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1344  くるりと解禁

 もうどうした所で俺は注目を浴びたり、こうしてやりたくも無い事を押し付けられたりするのだ。それを回避しようと今までしてきた。

 けれども、ここにきてもうこの考えを捨てるべきだと、そう思ったのだ。俺の方が折れるしかない。もうこの先もずっとこんな風に何でもカンでもと言った具合に起きた事象に巻き付かれて逃げ出せないなら、正面から堂々とこの「力」を振るって引きちぎってしまおうか、と。

 そう言った考えになった方がよっぽど気持ちに余裕ができそうだと。気分が荒れたらグリフォンやキマイラと戯れれば解消する。

 もうここで俺は我慢や拒絶をせずに本気で今の自分を受け入れる事が求められるんだろう、と。


「もう俺、「俺TUEEEEEEEEE!」しても、・・・いいのかな?」


 バハムは全力を出せと言った。納得でき無かったら俺の申し出を聞き入れないと脅しても来ている。どれくらいの加減で最低限バハムからのOKを引き出せるかなど分からない。良い悪いの判断はバハム本人の気分次第だ。

 ならもう何も考えずに求められるままに力を出し惜しみ無く見せてしまって良いだろう。俺は魔法カバンから刀を取り出す。


「なあ?その一万ていう数はどうしてここに向かってるんだ?原因は?まさかこんな事がこの都市では日常茶飯?とか言わないよな?どうなんだ?」


 この質問にバルガが答えてくれる。


「私の経験で二度目だな。ジード老ならあと一回か二回くらいは経験しているかもしれないな。」


「ここに集まって来る奴らはどうやら「大きな力の解放」を感じ取ったモノたちだろう。それも、うーん、そうだな。人の基準で言えば「凶悪」と言った性質の魔物や魔獣たちだな。どうやら力に「中てられた」と言って良いかどうか。どうやら興奮状態であるらしい。近づいて来る魔力がそんな感じだな。ドイツもコイツも前しか見えていないらしいな。真っすぐに突っ込んでくるようだぞ?」


 バハムが続けて今回の件の「原因」の事を口走る。コレに俺は何となくだが理解できた。俺と「神」が接触した事にきっと起因するのだろう事が。


 そして一応は安心した。どうやら人にとって「凶悪」であるならばこちらも遠慮無く迫りくる脅威を「ぶち殺せる」と言うモノだ。


「とりあえずじゃあ俺が全部やる。魔物の死体は珍しい物は商人が買い取ったりするんだろ?なるべく運搬に距離を遠くするのもアレだし。買取に高値が付くよう綺麗に殺すけど。門の直前に奴らが来るまでこの集団留めておけるかバルガ?」


 どうにも俺の言っている事が納得いっていない様子のバルガ。ついでにバハムの言っていた事も半分も理解できてはいなさそうだ。

 それはそうだ。彼には裏の事情と言う物が分かってはいないし、知りもしない。そして俺が全部片づける、なんて言ったとしても保証が何処にも無い。

 門の目の前まで魔物の進行を許すと言うのはいきなり絶体絶命のピンチから戦闘を始めろと言っているようなものだ。

 俺の「力」を知らないバルガにはコレは仕方が無い事だ。直ぐに首を縦に振る事は容易じゃ無いし、集まった戦闘士を留め続ける事も考えると、それも難しいだろう。

 勝手に動き出す戦闘士も出てくるはずだ。いつまでも戦闘開始の合図をしない指揮官に苛立ちや焦燥を覚えて不審が湧く事だろう。

 そうなれば規律など無くなり各自がバラバラに魔物へと対処をし始めて余計な被害が拡大するはずだ。彼らは集団戦闘などと言うモノに慣れてはいないはずである。誰もがタイマンで戦いあい、勝ち負けを決める舞台で生きてきているからだ。


「やれるだけの事はするが、そうだな。最低限の戦線と言うモノは押さえておきたい。門正面のあの木々のある場所を魔物が超えたら、動く。それでいいかな?」


 バルガはこうして俺へと条件を付けてきた。木々のある場所はざっと100m。かなりの距離の近さだ。

 一万と言う数を考えたら既にその距離は死地と言っていい程だと見える。しかしバルガはそれでも魔物を屠り切る事は可能だと考えているのだろう。

 確かにこの闘技場都市の上位に君臨する戦闘士の力は、言わば化物級だ。自信、矜持などもそこには含まれた距離なのだろう。

 まあ、そんなものは俺が「力」を使って全力を出してしまうと、悲しいかな、吹けば飛ぶような代物だ。

 今回はここに集まった戦闘士たちのヤル気には悪いが、俺が全部片付けさせてもらう。


「さあ、俺の新しい人生の門出にしよう。俺ツエエ、うん、もういいじゃないか、解禁で。」

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