481 黒幕は誰か?
俺はここに問題を解決しに来た。それを思い出す。こうしてここまで話を聞いてしまった以上はグリフォンを排除するだけでは収まらない。
「俺が何とかしてみましょう。先ずはグリフォンからですね。それで、こんな舐めたマネする犯人、黒幕は心当たり有りますか?」
俺のこの申し出に「え?は?」と思っても見なかったと言わんばかりの呆れ顔が向けられた。
「貴方は何を言っているの?って言うか、クロマクって何?犯人と言っても心当たりがあり過ぎるわよ?それこそウチの従業員の中にも犯人と疑わしき者がいない訳じゃ無い。避難した者の中にそう言った疑いのあるヤツが数名こちらの調べでいたわ。だけどここまでの事をする計画を立てていた訳じゃ無いみたいだけど。」
黒幕という呼び方はこちらの世界では無いらしい。
しかし独自の調査をしていてそこまで分かっていたのなら何故そいつらを放っておいたのだろうか疑問が出る。
それが顔に出ていたのかその答えを聞かせてくれた。
「何処もね、一緒なのよ。この目覚草を生産する環境はね。うちが一番生産力がある農場な訳で無し、特別何か特殊な方法を取っている訳じゃ無い。だからそんな潜入捜査みたいなマネされても別段探られて痛い物は無いの。だから放っておいた。先ず相手のしたい事が何なのか分からなかったのもあるわね。だから泳がせたの。けれどそいつらも早い段階でおかしいと思って調べさせたけど裏に何者が居たのかは判らなかった。まぁ、人手不足だったし、そいつらも真面目に働いてくれていたしで結局怪しい行動はしなかったからね。」
「林に行ったとかは無いですか?そこら辺を集中的に調べていたとか。そもそも、そのグリフォンがすんなり着陸できる地を確保するためだったとか?」
俺はその単純な疑問を投げる。そいつらは簡単な仕事を受けた工作員で、それだけ複雑怪奇な行動をした訳じゃ無いから余計に目だつような事無く見逃した可能性。
「それは考えもしなかったわ。確かにあんな巨体をすんなりと受け入れられる場所なんて林の中に無かったはずだわ。盲点だった。単純に環境整備のために伐採をしたんだと思ってた。あー、コリャ一本取られたわ。」
納得のいく事らしく、グリフォンが来る直前にそういった仕事を回していたらしい。
これである程度の流れと言うか、話の筋は全部つながった。
そしてこれからだ。その前に聞いておく事がある。
「ここに残っている従業員は信用できるのか?三人とも犯人の手下とか、それこそ計画を企てた奴とか無いか?」
「あの三人にそれは無いわ。だって私が直接面接して雇ったからね。それにあの三人は私を尊敬してくれてる。こんな理不尽な真似を仕出かすような事しないわ。」
「その雇われた時からこの農場の乗っ取りを計画していた可能性は?」
俺は少し残酷な質問をぶつけた。何せ黒幕の姿形が分かっていない。ならば誰を疑ってもソレはそれで今のうちにやっておかないといけない思考だ。
コレをするのとしないのとでは「判明した時」のショックの大きさが違ってくる。
衝撃が大きくなるとそれを信じられずに呑み込めないで、その後の行動にためらいが出る。その隙、行動の遅さは致命傷に繋がりかねない。
ここで小さくするための覚悟を少しでも刷り込んでおかないと後悔だけが大きくなる結末に繋がりかねない。
俺自身も少しこの抉る様に疑ってかかる事はこの主任ライエには酷な話だと思うが、必要な事なので踏み込んで言葉にしたのだ。
これにはさすがに言葉にならず沈黙してしまっている。
「・・・無いと思いたいわね。けれど、それも演技って事もあり得るのかしらね・・・でも私は彼らを信じるわ。だってここまでにするのに彼らは私と苦楽を共にしてくれた一番の部下だもの。こんな状況になっても最後まで居残ってくれたわ。」
甘いと言ってもいいのだろう。だがこれも仕方が無い思いもある。それには俺はこれ以上ケチを付けないでおいた。
「で、今後だけど。これ以上傭兵が来ない様に先に俺がグリフォンの件を片付ける。もしかしたら勝手に魔獣退治を犯人が依頼してそれを盾にこの農場を踏み荒らしてくるかもしれないからな。」
俺のこの発言に驚かれる。
「何よそれ!私の許可なくばそんな依頼は一切出すことは無いわよ!?そんな話になっても私本人の現場での許可無しにはやらせたりしないわ。」
「でも、それが外部の人間だったら?あの農場に居座る魔獣が居続けると、いつかこっちに被害が出るかもしれない、と。ここの「関係者以外」の人間が依頼を出せばソレは関係無くなる。」
これには絶句した彼女。考えられる面倒パターンだコレは。
農場は自分の所の問題と言って拒否し、だが、傭兵は農場の依頼では無いからその魔獣討伐のために手段を選ばず、話合いをせず、勝手に土足でこの農場を踏み荒らしていくに違いない。
魔獣をほったらかしにしておいてその被害がいつか他の地域に火の粉が散ってくる可能性を盾に、無理矢理こちらの事情を無視して力づくで入り込んでくるだろう。
「大変です主任!また傭兵たちが来ました!魔獣を退治するための許可を出せと言ってきています!」
どうやら遅かったようだ。大きく一つ深呼吸をした主任は大きな声で言う。
「私が話をします。すぐに行くから待っている様に伝えて。」
それを聞いた従業員はそのイラついた大声を受けてビクッとしたが、そのまま慌てて外へと走って行った。
「で、今はどんな力であっても借りたい所なのだけれど。貴方の言った言葉。あれ、真に受けていいかしら?」
どうやらどんな人間かも知らない俺の力を借りる決心ができたようだ。関係者でも無い人物を頼る事はきっと気分も良くないだろう。でもそう言っていられる状況では無い。
俺もここまで来て関係無いという態度で居る気も無い。むしろ黒幕に泣きっ面をさせてやりたくなった。
俺の気に入った目覚草のお茶を馬鹿にされた気分になったから。
「じゃあ、俺の本気をチラッとお見せしましょうかね?」
俺はこの怒りで震える主任の緊張を少しでも解くために少し冗談交じりにそう宣言した。




