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1312  外道のする嫌がらせは

「さて、私の駒が上手く動いて王女を引っ張り出せた。架空の組織が王女の命を狙っている、と言う理由でね。おっと、この組織の作りこみも私の自信作でね。いい出来なんだよ?ああ、それでね。あのまま森を彷徨って死んだら死んだで構わなかったんだ。それならそれで私も計画はその方面で進めるしね。さっきも言ったけど、殺すのは面白くない。で、だよ?じゃあ生きていた場合だ。」


 もうこの王弟の話を聞いているだけで心が疲弊する。しかしまだまだ理由はあるのだと言うので大人しく聞く。


「生きて街まで戻って来たとしようか?そしたらその首には何が嵌っている?そう、君も見たよね?首輪だ。隷属の首輪だ。奴隷と判断されて街へと入れて貰えないだろうね。そもそもそんな怪しい人物を街には入れられない。奴隷とされているような者をそう簡単に街の中へと入れられないのは当り前さ。もしくは直ぐに王女と分かっても迂闊には扱えない。なにせその隷属の首輪にはどんな「命令」が仕込まれているか分かったモノではないからね。」


「そういった嫌がらせにも意味を込めてるって?」


 俺は相槌を打つみたいに軽くそう聞いておく。王弟が話をしやすいように、俺が話をちゃんと「聞いてるよ」とアピールする狙いで。


「そうだよ。街へと入れなければそれはそれ。そしてこの事が侯爵令嬢の耳に入れば、彼女は王女を助けようとするだろうね。さあ、疑心暗鬼の王女はそれにどう言った態度を取るかな?それこそ首輪の事もある。さあ、どうなるかな?」


 クスクスとそう笑う王弟。胸糞悪い。俺は胸やけを起こしそうなくらいに不快な気分にさせられる。


「そうやって王女が保護されても首輪は取り外せない。で、どの様な経緯があったかを王女に聴取を取るわけだ、国王自らが。そうなると首輪の力が発動する。この私が丹精込めたそれがね。虚偽を口にするんだ。王女の意思を捻じ曲げてね。そうなれば城は混乱をする。貴族たちは誰もかれも疑心を抱いて内部分裂をし始めるだろう。奴らはそれほど強固な結びつきじゃない。今回王女が城に戻ってきたら一番面白い展開になる案を進めていた事だろうね。」


「その一番面白そうな方向に話が行か無さそうでちょっと不機嫌?」


 俺のこの問いに少しだけ残念そうな顔を見せて王弟が分かりやすい溜息を吐く。


「そうなんだよ。君の事も、賢者の事も、想定に入れていないんだ。もう勘弁して欲しいよ。」


 俺はこれに付け加える。お前の予想外はもう一つ起きていたんだよ、と。


「どうやら王女を連れて行った奴らとは別の二名があんたの知らない所で悪さをしようとしていたんだけどな。それはいいのかよ?」


「ああ、君の調書は読んだよ。確かにねぇ。私もそこら辺の細かい所には目を光らせられていない部分もあったりするからね。まあ森で彷徨い死ぬのとあまり変わらない結末になったんじゃないかな?それならそれでよかったよ?ああ、でも王女を違法な方法で人身売買などで地方へ流されていたらちょっと面倒だったかな?」


 心底この王弟の根性は腐ってる、外道の所業。俺はそう判断した。いつもの俺ならここで始末をつけていたと思う。思わずぶん殴る、と言った形で。

 でも、今回はもうこれ以上は俺から必要以上の突っ込みは入れない。この件の犯人の動機、理由は分かった。ならば最初に考えていた通りに俺はここを後は去るだけだ。

 王族のドロドロは勝手にやっていてくれればいい。俺がそれに巻き込まれないのならいくらでも。


「じゃあもう理由は分かったから俺はサヨナラさせてもらうよ。」


 俺はこの庭から門へと向かおうと王弟に背を向けようとしたのだが。


「ああ、逃がさないよ?王女誘拐犯の、ああ、君の名前は何て言うのかな?まだ聞いていなかったな?君にはド派手に死んで貰いたくってね。」

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