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31  商会

 俺は忙しなく行き交う人々を見てこう思っていた。


(どっかにゲーセン無いかなぁー。我ながらまだ未練タラタラだぁ・・・)


 人だかりが流れていくその様に前世の景色を幻視してしまう。


 15年かけて現実を受け入れたと考えていたが、この街に来て「そうでもなかった」と思い知らされていた。


(ゲームができないフラストレーションを筋トレと型稽古で誤魔化してた毎日だったからなぁ。)


 繁華街の大通りを俺はアリルの後ろについてまた歩いていた。


 結局「用心棒」とやらを受ける事にしたのだ。


 その時の会話は・・・


 =------=------


「あの!もしこれから働き口を探すならば私の用心棒してくれませんか?」


「・・・んん?用心棒、ですか?」


「えー、助けて頂いたばかりかこの様な申し出は失礼だとは思いますが、あなたは・・・えー?お、お強い?ですよね?なので私がこの街で一仕事終えるまでで構いませんので用心棒、兼、お手伝い、という形で雇いたいんです。賃金はお礼も含め色を付けますし。どうですか?」


「あー、はい。荷物持ちとかですかね?いいですよ。じゃあ改めて宜しく。しばらくの間お世話になります。お願いします。」


「え?あっ!こ、こちらこそ宜しくお願いします。」


「では今後の予定と行き先はどちらで?」


「まずは商会に出店許可と場所の交渉のためにそちらに向かいますので付いて来てください。」


 =------=------


 とまぁこんな感じだった。


 用心棒なんて言葉が、頭になかなかしみ込まずにいた。

 アリルが捲し立てるように話すのを眺めて有名な映画のタイトルなんかを思い出しかけた。

 途中なぜ「強い」の所ら辺が疑問形なのかはスルーして、ちょっと考えた。


(やりたい事、目的も無かったし社会勉強だな。別に害も無い。お金や物の価値も学べそうだ)


 と、軽く了承したら何故か戸惑われた。即決してくるとは想定して無かったとか?


 で、今まさに大通りをテクテクと歩き、商会とやらに向かっている。


 後ろからアリルをそれとなく観察していたが、駆け出しとはいえ流石は商人と感じさせるキビキビした足運びだった。

 人混みに負けない進み具合で、しかもさりげなく周りの店の商品や値段をチェックしてるようだった。


 そうこうしていたら商会の建物の前に到着する。

 隣では長い息を吐いて落ち着こうとしているアリル。

 無理もない。目の前にはどでかい扉が開いているのだ。


(馬車が横二台並んで入れる程デカい・・・)


 この街に入った時にすぐ目に付いたのはよくファンタジーモノにある荷馬車だった。ただしそれを引く動物はつながれておらず、拝む事が無かったが。

 それがそのまま入れてしまう程の大きさの入り口とは派手過ぎやしないか?と要らぬ考えが出る。

 余りにも自分のイメージした商会とかけ離れているのでびっくりした。


 だがそんな俺をよそにアリルは怖気づかずに中へ入っていった。俺も用心棒なのでその後に一緒について入る。


 そこは派手な広い空間だった。

 商談スペースなのか、装飾の豪華な椅子とテーブル、それを隠す衝立ですらゴージャス。

 窓にステンドグラス?天井にはシャンデリア。そして床は踏むのを躊躇わせる真っ白なタイルが敷き詰められていた。


(眩し過ぎる!目がぁー!目ぇーがぁー!)


 とある滅びの言葉ネタで心が満たされる。


 そんな俺をよそにアリルは奥にポツンとある受付カウンターらしき場所へ堂々とツカツカ近づいて行く。

 そこには歳のいった小太りのオッサンがいて物珍しい者でも見るかの調子で声を掛けてきた。


「おや、珍しいな。今日はもう予定は入って無かったはずだ。飛び入りかね?」


 低くしっかりとした声だった。

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