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168  裏切らない展開

 アッと言う間に囲まれた。その数ざっと百はいるかもしれない。そう、予想を裏切らない見た目の例のヤツ。


「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」「ぐぎゃ!ぐぎゃ!ぐぎゃ!」「ぎゃおぎゃおぎゃ!」


 辺りは小鬼、そう、ゴブリンで埋め尽くされている。その内の数体が飛び出してきた。

 それにすかさず対応したのはセレナだった。斬りかかってきたゴブリンを逆に切り伏せる。

 ゴブリンたちは武装していた。汚く錆びたショートソード、ぐちゃぐちゃに汚い革盾、木をそのままくりぬいた様なこん棒。

 奴らは曲がりなりにも連携を取って武器による攻撃を仕掛けてきた。


「間違いありません!こいつらは率いられています!」


 各自が精霊魔法を放ってゴブリンたちを薙ぎ払う。まるで無双ゲーの様に。

 横一文字に剣を振れば一気に五体ほどの首が飛ぶ。魔法を放てばさらに十体が吹き飛んで後続の奴らを巻き込んでいく。


「貴様!何故こんな所に来たんだ!?くそ!俺を罠に嵌めて亡き者にするつもりだったか!」


 アホの子ゼナンはほったらかしで良いとして、問題は斬られて消えていくゴブリンのそれだった。


(死んだゴブリンは青白い光を撒き散らしながら消えていってる・・・このパターンはアレじゃ無いのか!?)


 そう、先ほどから際限なく洞窟から出てくるゴブリンたちは、セレナたちに全く敵わずに切り伏せられ、あるいは魔法で吹き飛ばされてやられているのだが、一向にその死体が一つも残らないのだ。

 まるでゲームのエフェクトの様な光を出しながら跡形も無く消えていく。


「まさかとは思うけど聞いていい?」


 俺は一歩も動いていない。近づくゴブリンは全部エルフたちが始末しているから。


「何か気付いたことがあるのですか主様?」


 跳びかかってくる雑魚をエルフたちは円陣を組んで油断無く迎撃している。

 ゼナンは何故か一人で突っ走って集団の中でチャンバラしていた。


「こいつらって・・・迷宮産の魔物って事で、おーけー?」


「はい、そうです。それがどういたしましたか?」


(ダンジョンとかマジでか・・・知りたくも無い事実をまた知っちまったなぁ・・・)


 この世界の、そのどこまで行っても「裏切らない」展開に辟易してしまう。

 そうして溜息を吐いていると、とりあえず洞窟から出てくるゴブリンが打ち止めになった。その数はざっと数えていたが三百ほど。

 それだけの数が居たにも関わらずモノの見事に数分で全滅させたエルフは本当に強い。

 それでもこの強さは魔力に因るものだとハッキリ理解した。エルフの里の程、全員が今は魔力を使い果たして回復していないと言っているのだ。

 ならば魔力が万全であれば拠点を移すなんてせずに、こうして乗り込んでそのゴブリンキングを討伐する事を選んだだろう。


 だが、俺にはそこが問題では無かった。

 目の前で起きたダンジョン産魔物の氾濫、その異常な数が地上に出てきて暴れたのだ。

 これは要するにキングが戦争をしようと動き出した証拠と見ていいはず。

 いくつか疑問や謎が出てきたのでそこら辺を解決するためにセレナに聞いた。


「先ず、迷宮ってどうやってできるの?」


 何かエヌエ◯チケーの教育番組みたいな聞き方をしてしまう。


「未だにその原理は究明されてはいませんが、通説は有ります。自然界の魔力が何らかの原因、あるいは要因により収束し、それが高密度となって結晶になると言われています。その魔力結晶が自然にできた洞窟、あるいは人工的に作られた建築物等に現れるとそこは迷宮と呼ばれますね。」


「迷宮ができるとそこはどうなる?」


「ふん!無知な奴め。そんな事も知らんのか?その分だとここに来たのも何の考えも無しに来たみたいだな。」


近づいてきたゼナンがいきなり明後日の発言をするのでバッサリ言い返す。


「いや、お前に話しかけてないから、一切。」


「迷宮核と言われるそれはその高圧な魔力が作用して地形やその建築物に影響を与えます。その影響は法則性が無く、一つ言えるのはある一定の範囲まで広がると言う事です。」


「じゃあ、今この目の前の洞窟は中がどうなっているか分からない、と、」


「そうですね、入り口の広さや奥行きなどを見てまだ若い、できたばかりの物だと思われます。これが何年も経ったものなら内部構造は複雑でしょうが、これは一本道の様子です。」


「お前たちまさか内部に入って小鬼王を討伐する気だったんじゃあるまいな?」


「気付くの遅いなお前。ホントに呆れる程、アホの子だな。」


「貴様!その首と胴を永遠に切り離してくれる!」


 ギイィン!と金属同士がぶつかる音が静かな森に響き渡る。それはゼナンとセレナが切り結んで鍔迫り合いになった音だった。


「セレナ!引いてもらおうか・・・ここまで侮辱されてタダでは済まさん!そいつの首を斬り落とす!この先、永遠に無駄な口を叩けない様にしてやる!」


「主様が気にするなと言ったので放っておいたが・・・斬り掛かるとはいい度胸だ!今までの主様に対しての無礼千万極まるその態度!私が自らお前の頭を地面に擦り付けて謝らせてやる。お前の首を落とした上でだ!」


 まだ聞きたい質問があったのに二人は殺し合いを始めてしまった。

 残った五人のエルフは黙ってその行く末を見守っているが、セレナと同じ心境だろう。だから止めに行かない。むしろ全員が参戦してゼナンをぶっ飛ばして大人しくさせて土下座させたい、と思っているんじゃなかろうか?


「はぁ、メンドクサイ・・・この調子だと俺しか止める奴居ないじゃん。」


 俺は剣を一本魔法カバンから取り出して二人の喧嘩に割って入る事にした。

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