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251  気付き

「だ、大丈夫ですか!?顔が真っ青です!どこか怪我を!?って言うか何処にも外傷はないみたいですけど・・・」


「気持ち悪くなる光景を目の当たりにして吐いただけだから落ち着けば治る・・・うぇ・・・」


 小屋の中で横たわり安静にして頭の中を空っぽにしようと目をつぶる。

 ミーニャは俺を心配して背中を擦ってくれている。


「あー、ごめん。迷惑をかけるね。だいぶ良くなったから外に確認しに行こう。」


 五分ほどそうやって横になり続けて休んでから今度はミーニャに「確認」をしてもらうために一緒に小屋を出る。


「・・・な、な、何ですか!?コレを・・・?まさか貴方一人で・・・?オークは一体でも傭兵が五人がかりで倒すと聞いています。腕力も体力もあって殺すのが難しいって・・・しかもそれがこの数?」


 俺はミーニャのその言葉を聞いて確信した。


(この「世界」と、あっちの世界の「ファンタジー」には一部存在が全く「同じ」ものが存在する・・・それはどう考えたって「オカシイ」)


 こちらとあちらは全くの別世界なのだから、共通するものがここまで有ること自体に違和がある。

 あちらの物語は所詮「空想」に過ぎない。こちらは「現実」だ。

「こちら」の現実が「あちら」の空想に影響を与えているのではない。「あちら」の空想が元になって「こちら」が造られたと考えるべきだ。

 そうすれば共通性が確保される。だって「こっち」と「あっち」で呼び名もその存在も全く同じ何てそう易々と簡単にあり得る訳が無い。


 エルフたちとゴブリン退治した時に気付いていてもおかしくなかった。だけどあの時は即、俺の「ゴブリン」に肯定されてそのままスルーしていた。

 世界の成り立ち、その真実に踏み込もうとして考えるのを止めた。何故ならそんなものはこれからの俺の未来に何ら必要ないからだ。考えた所で覆る訳でも無く変えたいと願う訳でも無い。どうしたってここに俺が存在する事が全ての結果だ。

 俺には「今」と「これから」が大事であって過去の「始まり」は意味の無いもの。


(後は例の問題だけだな・・・)


「なぁ、オークって「食べる」のか?」


「な、何を言っているんです?まあ質問には答えますけど・・・好事家がオークの肉を珍味だと言って食べたと言う話は聞いた事がありますが・・・こんなおぞましい魔物の肉なんて食べる訳ありませんよ?って言うか食べたいなんて言う人の精神が解りませんね・・・」


「あ、悪い。俺田舎出身で世の中の事ホントに丸丸解ってないんだ。だからこいつらも「魔獣」の一種として肉が食材になるのかと思って。」


「あぁ、そう言う考えでしたか。止めた方がいいですよ?こいつらは魔物です。人と見れば問答無用で襲ってくる存在ですから。そんな存在の肉を食べるとかそれこそ頭がおかしいです。」


 ここで世界の常識を一つ勉強になった俺は賢さが「1アップ」した。


(そういう「捉え方」なんだな。でも・・・オークをよくよく見てもどうやったって「豚」なんだよなぁ)


 豚肉の生姜焼きを思い出してお腹が盛大に「ぐぅ~」と鳴ってしまう。


「まだ昼を食べていませんでしたね。スープはもうできてますから小屋に戻りましょう。先に一旦食事を済ませてこちらの処理をしましょう。」


 ミーニャがそう言った直後にキマイラが現れた。しかも「ライオン」で。

 突然の登場に俺も面食らう。その大きさにだ。いきなり目の前に巨体が現れたら、いくらキマイラだと解っていても驚いてしまう。いつも出てくるタイミングが突然なのは注意しないといけないかもしれない。


 だが、俺なんかよりよっぽどショックを受けているのはミーニャだった。

 全身が硬直して額からは汗をダラダラと流し、がくがくブルブル震えている。

 目が見開かれて口をパクパク開けたり閉じたりと言葉が出てこない様子だった。

 息をするのも忘れている様に見える。


「あー、今見ている魔獣も同じキマイラだ。そう怖がらなくてもいいよ。」


 こう言ってみるが効果は無かった。ミーニャは全く先程の状態から変わらない。

 そこに追い打ちが入る。キマイラが炎を吐き始めたのだ。

 しかもそこら中に散乱している「豚肉」をその炎でこんがりと焼き始めた。


 瞬く間に複数の焼き豚が出来上がり、おいしそうな香ばしい匂いを辺りに充満させる。

 それをキマイラは美味しそうに食べ始めた。そうして食べ終わるとまた残っているオークの死体を焼いては食べる。

 それらが全て平らげられた後にはキマイラはもう満腹満足とでも言いたげにその場に横になって眠り始めた。

 地面に広がっていた血の海はキマイラの炎ですっかり焼け焦げて黒い地面になり、血の臭いは代わりに肉の焼けた匂いへと変わっていた。

 こうして「処理」は全てキマイラが済ませてくれた。その間、俺たちはその光景をハイライトの消えた眼で見つめ続けるしかできなかった。

 いつの間にかミーニャの震えも止まっていたが、その様子は何かを「諦めて」「悟った」ような無表情になっていた。

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