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191  フラグ回収

 俺はかなりのスピードを出して森の中を疾走している。肩にはしがみついて離れないキマイラが乗っている。暗くなりかけた頃に帝国の門が見えた。こんな早くに辿り着いてしまった。どれだけの速度が出ていたのか見当もつかない。

 その門の前には魔獣狩りから帰ってきただろう者たちが門の前でたむろしていた。


(そういや魔獣の暴走は帝国にまで迫ったのか?)


 そう思って振り向いた。自分が走って来た道は一直線に帝国の門の前までつながっている。


(あー、だからこんなに早く着いたのか。そうすると魔獣はここで処理が行われたのかな?)


 よく見れば地面は血に染まっているし、怪我を負っている者たちが多かった。

 それに衛兵やら騎士と見られる者たちが指揮を執って片付けや処理に走り回っているようだった。


 その周りを商人が慌ただしくしている。そこらじゅうで値段交渉やら記帳などしている。その熱気が凄い。

 剥ぎ取りも途中な物も辺りにはいくつも散見される。


(かなりの魔獣の数だったから、それを全て狩る事ができているなら相当な経済効果が出てるだろうな)


 門に近づきながら今回の魔獣討伐にかなりの時間と労力、そして兵数とその犠牲が出ただろうと推察できた。

 担架で運ばれる怪我人を見てつい先ほどまで戦闘がなされていた事を知る事ができる。


(それにしたって魔獣の暴走はつい昨日、一昨日だったか?それが今さっきまで。相当キツイ現場だったのか、はたまたトラブルで何かと上手く回らなかったのか)


 門の前に居た衛兵に中に入っていいか聞いてみた。

 これだけの惨状に慌ただしくも返事をしてくれたのには感謝したい。


「ああ?勝手に行け!こっちは忙しいんだ!って言うかお前は身ぎれいだな?何処の何もんだ?」


「いえ、俺は先日に森に入って、今戻って来たばかりでこの現状がどうなってるのか聞きたいぐらいです。」


 嘘とホントを混ぜてとぼける。真実を伝えた所で話はややこしくなるばかりか、信じる事などできないだろう。それこそ怪しい奴認定されて捕まるのがオチになる。


「良く生きて帰って来れたな・・・運が良いのか悪いのか?簡単に説明してやる。魔獣が来た。対処した。今しがたそれが片付いたばかりだ。さあ、分かったらさっさと行きな。」


 そう言って手を振られて追い返されそのまま門をくぐって中に入る。

 周辺を篝火で照らした門前広場。そこは盛大なお祭り騒ぎだった。食事の屋台がそこら中。そんな中そこかしこで魔獣素材の即売会や交渉、その他大小さまざまな「商売」がなされている。辺りはその声でうるさいくらいだ。


(全くトンだタイミングで戻ってきちまったな。ここを抜けるのも宿を取るのも難しいぞ。)


 集まっている人の密度はその隙間を抜けようとする事が困難な程。それにこれから夜になろうという頃に宿を取るのは難しいだろう。

 これだけの人がここに集まっているならこの周囲の宿は部屋が開いていない事が予想される。


「仕方が無いな。どこかで野宿か。」


 魔法カバンの一つを俺が貰っている。残りはエルフたちに渡してあるのだ。彼女たちへのプレゼント、と洒落た事を言うつもりは無い。俺の一人旅には一つで充分、二つも三つも要らないからただ単に渡したに過ぎない。

 カバンの中にはこれまでの旅の荷物をこちらに全部入れておいてあるのでキャンプをするのに支障は無い。

 そうやってその場を離れようと丁度いい場所を探すために辺りをキョロキョロしていたら思わぬ声が俺に掛かる。


「あ!あなたはいつぞやの!」


 その声のする方向を見れば、帝国への道で助けたあのタグデスと言う青年商人の姿があった。

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