1314 フラグからフラグへ繋がる
心底うざったい。ドイツもコイツも権力者で悪者と言ったら、自分の思い通りに世の中は回ると思っている。
そう言う風に考えない奴もいるだろう、居るだろうけど、今俺の目の前に居るこの人物はそう思っている。
俺の事をどこぞの何ら力無い一般市民として勘違いをしている。俺が権力などに屈しない態度を見せているのにもかかわらず、どうにもそんな事はこの王弟には只の強がりにしか見えていない様子で。
「これ以上は付き合えないよ。じゃあ、もう二度と会う事が無い事を願ってます。さようなら。」
俺はここで加速状態に入ってさっさと庭を去る。当然この状態になっていれば王弟は俺を呼び止めるばかりか、追いかけても来れない。フリーズしている。
この場に来た俺の目的は果たした。王女の件の理由を知ったのだからもうここに居る意味は無い。さっさと門に向かう。
しかし当然門は閉じられているのでどうしようかと考える。穏便に開けるか、それともこの抱えたストレスを開放するままに蹴り破るか。
で、出した結論は穏便に済ませる方を選んだ。一度加速状態を解いてから閂を外して門を開く。
人一人が充分通れる隙間ができたら、すぐにまた加速状態になってそこから出て行く。そのまま俺はこの国から出て行くためにこの状態のままで街の外へと出るために街外壁方面へと向かう気で歩き出す。
(さて、どっちに行けば一番近い?とは言え、このまま歩き続けていれば追手は来ないから真っすぐに歩き続けりゃどこかしらに付くだろ)
王弟とのやり取りが大分ストレスではあったが、俺はもうこの国から出て行くのに別段の心残りはもう無い。
なのでこのままこれ以上この件に余計な首は突っ込まない事を誓ってそのまま歩き続けた。
そこそこ距離を行くと街の中心部に向かうのだろう大通りに出てしまう。人の数が多くなっていた。
しょうがないのでここで俺は加速状態を解除する事にする。こうなると王弟が目の前から俺が消え去った事に驚いて騒ぎ始めるだろうが、俺を捜索する人員を集めるのにはまだ大分時間も準備も掛かるだろう。
「あ、マント羽織ってフードも被らにゃならんか。目立つなあ、俺の黒いのは。」
今更ながらに改めて思い知る俺の黒さ。周囲に意識を向ければ人々は「金髪碧眼」が当たり前。
俺のこの黒いのはどうしようもなく目立つ。いっその事染められないかと思ってしまう。
「いや、できないだろうな。金髪にするとなると先ずは色を抜かないといけないだろ?その後で染めるんだよな?金髪って。髪が滅茶苦茶痛むって言うしな。正直言ってやりたくは無い。まあそもそもそんな技術やら何やらはこの世界には無いんだろうけどさ。」
金髪しかいない世界で髪を金髪に染めるとか、阿呆の考える事だ。そんな染髪技術がこの世界で発展している訳が無い。
「あ、白髪になったら染めるとか?若作りに。でもなあ?この世界のお年寄りの髪ってスゲー綺麗な銀髪寄りなんだよなあ。染める意味あるんか?って言うくらいに、俺からして見たら綺麗なモンなんだけど。」
くだらない事を考えながら俺は大通りの中へと入っていく。このまま真っすぐにいけば街の外に出る門に繋がっているだろうと考えて。
そしてこう言ったクダラナイ事を考えている時に限って遭遇する。嫌なものに。
「あー、フラグだよなあ。王弟が話をしたじゃないか。第二王子はクソ野郎って。それを忘れて呑気に俺は何てクダラナイ事をグダグダと考えながら歩いてるんだよ・・・」
フラグ即回収。目の前の人だかり。そこからは叫び声が響いていた。
「お許しを!この通りでございます!どうか娘には手を出さないでくださいまし!殴るなら私を!」




