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163  手荒い歓迎

 夕方前には辿り着いた。そこには壁が視界一杯、目の前に広がる。

 太い丸太を重ねてそれをほんの少しの隙間も無くギッチリと重ねた防壁。

 そんなモノが何故森に没してしまわないのかと言えば、それも精霊魔法だそうだ。

 長老に受け継がれる「樹」の精霊がこの住処を守り続けている、そうセレナに教えられた。

 近づくにつれて門が見えてくる。物見櫓は二つ、それぞれに二人ずつエルフが弓を構えてこちらを牽制してきている。


「一旦そこで止まれ!動くな!」


 もうこの時点で歓迎されていない事が確定しているのを身を持って理解させられた。

 何故か?俺の足元に矢が刺さったからだ。当然「狙って」撃たれていたのは「加速」して分かっていたので躱したけれども。矢を放ったエルフは驚いた顔をして固まっていた。


(俺を真っ先に動けない状態にしようとしたんだなこれは。ホント鎖国で人族を受け付けていないんだな)


 だが本当の理由は違った。後に長老が言う所の「言い伝え」なるモノのせいと知る事になったが。


「おい!ゼナン!我らの大恩ある方に、我らが主様に矢を射かけるとは!いくら同族とは言え許せん!その首を切り落としてやる!」


 セレナがかなりの怒りを込めてそう叫んだ。そんなセレナは珍しく俺は直ぐにセレナを宥める。


「構わないからそういきり立つな。見っともないぞ美人が台無しになるから落ち着け。」


 少し冗談を込めて言ったつもりがマジに受け止められてしまったのか、セレナは突然俺から「美人」と言われて不意を突かれたのか、恥ずかしがって顔を赤らめてしまった。


「も、申し訳ありません・・・で、ですがこの様な・・・」


 ゴニョゴニョと言葉の後ろは尻すぼみに声が小さくなっていき聞き取れなかった。


「先触れを出してるからこちらの事情はもう知っているんだろ?こちらには敵意も無いし害意も無い。こいつらだけでも入れてやってくれないか?」


 エルフたちはやっとの故郷なのだから目の前で中に入れずお預けは可哀そうだ。

 それに手土産もチャッチャと片付けて魔法カバンも軽くしておきたい。

 そんな思惑で話掛けたのだが怒鳴られてしまった。


「お前は黙っていろ!貴様の処分は後だ!門を開けろ。セレナ、先ずは帰還した事を嬉しく思う。そのまま長老に報告へ行け。」


「主様、お側を少しの間離れます。どうかご容赦を。」


「行ってらっしゃい。ゆっくりしてきてもいいぞ。」


 俺はそう言ってセレナたちを見送った。しかしそれだけでは終わらせられない。


「あー、俺の持ってる荷物も入れてくれないか?手土産に運んで来たんだ。昨日取れたてホヤホヤ。何時までも俺が持っていても仕方が無いんで。俺は荷物を置いたら離れて動かないでいるからさ。」


「・・・良いだろう。その場に置け。そのまま手を上げて後ろに十歩下がれ。オイ!人員をこちらに回して回収してくれ!」


 ぞろぞろと十五人ほどが出てきて荷をほどいてどんどんと魔獣の素材を門の中に運んでいく。だが豚魔獣を見てヒソヒソ話が始まる。


「おい、これを丸丸どうやって運んで来たんだ?」

「にしてもこれは昨日の「アレ」のおこぼれか?・・・それにしても量が・・・」

「セレナたちのカバンは魔法で容量拡張されているらしいが?」

「いや、コレをお前らも目にしてるけど、そのまま運ばれてきてるじゃん?」

「どうでもいい。いや、どうでも良くないな。コレそのままじゃ運び込めないぜそもそも。」


 運びやすいモノは全部終わり、さあ最後は豚のみとなった所で作業が止まった。

 うんうん唸って移動させようとして持ち上げようとしているが、なかなか上手くいかないようで結果、その場で解体が始まった。

 これだけの巨体なので時間が相当かかると見込まれる。そこに一言声を掛けた。


「解体手伝おうか?俺がやれば一瞬で終わらせられるけど?」


 そう言った途端に物見櫓に居る先程セレナに「ゼナン」と呼ばれたエルフが怒鳴って矢をまた射かけてきた。


「余計な真似は止めてもらおうか!・・・また当たらなかっただと!?」


 またも俺の脚を狙って射かけてきていたので加速して避ける。

 当然加速中の俺の動きはそのエルフには認識できていない。オマケに避けた後に先程と違わず立っていた場所に戻っているので、矢がすり抜けた様に見えている事だろう。最初に射かけられた時も同様の事をして矢を避けているので、さぞゼナンと言うヤツは驚いているはずだ。


「風の精霊を纏わせた矢は百発百中・・・それがどういう訳だ?まさか精霊に干渉されて外されたのか?いやそれは有り得んはずだ・・・他に考えられるのは何だ・・・」


 ブツブツと俺を睨みながら何やら呟いているが気にしないでおいた。

 そもそも俺の目的はこの時点でほぼ達成している。


 セレナたちを助けた手前、責任を持って故郷へ送り届ける事がそもそもこの旅の目的だったから。

 何かと「主様」などと呼ばれて懐かれたりしたが、このまま俺が「故郷にそのまま残れ」と言って別れればそれでエルフ帰郷計画はお終いだ。

 そしたらエルフの「結界」外で、そこからより離れた場所に俺の住処を作れれば、ほぼ人生の目標も達成の見込みだ。


「またキマイラが居なくなってるな。まあいいか?ん~、縄張りでも作りに行ってるのかな?自由だなおい。」


 キマイラの扱いを今後どうしたらいいのかと悩んでいたら、セレナたちが戻って来て俺の前で野営の準備をし始めた。


「・・・どういうこっちゃ?どうなってるんだ説明してくれ。」

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