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6  心残りと常識

 辺り一面雲しか見えなかったのに、次の瞬間には星のきらめく夜空へと変わっていた。


「始めます。」


 美しく響く短いその一言で、一斉に星空へと何百もの光の筋が飛んで落ちてゆく。

 それは止む事無く続く。


 俺にはそれが何なのか、何が始まったのか、すぐに分かった。


(集められた人たちが転生させられてるのか・・・)


 星空だった目の前はいつの間にか濃い緑が果て無く続く大森林に。


 お次は中世ヨーロッパの様な城と街。


 今度は荘厳な山岳を見下ろして。


 次々とめくるめく景色が変わっていく。


 その間も光のシャワーは降り注いでいた。


「いやー、壮観ですな。」


 強い力を感じさせる声。


 それが聞こえた俺の中で苛立ちが湧く。でもどうする事もできない。



 どれだけ時間が経っただろう。長くも短くも感じる。

 そのうち自分の番が回ってくる、確実に。


 それまでの間ずっとぼんやり考える。


 転生の事、これからの事、今までの事、現世に残る自分の事。エトセトラ・・・


(あー・・・俺も新キャラ操作して遊びたかった・・)


 心残りが浮かんだ丁度に、俺の意識は途絶えた。



 ================================





(そして今、か・・・)


 ここまで完璧に思い出すのに一週間は掛かった。


 授乳、寝るの繰り返しで、一度で全てとはいかなかった。

 記憶に靄がかかっていて、なかなか思い出せなかった所もしばしばあり、それをはっきりとさせるのに時間を取られた。


(さて・・・「俺」をこうして思い出せた訳だが・・・)


 自分という足場を確保できて当初の問題は一つクリアできたが、残った問題はまだ山積みだ。


(俺が今、赤子で、ここが地球じゃないっていうのも百歩譲って納得しよう。)



 この先、俺は成長する。この異世界で生きて行く。その為には何が必要か。


(それはつまり・・・)



 常識。



 世界の常識、非常識。  余所は他所!家はウチィッ!というやつだ。


 まず有り体に言ってしまえば、言語だ。

 一定レベルのコミュニケーションを取れるようにならなければ始まらない。

 これは絶対に会得しなければならない。

 そうと決まれば早速ヒアリングに集中、集中。


 聞き流すだけでOK!というCD教材があるぐらいだ。

 そこへ意図的に意識すればきっとすぐに身に付くはず!






 ・・・・考えが甘かったのだろうか・・・・


 未だに聞き取りすら怪しいのだが・・・。


 もう既に3ヶ月経っている。


 その間に目も開き、周りの景色も現状も分かってきている。


 ログハウスの様な家、父母の顔。

 時々俺の顔を見に来る出産時に立ち会っていた婆さん。

 静かな農村と思わしき作業音と家畜だろう動物の鳴き声。


 まだ外は見れていないので、大きな情報もまた得られてない。


 視覚以前にヒアリングが難航してそれどころじゃない。





 ・・・・おや?単語の意味や、文法とか、品詞が判ってもいないうちから言語を聞くだけで理解しようとするなんて難易度がウルトラ高い・・・・?


(そんな簡単なことに気付かなかった俺って・・・)


 その日は暫くショックでそれどころではなくなってしまった。


 全ては時間が解決してくれるだろう事を願って眠った。

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