1323 まだ静かなまま
朝食を食べた後は一通り出発準備をして村を出た。別段この時にも何ら問題は起きないでいた。
この村へと依頼を受けていたであろう冒険者が入って来る所にバッタリだったのだが、しかも別段俺にその冒険者たちは一瞥もしないで村へ入っていったので拍子抜けなくらいだった。
もしかしたら一声くらいかけてくるんじゃないか?と思ったのだがそれも無い。
「非常に順調だ。本当にこのまま何も無いのか?もしくはあの村の魔物駆除の事は俺が出張る程のモノじゃないとか言った感じでスルーに?」
今までの事が事だけに、人の居る場所に着けば何かしらの火の粉が俺に降りかかってくるモノだとばかり考えていたが、そうでもないのだろうか?と考え直す。
でも、油断はできない。このまま道を行けばもしかしたら「テンプレ」に遭遇するかもしれないのだから。
と、そんな事を考えていた時がありました。そう、何も無い。今日一日ずっと道を真っすぐ進んでいたけれども、今、時間は夕方に差し掛かり、休憩場所として使用されているのだろう開けている広場に到着した。
これまでの道中、さっぱりとしたもので、トラブルの気配などこれっぽっちも無かったし、それらが急接近、などと言った事も無かった。
そして辿り着いた休憩場所にて今日は野営である。この場所には俺と同じような旅をしてきている人たちが十名程居る。そして別段問題になりそうな会話は発生していない。
せいぜい見張り役の取り決めをしたくらいだ。それぞれ旅人なのだ。他人である。けれどもこうして人数が集まったのならお互いの安全のためにも、周囲への警戒のためにも、夜番を相談するくらいの会話は交わす。
「じゃあ順番は決まった。それぞれ休息に入ろう。」
こうしてまとめ役をしていた男性がそう言って解散を宣言する。既に夕食は話し合いをしつつも準備を終わらせ、食事は済ませておいてある。後は寝るだけ。
俺はこの話し合いに参加しないでいた。見張りをする気は無い、と。しかしその代わりに俺の懐から見張り役になる者に銀貨を二枚出すと宣言しておいた。
俺の魔法カバンには貨幣は入れてある。それを放出するのだ。ブラックカードはこう言った時には使えない。なので現金は幾らかをしっかりとカバンの中に入れておいてあった。
どうせ今の俺は買い物をする状況に無いし、街へと付けばこのカードで買い物ができるだろうと考えている。
ついでに言うと昨日宿泊したあの宿ではブラックカードは使えなかったのでちゃんとニコニコ現金払いをしてある。
このおかげで積極的に俺以外の旅人たちは見張り役を進み出てくれたので話し合いはスムーズに終わっている。
彼ら夜番に決まった者たちに俺は約束の金を渡していく。それが済んでから俺はテントに入って就寝した。
(流石に何かしら起こるんじゃないか?ココまでやったら深夜か朝方にドタバタが・・・)
と思っていたら直ぐに朝になった。当然俺はグッスリ睡眠を取れている。コレに俺は訝しむ。
「もう俺には何かさせる事は無いって事か?隠居を目指しても良いって事なのか?いや、期待するのは止そう。裏切られた時の事を考えるとツライ・・・」
勝手に期待して、勝手に裏切られて、勝手に落ち込む。そんな滑稽な事をしたくは無い。独りよがりはまっぴらだ。
逆にコレはもっと大きな事への嵐の前の静けさだと心に刻んで、警戒して先を進んだ方が良いとまで考えた。




