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319  求める者

 一階層に居たゴブリンは見当たらない。それもコレもキマイラがそこらじゅうを駆け回っているからなのだろうか?

 その追いかけられている侯爵は今どこらへんだろう?

 一階層はそこそこの迷路になっていたので、最悪は地上へのルートを外れてしまって違う道に入って行ってしまっているかも。


 しかしこちらはメルギスの案内で道には迷わない。


「ねぇ、あんたのその力の根源を教えて欲しいんだけど。」


 マーリが突然話しかけてくる。それをフィルナが諫める。


「いい加減にしなさいマーリ。彼への詮索はしない約束です。」


「マーリは一番俺たちの中で強さを求めてるからな。こればかりは俺たちには止めらんねぇよ。」


 キッドはそう言ってフィルナを諭す。


「何もタダで教えて欲しい訳じゃ無いわ。今回で得た私の分の報酬は全額出すつもりよ。足りないと思うのであればまだまだ出す気はあるし。」


 そのセリフは他の皆が呆れるほどだ。それだけの覚悟があると言う事

 いや、それだけ金への執着ではなく、強さへの執着の方が強いと言う事。

 強さを得られるなら金なんていくらでも払うと言う事。


「マーリ、それはいくら何でもやり過ぎだ。」

「おいおいおい、そりゃ幾らになるんだ?ちょっと考え直せ。」


 ダンクとメルギスが引き留めに入る。


 彼女のここまでの態度が情緒不安定だったのはこのためのようだ。


 強さへの嫉妬、憧れ、執着。強くなりたい、と。

 マーリは自分の口で「自分の魔法は世界一」だと声高々に出していた。それは目指す強さへの決意の表れなのだろう。

 それを覆すような結果を出す俺にライバル心のような、それでいて教えを請いたいような、そんなちょっと複雑な心境になって困惑していたんじゃなかろうか。これは俺の推測に過ぎない考えだが。

 彼女の魔法のその威力は凄まじい。自負があったのは見ていて分かった。

 今までその自信を持って冒険者をしていたのだからそれを覆す存在に戸惑うのも無理は無い。


 だからそこら辺を解消してやる事は俺にはやぶさかでは無かった。

 どんな反応をマーリがするにせよ、そのモヤモヤを解消してやろうと思った。

 まあ例えより一層モヤモヤが増えて、なおかつ信じられなくて納得できないと本人が言おうとも。

 ここまで一緒に迷宮に潜って多少は情が移ってしまったと思う。

 それが後々に後悔になるか、ならないか何てこの場で判断が付けられない。


 なので俺は流れのままに返事をする。


「あぁ構わない。俺の事を多少は話そう。金は要らない。だけど最初に言っておく。マーリ、お前の求めるモノを俺は持っていない。それでも聞きたいか?」


 俺は真面目に、そして少し威圧を込めたつもりでそう伝えた。

 それでも臆さずに即肯定の返事をマーリはしてくる。


「聞かせて。それが例え私の直接の強さに繋がらなくても知識や経験の「強さ」に繋がるならそれでも構わないわ。」


 ちゃんと冷静に強さの「種類」を理解しているマーリに感心した。


(何だ、ちゃんと考えてるんじゃないか。ただ魔法だけに拘らない所は好感が持てるな。まあここまで来るまでの俺への態度は褒められたもんじゃないが)


「ならソコの角で他のメンバーから話の間離れる。聞かせるのはマーリだけだ。いいか?」


「白牙」に確認を取る。それはすんなりと通った。


「俺もちょこっと知りたいんだが、仕方が無いな。」

「それでマーリの戦力が上がるなら。何から何まですまないな。」

「ここまであんたから受けた借りがデカくなりすぎて今後返し切れないぜ。」

「この迷宮での貴方から受けた御恩は私たちの今後の一生の活動を掛けて返させて頂きます。」


 皆が了承した後にマーリが一言。


「お金、魔道具はありがたく貰うわ。それらをあなたに還元しないのは図々しいカモしれないけど。私たちはこれからも迷宮を潰し続ける。それには一層お金も魔道具も必要だから。私たちの手で今後迷宮の氾濫なんて起こさせない。」


 固い決意に「白牙」全員が顔を引き締める。それを見た俺は。


(どこぞのどんな物語ですかね?こいつら主人公属性バッチリだなオイ)


 心の中だけで彼らの決意を茶化すのだった。

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