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172  作戦開始

 洞窟内最奥の部屋。体育館並みに広いその中を巨大な竜巻が所狭しと暴れまわっている。

 余す所無くゴブリンを吸い上げて塵と化すその威力はダイ◯ンを思わせる。

 そんなふざけた感想しか出てこない程にゴミ掃除は順調なのだ。

 余計な有象無象は一纏めにして一気に排除。それが基本だろう。


 俺が先ずエルフたちに指示したのは、風の精霊魔法で一息に片付けるべし、だ。

 それは正解で、逃げ場の無いこの場所を魔力光が眩しいぐらいに満たしている。

 その光の元はゴブリンだ。竜巻の中で互いがぶつかる者、巻き込んだ剣が刺さる者、弾き飛ばされて天井や壁に打ち付けられて潰れる者、等々。

 それはたった一分程度の時間だったが雑魚は全て片付いた。エルフ全員の魔力を集中して発動させたのが良かったのだろう。

 ゼナンもこの時だけは素直に俺の言葉に耳を傾けて協力していた。どういう心境の変化か分からないが、足手まといにならなければいい、くらいにしか思わなかったけど。


 さて予想通り、キングは残っていた。これで片付いてくれていたら楽だったが、そうは問屋が卸さないらしい。

 脚を踏ん張り、腰を落として構え、両腕を顔の前でクロスして飛ばされない様に耐えていたみたいだ。

 その構えを解くと同時に身体を膨張させるほどに息を吸いこんでピタッと止まった。


「あ、ヤバい。皆、耳を塞げ!急げ!」


「ギイャァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 洞窟内がビリビリと鳴動する強力な振動が発せられた。心臓が今にも止まってしまうと錯覚しそうになる程の。

 それはゴブリンキングがした、ただの咆哮。それだけの威力を持ったただの怒りの叫び声。

 それが終わってすぐに動き出したのはセレナだ。炎の剣を発動させていた。この程度の修羅場は何度となく潜っていたのだろう。

 即座にゴブリンの懐に入り込み相手の腹を一閃、と同時にバックステップで退いた。


「手応えがおかしい!気を付けろ!全員連携を密にするんだ!」


 その掛け声に反応して先程の一撃を意にも介さない無傷のゴブリンが、拳の一撃をセレナに向かって振り下ろす。


 ズドン!と地が揺れる程の威力。それが間一髪、セレナの髪を掠め千切った。

 速さはそれ程では無いらしく、余裕を見せているセレナは避けた動きをそのままに、振るわれて未だ伸び切っているゴブリンの腕に斬りかかった。


 しかしその斬撃で腕は斬れていないどころか筋傷一つ残らない。その皮膚は頑強でエルフの攻撃にビクともしない。

 それを鬱陶しいと言わんばかりに腕を振ってセレナを打ち払おうとして動いたゴブリンの腕は空を切る。

 セレナはそれを既に見切って後方に大きく跳び下がったからだ。

 その隙を見逃さない他のエルフたちが一斉に斬りかかる。だが一向にその剣はゴブリンの身体に傷一つ付ける事は敵わなかった。

 太腿、二の腕、背中、後頭部、胸部と斬りかかっていたのだが、そのどれも筋一つ入らずに弾かれている。


「お前たち!どけぇぇぇ!うおぉぉぉぉぉ!」


 ゼナンが気合と共に飛び上がる。ゴブリンの頭を超える高さまで。剣を大上段に構えたままに。

 それを完璧に迎撃するタイミングでゴブリンの拳が空中へ打ち抜かれる。

 が、そこにはゼナンの姿は無い。彼は既に地に足を付けていた。


「もらったぁ!」


 ヒュンと剣の切っ先が大気を切り裂く音がするとゴブリンの左目の片方に一筋剣筋が入る。


「ギャァァァァァァァァァァァァ!」


「片目を潰すしかできなかったか!だがこれで少しは有利になったな!」


 ゼナンが即座に着地していたのは、風の精霊魔法で自身の身体をコントロールしていたみたいだ。エルフの戦闘方法は風を纏うのが基本のようだ。

 セレナたちの流れるような動きに納得がいった。動いた後の硬直をソレでフォローしてすぐに動けるようにしているのだ。


 片目を潰した、だが当然それだけで終わるはずも無く、ゴブリンは増々怒りを体中に纏わせてその身体は一層膨張しているように見えた。

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