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574  ご一緒しましょ、そうしましょ

 客が殺到している入り口を避けて別の入り口へと向かうバルガ。

 俺はそれに不思議に思いつつもその後について行く。

 そこは選手入場用の裏口らしかった。バルガはそこに立って見張りをしている二人の男に声を掛ける。


「やあ!ご苦労様。中に入っても良いかい?この人は私の客人でね。今日の試合を特別席で見せてあげたくてね。どうだろう?」


「は!どうぞお通りください!」


 ビシッと敬礼をして硬直してしまう警備員。やはりと言って良いのだろう。この都市の英雄様に声を掛けられたらこういった反応をするのは。


 こうして会場内に入る。そうして広い通路を通る途中に女性がこちらを見つめていた。

 その目の前まで来るとバルガは立ち止まる。


「はぁい、バル。貴方がここに来るなんて珍しいじゃない?バルと対戦したいなんて言う活きの良い戦闘士は予定ではこの先三年は来ないと思うわよ?ふふふ!だって貴方の後釜に座っている私のカワイ子ちゃんが壁として立ち塞がっているからね。」


「止してくれないかセルラム。君に気安くバルなんて呼ばれる間柄じゃない。そうやって私と親しいと見せる事も君の商売の宣伝として使われるのだろう?そう言った事に私を利用しないでもらいたいね。君は私の事を嫌いなんだからね。」


「あら、別にいいじゃない。貴方も私を利用すればいい。私の商会の割引を永久無限に使える券を渡してあるのだから。」


 この妖艶な女性、セルラムと言うらしい。妖艶と表現したのは訳がある。

 それは、まるでチャイナドレスだからだ。金髪の色気ウッフンな女性である。

 髪はウェーブのかかったロング、垂れ目で、唇はちょい厚め、美人顔。そして肉感的なプロポーション。

 スリットは深めに入っていて太腿があらわ、あわや大惨事的な大胆衣装。

 胸もバッチリ主張していてセクシーダイナマイトなその存在。どうしても目を惹かれてしまう。


 そしてどうやらやり手の商売人と言う事らしい。

 ついでに彼女の所有している?戦闘士がこの闘技場の頂点にいるらしい。


「バルガが弓の闘技場の頂点じゃ無かったのか?」


 疑問がするりと口から出てくる。それを掬って答えてくれたのはチャイナ美女である。


「あら?知らないの?しかもバルが連れて来たのかしら?あらあら、もしかしてこの都市は初めて?そんな貴方をバルが直接案内しているの?バルは何を考えてるのかしら。大丈夫?狙われちゃうわよ?ああ、彼はね、この弓では殿堂入りよ。特別なにか無ければ彼はここでやり合う事はそう無いわね。」


 狙われる、と。どうやら俺はもうバルガ関連で巻き込まれる、いや、彼によって巻き込まれたと言っていいだろう。

 それがどんなドタバタなのかは今の俺に知る事はできない。


「それで私のカワイ子ちゃんがその後釜に付いてるって訳。でもバルが殿堂入りの基準にされちゃうと誰も貴方の後に殿堂入りを果たせそうに無いのがイケナイわよね。やんなっちゃうわ。」


「どうせもう君の商会の宣伝効果は出せているのだろう?彼女をいい加減解放したらどうだ?」


 ちょっと不穏な会話に突入しかけているようだ。俺を置いて。


「あら?あの子は私に庇護を求めているし、何より借金はもうあっと言う間に返済しているわ。証文も彼女に渡しているし、その時に私の目の前で彼女、それを処分しているわよ?あの子の事情ってモノがあるから貴方の首を突っ込む所では無いわね。」


 その時会場から歓声が上がった。どうやらもう少しで始まる様子だ。


「あら?始まっちゃうわ。さ、行きましょ?ご一緒しましょうよ。」


「私はあいにくと君が苦手でね。先に行ってくれないか?」


「あ、ではご一緒させてもらいますね。」


 驚いた顔でこちらに首ごと視線を向けてきたバルガ。俺が一緒に観戦したい事がビックリなようだ。


 ここまでに俺が二人の会話に入り込む余地は無かった。しかしここでこうして割り込んだのは、バルガだけでは足りない所を彼女が解説してくれそうだったから。

 俺にはこのセルラムと言う商人に特別思う所は無い。初対面だから当たり前だ。まあかなりのセクシーインパクトは受けてはいるが、それ位だ。


「ふふふ、では行きましょうか。特別席なのよ?観戦するのに一番いい席なんだから。」


 俺の横にスルリと並んでくるその足運びに驚嘆させられた。滑るように、滑らかに近寄って来たその足運びは音を立ててなかった。

 そしてそのまま俺の腕に絡み付いて来てこちらを誘惑でもするかのように目を見つめてくる。


「私は君のそう言う所が苦手なんだよ・・・」


 彼女の手練手管がバルガは苦手なようだ。バルガは女性に偏見か夢でも持っているのだろうか?

 こう言ったモノはスルーしてしまうのが一番精神的にダメージが少ない事は俺は知っている。


「あら?子供だと思ってアタフタすると思ったのに、堂々としたものね?私の目も鈍ったかしら?イチコロだと思ったのだけれど。可愛らしい慌て姿を見られなくて残念だわ。」


 にやっと笑いつつその言葉とは裏腹に残念そうに見えないセルラム。彼女は俺の見た目だけで判断していて「中身」を知らない。

 そして未だ俺の腕にその豊満な胸を押し付けてきている。離れていく様子が無い。


(ハニートラップとかシャレにならないんだよね・・・こういうのは冷静になって付き合わないのが一番だ)


 見た目は思春期真っ盛りな成人したて、中身はもういい歳した大人だ。


「では行きましょうか。」


 俺は彼女に向かってニッコリと微笑んで歩幅を小さく歩き始めて客席へと向かう。

 そんな俺にちょっと驚いた様子で「面白いわね・・・」と小声で口にするセルラム。彼女は俺の腕を離さずにそのまま付いて来た。

 深い溜息を吐いてバルガは「機が悪かった」と愚痴を吐いて諦めた様子でトボトボと、先に歩く俺の後ろをついて来るのだった。

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