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275  悉くを尽く

「それは貴方の強さを見てから決めます。」


 その一言で俺たちは王国の近場の大きな森に来ている。

 ここは数年に一度くらいに魔獣が発生する穏やかでいて、それでいて唐突な危険を孕む所らしい。

 しかもその魔獣の出る周期に今入っている事も。


(コレ絶対お約束だよね?出てくるんでしょ?そうだよね?そんでもって俺はそこでどんな選択をしてもこのパーティーに一目置かれることになるんでしょ?)


 内心では迷宮攻略を早まったかと思ったがもうここまで来ては引き下がれない。

 いや、しがらみなんて気にしない自己中心的な考えを持っているなら今すぐ逃げればいい。

 だけど俺はそんな事できる度胸は無い。


(ここでやっぱりやめたとか言ってもきっと俺の「逃げ道」を塞ぐ何かが現れるに違いない)


 ここまでに密かにやっていた事がある。度胸が無いので堂々とではなくひっそりとだが。

 歩みを遅くしたり、このパーティーから自然と距離を置こうとする。そんな事をするたびに何故か呼び止められたり、こちらに話しかけられたりと「隙」が無かった。

 いや、何かの力が働いたかのような絶妙なタイミングで様々な邪魔が入った。

 時に屋台のオッサンに突然話しかけられてビックリして足を止めたらパーティーも足を止めてその屋台で買い食いをする。主に買い食いしていたのは魔法使いの美女。危ない認定に続いて食いしん坊キャラが追加とかどんだけだとツッコミを入れる俺。

 時に最高のタイミングでその場を離れる事に成功したと思えば、有名店らしき所に並んでいる行列の壁に突如阻まれるなど。

 あれだけ偉そうに俺は条件を付けておいて気が変わってこのパーティーから距離を取ろうとしたら妨害に遭う事、会う事。


 そうこうしているうちに、ここまで来てしまった訳だ。

 そしてこれまでの経緯で分かる通り。「絶対に出てこない」なんて有るはずが無い。


 魔獣が数年に一度出る森で、その丁度出ると言う周期に居る。そこへトラブルや面倒事にこれでもかと遭遇する俺が、こんな所に居るって事は、それはもう絶対出ると言っているようなモノ。


 そして「ここらで良いか」とだいぶ奥地に入った所でいきなり大男が構え始めた。

 短い手槍を取り出し、そしてこれでもかと言わんばかりにガンガン大男の身の丈近い盾にぶつけて打ち鳴らし始めた。

 その音はかなりうるさい。うるさすぎた。


(何やってるんだよ!?そんな事すれば・・・あー、そうか、そう言う事か・・・)


 俺は察してしまった。見つけるのが面倒だから、あちらから見つけられるようにしているのだ。そう、魔獣に。

 これだけの音を発していれば迷惑千万だ。その証拠に周囲の小さい動物たちや木の上の鳥なんかは逃げ出している。

 だいぶ反響するようで視界に入る森の奥の奥まで逃げ出している動物たちが目に入った。


 もう俺はそこでケツ撒くって逃げる事が絶対に不可能だと認識した。


(あぁそう言えば狩りをしていないな・・・久々に弓を撃ちたい。父さんと狩りがしたくなった・・・)


 現実逃避するのは仕方が無いだろう。だって目の前にはドンドンとその巨体を露にする「ソレ」が迫ってきていたのだから。

 迷惑極まる音の発生源にそのまま突っ込んでくるのだ。もう騒音を出していないにも関わらずその魔獣は目を真っ赤にして、鼻息荒く、いかにも怒ってますと言わんばかりに。


「あぁ懐かしい。アレは村で最後に狩ったドス猪じゃアーリマセンカ。」


 しかしてその大きさはその時の魔獣より二倍はデカかった。

 近づいてくるその大きさに俺はもう力が抜ける。


(何だっていつもこんな事になるんだよ・・・もう俺の事はほっといてくれないかなぁ・・・)


 その魔獣は騒音を出していた大男にでは無く、何でか知らないが俺の方に突っ込んできていた。


「どれだけ俺って奴はツイてないんだろうね・・・」


 そう諦めて俺は跳びかかって来る魔獣の後ろへと「加速」に入って回り込むのだった。

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