46 原理 理屈 困惑
「どういう原理なんだ・・・?」
と口からこぼれてしまう。
そんな俺に親切に解説してくれるアリル先生。
だが整理整頓は止まらない。器用だ。
「うーん、私も詳しくないんですが。」
と前置きをした彼女だが、よっぽど俺の方がこの世界に無知な訳だ。
どんな些細な事でも「知れる」のは今の俺にはありがたい。
「何でも「付与」を中心にそれ専門の術師がカバンへ魔力を注いで定着させるのだそうです。」
俺がまだ村で子供の頃に検証した結果、この世界の物理や現象は「地球」と変わらなかった。
ニワカサバイバル知識や雑学等も試して解った事だ。
この世界で俺が生きて行くのに「問題」が無い、とそれで体感的に理解した。
だが魔法だ。こればかりは自分には使えない。が、使えないなりにも生きる上で必要が無い。
だから考えなかった。考えてこなかった。
魔法がこの世界に与えている影響も恩恵も。
魔法というものがどういう原理なのかも。俺は化学者でも無ければ探究者でも無かった。
いや、格ゲーだけは探究者だった。どうすればもっと楽しめるか、よく考えてた。
今はそんな事どうでもいい話だが。
「その物の持つ「要素」を拡張できるそうです。カバンなら物が入る量が拡張、ナイフなら切れ味が上がる、という具合ですね。」
「その特殊技術がかかっているから必然、値が高い、と。」
「はいそうです。あ、そこのそれ取ってもらえますか?その足元の青いやつ。」
そう言われ自分も片付けを手伝いはじめた。
取ってくれと言われたものを手渡し、それを彼女が目録と照らし合わせてカバンに入れていく。
奇妙なその光景は筆舌に尽くしがたい。
(カバンの口にちょっと先が入っただけで、「ニュルゥリ~」と中に納まっていく・・・ある意味気持ち悪いな・・・)
スライムと言えばいいのか?カバン口に付いたと思えばその物の幅が縮んで、それと同時に入っていく部分は何十倍?にも引き延ばされながら中へと吸い込まれていく。
そのカバンの中をチラリ覗いて見えたのは何処までも広がる奇妙な空間だった。
その中に、「こじんまり」と入れた荷物が元のままに並んでいた。
その見えた景色に少々、意識が眩んだ。
全てがカバンに片付いた時には少し青ざめていたんだろう。
「はー。片付きましたね。あれ?どうしました?」
「いえちょっと今日は色々あり過ぎて疲れたというか何というか・・・」
(魔法・・・知っとかなくちゃいかんかな・・・)
「じゃあ早速お待ちかねのお風呂ですね!準備しますから待っててくださいスグですから!」
そう、それはバスルーム。何もかもがそれ。
そこに一つだけ違和感がある。
ラッパの様なものに蓋をされているモノが。
その蓋を開けて何やらアリルがゴニョゴニョ言うと、そのすぐに湯船にお湯がジョバジョバと出て溜まっていくではないか。
(何か似ている・・・この仕組み・・・神隠しのアレか?)
「さあせっかくの高級宿です。サッパリしちゃいましょう!」
「あのこれってどうなって・・・」
彼女のテンションと俺のテンションの差が大きすぎる。
「あぁ、初めてですもんね。」
(いや、違うんです。そういう意味じゃないんです)
「私はこれで二回目ですから。」
そう言って彼女は使い方を説明してくれたのだが。
(うん、よく知ってますよ、えぇ・・・そうじゃないんです・・・)
気持ちの整理も、困惑の元があり過ぎて何もまとまらない。
「あ、湯が溜まりましたよ。冷めないうちに早く入ってしまいましょうか。」




