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54  推論

 俺はそれを見送りながら少し考えた。

 自分の身体に何が起きてるのか。


(ここまで俺の特徴に言及してきた奴がいない。村ではあんなに忌避されてたのに。それはきっとこの都市の人は「知らない」もしくは「廃れた」んじゃないか?)


「マナ」「加護無し」そんなものは村でだけの迷信と言う線も無くはない。


 だが、それは今更どうでもいい事に気付く。


 黒髪黒目。


 その存在はこの世界の「法則」ではトレーニングすればするほど強さが「積み重なり」やがては人の「枠」を超えて強くなるんじゃないか。

 加護を受けている者はどうやっても越えられない壁。それが初めから「無い」のでは?


 村では畑仕事をしてただけで強くなっていっていた?狩りで山歩きした時も?薪割りも?水運びも?

 筋トレに型稽古も言わずもがな。そんな生活は日常な訳でそれを毎日していたのだ。


「加護」それは人を「檻」からはみ出ない様にするための?押さえつけて出てこれないようにするための?

 加護を受けている人が少なからず持っている魔力。それは「人」から逸脱しない様にさせるための「鎖」?

 それがここに至って浮上した推論になる。

 そうじゃ無ければこの世界で「強者」がもっといるのでは?と。


 ランドルフは商会で腕を買われて用心棒に雇われていた。

 彼より強い者、あそこから上となっても二段上?三段上?そんなんじゃ俺には何の違いも感じられないだろう。

 最低でも今の俺と釣り合うならば「次元が違う」と言わしめる程でないと。

 俺は別に見下してる訳でも、尊大になってる訳でも無い。

 本当にこんな「加速」している状態についてこれるなら、それぐらいでないと表現の仕方として足りないと思ったのだ。

 もしくは「魔法」なんてものがあるから、その特殊な効果による足りないモノを満たす「何か」がなければ、だ。



 俺はトレーニングしてたのは最初、暇だったからだ。

 そして、そのうち村から追放されるなら自衛できる強さが無くては、と思い始めたところもある。

 強さは必要だったが、それを追い求めた事も無ければ、上を目指した覚えもない。なのに。



(俺はただ生きてゆくだけで身体能力が無限に上がっていく?やがては超人に?いや今でも充分「人離れ」している・・・これ以上?んなバカな・・・)


 バカの考え休むに似たり、なんて言葉がある。この考えはシロウト考えというやつだ。

 だが事実、それを体感しているのは俺自身。

 この考えは突拍子もない、とは感じられなかった。



 不意に感嘆の声が掛かり、我に返った。


「凄いですね!あっという間!圧倒的!」


 たぶん時間にしてそこまで掛かっていない。その時間にしてモノの1分未満だろうか?


「・・・・ありがとうございます。」


 推論、その「答」に返す声のトーンが少し暗くなってしまった。

 それを気にせず、努めて明るく彼女は言う。


「やだ、それは私のセリフですよ。助けられたのはこちらですから。」


 自分の顔はきっと、不機嫌な表情をしてるだろう。自覚があった。

 それを見てアリルは気を遣ってくれたのか何事も無かった様にふるまってくれている。


「いや、凄いなんて褒められ慣れてないので。」


 そう返して、考えていた「推論」を忘れようと気持ちを切り替える。

 今は彼女の用心棒だ。強さはあるに越したことは無い。

 ただ、それで言っても「過剰」という表現でも足りなさ過ぎる代物だが、あえてここは無理矢理、無視を決め込む。


(チート?チート?うーん、チート?・・・その意味は・・・えっと、「騙す」「不正をする」「いかさまをする」「ズル」「誤魔化す」これらは主にコンピューターゲームにおいて広義で使われている用語・・・)


 騙した覚えは無い。不正した訳でも、いかさまなんてしていない。

 そればかりかズルなんてできるはずが無い。誤魔化したりも無理な話だ。


 そしてそれらを俺は、神からいちいち与えられた覚えも無い。


 それこそチートなんてモノは「神」には意識もしない普通の事なんだろう感覚的に。

 え?お前どうしてできないの?的な。できる奴にありがちな、他者を慮らないアルアルだ。

 そしてそんな存在に、加護なんてモノを拒否される事も「あの場」で思いもしない程、傲慢な存在なんだろう。

 無視を決め込んだはずの思考がスグにぶり返してくる。


(俺はそもそもこの世界に「神」だろう奴に無理矢理、突然攫われてきた。それがどうして簡単にチートなんて言葉で片づけられるのか?冗談じゃない!)


 ここにきて沈めていた怒りが浮上してきた。

 そんな空気を察してかアリルが尋ねてくれる。


「どうかしましたか?」


 心配からだろう。その声は優しい。


「あぁ・・・すいません何でもないです。」


(そもそも、何の力も無い俺と、「神」では力の差があるだろう。それこそ越えられないだろう壁が・・・ん?壁?)


 微かな違和感が引っかかる。

 だがそれも彼女の気合のこもった言葉に吹き飛ばされた。


「さぁ!先程の事は!無かった事にして!改めてハリキッテいきましょう!」


 こんな言われようでは返り討ちにあった三人組もうかばれない、なんて心にも無い事を思った所で二回目のご登場になった。

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