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215  ペラペラと

「戦ともなれば人が大量に死んでいきます。それをあなたたちは素知らぬ顔で見過ごすと?」


 王女様は険しい顔で五人を非難する。しかしその答えをハークスはあっさり教えてくる。


「帝国にて強力な戦争兵器開発の兆しアリと間諜から文が届けられました。その間諜からはその後、いくら待てども音沙汰無し。死亡したと思われます。それがどの様な意味か解りますか?」


 それは要するに届けられた内容が確信するに足る危険な情報だと言う事。

 探りを入れている最中に見つかり始末された。そんなありきたりな話だ。

 だけどそんなありきたりだからこそ、その情報の重要度が上がる。

 これは密かに王国が戦争準備を水面下でしていかなければならなかったのが分かる。

 帝国にバレない様に、警戒や不信を受けない様に、防衛力を付けなければいけない。

 その兵器でこちらにいきなり突撃されて王都で戦争なんてされた日には笑い話にもならない。

 それこそ地獄絵図の惨状だ。それだけは絶対に防がなければいけないと分かる。


「・・・その情報を重要視しなかった王に見切りをつけて、その権勢を丞相は削っていったのですね・・・そして有象無象の厄介な危機感の無い無能者たちを排除して今に至ると。」


 王女様はここにきて頭の回転も理解も早い。結構なすっ飛ばしで顛末の内容を飲み込んだ。


「お分かりになっていただけまし・・・」


「それとこれとは話が別ですけどね。私を襲撃してきた者たちは全員が訓練された動き、そして洗練された武器でした。それを仕向けてきた裏が居るのは明白です。その者には極刑を下します。それこそ王族を安易に殺そうとした頭の悪い愚か者です。その様な者はこの国には要りませんし、私の今後の安全を確保するためにキッチリこの件は片を付けます。」


 ハークスの言葉を遮って王女様は言い放った。

 馬車の中で話しあった当初の突撃作戦とはまるで話にならない展開になってきている。

 この国を乗っ取って私腹を肥やしている丞相、では無く、国の危機管理における上での安全保障上の措置とか。

 この国の重鎮が馬鹿なのか、それとも優秀なのか、また分からない話になってきている。

 いくら何でも王を排除とはいき過ぎなのではと思うが。果断なこって。


 当初の王女様の「助けて欲しい」という言葉にすれば、黒幕を引きずり出して対処するという意味では間違っていない発言だ。いや、本当にソレで上手く行くかはこの突然の展開に頭がついて行ってない俺には判断できなかった。


(誰か俺に落ち着ける時間をくれよ。イヤホントマジデ)


 ゴレンジャ◯な彼らの登場で少なくとも俺の思考はシリアスから大幅にギャグへと移行している。

 悪乗りが過ぎると何処までも行ける所まで行っちゃえ!思考だ。


「姫様、今この時に丞相を討たれるわけにはまいりません。」


 ハークスが先程から代表で話している。残りの四人は警戒して武器を構えて隙が無い。

 それもそうだ。王女様の後ろ、ここまで歩いてきた廊下は「俺の屍を越えて行かれた」者たちがみっしりなのだから。いや、死んではいないきっと。力加減は慎重にやったから。たぶん。


「私は別に襲撃を指示した者の名は口にしてはおりません。勘違いは止していただけないかしら?」


 このハークスの発言で「丞相、アウトー!」と脳内で笑ってはいけないアナウンスが流れてしまった俺は悪くない。

 カマをかけたと言える訳でも無いレベルの挑発に、それに素直に乗っかってしまい口を滑らせるチョロいハークスがマヌケなだけで。


「仕方がねえなぁ。もう姫さんここで潰して消しちまえばいいだろ。それが一番手っ取り早い。」


 クロースは王族を殺す発言を何ともない様に口にする。


「継承権も所詮は下から数えた方が早い程の身分です。一人くらい行方不明になっても構わないでしょう。」


 腹黒すぎる残酷なセリフを軽口の様に言い放つのはブルース。


「問題解決の道はそれが一番の近道か。その提案、乗った!」


 キラーザがブルースに同意する。


「姫、恨みは有りませんがお命頂戴!」


 レジットは王女様に今までの歩み寄る姿勢から手のひらクルーリ。


「致し方ありません。姫様お覚悟を!」


 ハークスがそう宣言して五人は一斉に王女様に襲い掛かった。


俺はこの時何かを忘れている事に気が付いた。


(おや?戦争?帝国?兵器?そう言えば・・・)

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