に詐欺でも何でもない。ここに話のできる上官を連れてきてくれ、そしたら金貨を渡す。そう言っただけなのだから。コレはこれで別に条件を違えている訳では無い。

 ドラゴン退治をする、しないの判断はあくまでも相手側にある。まだ賭けに勝ち切った訳では無いのだ俺の今は。

 ならばこのまま俺から言い出したドラゴン退治はここで受け入れられても、そうでなくても、俺はどちらでも構わない。

 ならばこのまま相手の質問にある程度合わせて話を進めれて行って断られたらそれまで、受け入れたらそれはそれでドラゴンと城を見れると思えばいい。


 俺はここでドンゴロ工房でサインしたあの書類をオルドンに取り出して見せた。

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