49 夢 スタートダッシュ
「その連携かけられると辛いんだけど・・・って言ってるそばから二択かけてくんなって!」
「そっちこそ強キャラでゴリ押しとかマジあり得ないんだが?」
そうやって友人と徹夜で格ゲーで遊ぶ。
外が明るくなり始め、窓ガラスが白く光り眩しくなって・・・
と、そこで目が覚めた。
朝だ。「こちらの」世界で迎える朝だ。
(あー・・・あの新作、まだ少ししか遊んでなかったのに・・・)
思い残しはかなり深いようだ。今更夢に見ようとは。
(つうか、「現世」に残っている「俺」は普段と変わらずに生きてるんだよな?そうだよな?今頃は何してんだろうか?)
あの時、二つに分かた「片方」は、俺であり、俺で無し?あれから十五年。
俺の「思い残し」を向こうに残った俺が楽しんでいるならば、そう思えば少しは報われるだろうか?
それでも・・・モヤモヤはどうにも無くならないようだ。
欲求を解消できないのはどうしようもない。
向こうに残った「俺」がどうなっているか確かめる術も無い。
俺はこの世界で生きるしかない。
ない袖は振れぬ、当たり前だ。
今の俺には本当にアレもコレも無くてどうしようもないのだ。
「おはようございます。さあ本日は、朝食を取ったらその後、商会へ行きます。張り切っていきましょう!」
横からハツラツとした声で挨拶された。アリルだ。
彼女は今日これから本格的に商売人の仲間入りなのだ。
それは大事なスタートダッシュ、朝から無駄に気合が入るのも無理はない。
そんな時に難しい顔をしていたら、この先にケチを付けてるみたいになってしまう。
昔の夢を見て不機嫌になっているしかめっ面を一撫でして普通を装う。
「おはよう、ございます。」
そこでやっと頭が回り出してくる。
村での生活は朝早い。まだまだ早朝、日が出てすぐだが、この時点でもう既にいつもなら働き始める。
それを長年してきたので慣れたモノだ。すぐにベッドから起き上がる。
アリルは着替え済みで、さらに早起きしたのは明白だ。
バスルームに衣服を入れておくカゴがあり、昨日脱いだものはそこに入れてある。
俺もいそいそと準備にとりかかる。
着替え終り一言かける。
「俺は用心棒・・・?護衛として付き添う、でいいんですかね・・・?」
とりあえずは聞いてみたが、いまいちどんな事をしたら「仕事」をしていると言えるのか?
そうゆう設定の「キャラ」は今まで沢山いたが、その背景まで説明されてもボンヤリとしか想像できないものだし、細かいところまで理解している一般人なぞ普通はいない。
「はい。何かあった時は宜しくお願いしますね。」
(何か、とは・・・・宜しく、と言われても・・・)
前世二十八年と今世十五年、それだけ生きてきてても、用心棒なんてモノに縁は無かった。
それはそうだ。そんなものにお世話になる生活なんてまっぴらごめんだろう。平穏が一番だ。
そんな俺が、知らない事にチャレンジする。それも商人の用心棒。
こればっかりは「経験」がモノを言う、なんて話にはならないだろう。
今まで何せ用心棒なんて身近になんて、一度だって居た訳が無いんだから。
見本になるものが自分の中に無く、周りの雰囲気を手探りした末に、「こんな感じ」な似非者のできあがりだろう。
俺にできるのは、せいぜいが店の手伝い程度が関の山じゃなかろうか?
そう悩んでいると、準備万端!と言っていい位にフンスと鼻息を鳴らしているアリルが言う。
「さあ、食堂は一階です。食べ終わり次第、宿を出ますから。少し急いでください。」
荷物ヨシ!鍵ヨシ!忘れ物ナシ!と指差呼称し始めた彼女は、それが済むとスタスタと部屋を出ていくのだった。




