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558  これは無理

 座ったまま俺は静かに待つ。客は未だ密集状態だが、それでも少しづつ少なくなっている。

 後どれくらい時間が掛かるか分からないが、別段急ぐ訳では無い。

 だからだろう。声を掛けられてしまった。

 そう、誰に?か。


「君、ちょっと良いかい?話がしたいんだ。良ければ隣に座っても?」


 声を掛けてきた者は深くフードを被り、全身を覆うマントでその姿、顔は判らない。

 だがその男の声には聞き覚えがあった。


「・・・ええ。どうぞ。で話とは?遠回りな事はせずに、単刀直入にお願いします。」


「ふむ、単刀直入か。ヒノモトの言葉だったね。分かった。では、君と戦いたい。どうかな?」


 話しかけられ、そして聞いた声だったからか、予想はできていた。そして覚悟もあった。けど。


「お断りさせて頂きます。何故貴方がそのようにお考えになられたのかは存じ上げませんが、少々冗談が過ぎるのでは?成人になったばかりの若造にそのような大役は務められるはずがありません。」


 そう、この男の正体はさっきまであの円闘台の上で戦っていた人物。


「残念だな。せっかく姿を隠せる魔法のマントで君に近づいたというのに。それでもコレは増々戦ってもらいたいね。何せ、このマントは普通、見破れる物じゃ無いんだ。素人にはね。しかもこちらから声をかけさせてもらったけど、だからと言ってこのマントの力を看破などできるはずも無いんだよ。それこそ相当な力量を持つ魔導士くらいにしかね。」


 最初のアプローチの場面から思いっきりカマをかけられていた。


(マジでこのチャンピオン何なんだよ・・・こっちの事なんぞお構いなしかよ・・・)


 まんまとそれに引っかかってしまった俺はチョロい訳じゃ無いだろう。

 こんなカマかけ、どうやったって初見で見破れるはず無いだろう。普通の感性持ちなら。


「さて、そんな君はこのマントの力を見破って見せてくれた。それはそれは力有る魔導士とお見受けする。私の目に狂いは無かった。私から「戦いたい」と思った相手は久々だ。どうかな?相手になってくれるなら金を払う。そうだな、金貨三十枚で。考えてみてくれないか?」


 相手は勝手に交渉を始めてきた。でも俺はもうコレを安易に断れない。

 何故か?自分で只の普通の若造だと偽った発言をしたからだ。それを素人じゃ隠蔽の魔法が掛かったマントを見破るのは無理だと言われてしまったのだから。

 素人を装って、素人じゃできない事をして見せてしまった。

 俺は少なくとも「力」を持っているとバレたのだ。はぐらかす事もこうなれば無理だろう。


 だって俺のすぐ横に居る案内人がこちらを見ないのだ。

 そう、この魔法の範囲内に俺も入っている状態。そして会話も案内人に聞こえていないその事象が俺がもう逃げ出せない事を物語る。


(顔を隠していない。ここで断っても後でまた俺を探しあてて交渉をしてくる可能性がある)


 きっと彼は諦めない。チャンピオンが円闘台を去る時にこちらへと向けた笑顔を思い出して何故かそう思った。


 そもそも、最初からその魔法のマントが俺には普通の茶色い古ぼけたマントにしか見えなかったのだ。

 コレはたぶん俺に魔力が無いせいじゃ無いかと思う。そう思う理屈と言うのはつまり、魔法の力は魔法の力に干渉すると言った簡単で幼稚な予想だ。

 だから「マナ」魔力を持たない俺はその力に干渉も影響もされないのでは?と言った具合に。

 それでも効果が俺に効く魔法もあるかもしれないので確かな事は言えないが。


 そんな状態であんな試され方をされるとどうして思えようか?この罠を回避できる事は百パーできなかったと断言したい。


「分かりました。だけどもう一つ、条件を付けさせてください。」


 このイベントは回避不能の強制イベントだと思って俺はそれでも被害を最小限に抑えるための条件を付けるのだった。

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