241 止めの一撃
今俺たちは宿を出て無事に廃棄鉱山へと続いている門の前に来ていた。
ここまで問題は発生していない。嵐の前の静けさの如くに。
俺はもうこれが後で「派手」になる前のちょっとした演出にしか感じない。
(昨日のチンピラはきっと諦めていないだろう。そして俺の勘が合っていればきっと来るんじゃないか?)
「待てよミーニャ。どこに行くつもりだ?お前とそんなヒョロイ奴の二人だけじゃ道すがら獣の餌になるだけだろ?そんなんじゃ行かせる訳にはいかないぜ?」
デントという昨日の面倒臭い傭兵が声を掛けてきた。こんな朝っぱらから。しかも俺たちより早くに門の前に居たのだ。待ち伏せしていたと言って良いだろう。
ゆっくり一歩一歩こちらに近づいてくる。ミーニャの方に。
俺はそれに危険を感じた。このまま近づけさせたら時間が勿体ない、と。絡んできたそれをあしらうだけで相当な時間を消費させられてしまうとハッと気づく。
「あんたは見送りに来たのか?はたまた俺たちに付いて来てくれる気になったのか?どっちだ?引き留めに来たと言うのなら無駄だ。そこを退け。でなければ力ずくで排除する。」
朝からげんなりさせられるのは真っ平御免だ。躊躇なくここは「力」を発揮する場面だ。
覚悟や使い処が軽すぎると非難されてもいい。けれどもこんな奴に無駄な、それこそ本当に無駄な時間を使わされるのは我慢ならなかった。こいつの昨日の登場の仕方も短い間で知ったその人間性も関わりたくない奴ダントツのナンバーワンだ。
ミーニャの前に出て壁になりその顔を睨んでみる。が、暖簾に腕押し。こいつはこれっぽっちも俺を見ていない。
「おいおいおいミーニャ。こんな奴じゃなく俺を選べよ。いつまで待たせる気だ?」
それは昨日の続きとでも言わんばかりの言葉だった。あれだけハッキリと昨日の時点で「脈無し」と跳ね除けられたのに、こいつはそれを理解できていない。
(違うな、こいつは自分の事しか頭に無いんだ。とんだ「基地外」だぜ全く)
「話の続きなら爺さんと帰って来た時に三人でじっくり話合ってくれ。今は早く出発したいんだ。そこを退け。さっきも言ったが邪魔をするな。」
こういう手合いとは「人と話している」と思ってはいけない。余計に使わなくていいエネルギーを使わされてしまうから。
だからデントの横を通り過ぎようとするとミーニャがゆっくりと口を開いたのを見ておいおいと思った。まともに相手をするな、と。
だが次にはその言葉に俺はびっくりした。だが「あり得ない」とも納得した。
「お爺ちゃんが貴方の事を「認めたら」私は貴方のモノになりましょう。」
そう言ったミーニャはスタスタと門衛の前に素早く歩いて行く。
俺にはミーニャの爺さんがどんな人か知らないが、デントを「認める」ハズが無い。とストンと何故か腑に落ちた。
こんな宣言をできる程、このデントと言う傭兵は「つまらない」存在なのだろう。
そして立ち塞がっているこいつをあしらうのに手っ取り早い一言でもある。
爺さんが見つからなくては話がこれ以上「進まない」のだから。
そして爺さんがもしも「亡くなって」いたら絶対に、永遠に、「成立」することは無い。
それが理解できていればここで「協力」の申し出をデントがしてくるはずだ。
だけどこいつは訳の分からない勝手な「理屈」を吐き捨てた。
「おい、ミーニャ。もう俺は優しくしないぞ?せいぜいその言葉を後悔するんだな。」
その声を聞こえないとばかりに無視して門衛に手続きをしてもらっているミーニャ。
(・・・こいつ何考えてる?諦めた訳じゃ無いだろコレ。昨日から今まで、いや、もっと前からこいつはミーニャに付き纏っていたんだろ?どうも引き方が綺麗すぎる・・・)
何とも言えない違和感を引きずりつつも俺も門衛に手続きをしてもらいに門に向かって歩く。
デントは俺たちを見送る何て気はサラサラ無く、そのままもはや用は無いと言わんばかりに足早にその場から去っていった。
(あの調子だと絶対に何かあるよな・・・)
今までのイベント発生密度からして絶対にまた後であいつ登場するよな、と俺の脳は解析している。
はぁ、と一つ溜息を吐いて門衛に「第二級」の手形を見せるとそこでもまた驚愕した目で見られた。
(いったいどれだけコレ凄いの?マジで怖くなってきた・・・エルトスぇぇ・・・)
商業都市で発行された手形が、王国でもその威力を発揮した事に少なくない戦慄を覚えた所でようやっと俺たちは門を出る事になった。




