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1311  動機は何処に?

「さて、何が聞きたいのかなぁ?君は何を知って、何を求める?」


 王弟はその薄ら笑いはそのままに、演技じみた動きで俺へと質問を許可してくる。両手を広げ、胸に手を当てると言った動きが一々うざったかった。


「なかなか太っ腹だな。聞いていいのか?ああ、別に質問をしたからって答えを聞かせてくれるかどうかは別って事か。うーん?何であんな回りくどい、ものすごく回りくどい事を王女にしたんだ?その理由が気になってさ。それだけ聞きたくてこうして大人しくここまで連行されたんだけど。それを聞けたらさっさとここから出ていきたいんだけどな?」


 俺は侯爵令嬢の所から出てきた時に心に決めた。今回の事にはかかわらない。流れ的に巻き込まれた時にはちゃんと足掻いてケツ捲って逃げ出す事を。

 会話をこうしてしているのはただ単にタイミングを作り出そうとしているだけだ。「力」を使えばこんな長々とこの場に滞在しないでもすぐに逃げ出せる。

 それと単純に本当にこんな回りくどい事をした理由を知りたかった。なのでそれが分かったらすぐにここから出ていくつもりだ。俺を引きずりこもうと、タイミングばっちりに行く手を阻もうと何かが出てきたとしても。


 一応は侯爵令嬢とのやり取りの時では上手く屋敷を出る事ができた。ならばこの王弟とのやり取りでもきっとできない事は無いのだ。

 ここは「力」を発動させて加速状態になっても被害は出ない。街中では加速状態で周囲の人に少しでも掠っただけで、何の関係も無い人に被害が及ぶ事を恐れて逃げ出せないと言った所だが。

 ここには都合良く誰も周囲に居ないのだ。ならばこの場を去れない訳が無い。


「ふむふむ?よろしい。誰かに私の心の中を聞かせて見ると言った事も、相手の反応がどうなるかが見れて面白そうだ。」


 こうして俺の求めに応じて王弟は話し始めた。


「兄上は、国王陛下は優しすぎる人物でな。残酷な決断と言うのをしないのだ。王としてはそれでは半人前以下だろう?だからさ、兄はその椅子を私に明け渡すべきなんだよ。」


 いきなり何言ってんだコイツ状態だ。しかし俺は考え直した。素直にこのまま一人語りをさせていれば、回りくどい方法を採った理由が聞けると言うのであればこのままでいいのだ。

 この件での一番気になる部分が聞けてすっきりできれば直ぐにでもこの国を出ていける。もやもやを残さずに。


「だけどさー、周囲の奴らは私の味方をしてくれないんだ。だから私はじっくりと、自分が楽しむ事を含めて計画を練る事にしたんだよ。その一つが今回の事件でね。」


 こいつロクでもないな、と思いながらじっと俺は話に耳を傾ける。心をざわつかせる耳障りが悪い王弟の声に我慢しながら。


「なかなか良くできた嫌がらせだと思うんだ。この件を実行するうえで一番苦労したのは各所に私の部下を潜り込ませてじっくりと「なじませる」事だったよ。コレは時間が掛かるし、時間だけが上手くいくためのカギだったからね。いやー、今回の結果は凄く満足のいくものだったんだけど、ね?」


 自らが王の椅子に座るための計画を「嫌がらせ」などと言う王弟の精神が分からない。「自分が楽しめる様に」などと言った理由まで付けて実行する、実行している事が驚愕だ。

 長年かけて各所に染み込ませた自らの駒、その使い道がこの様な中途半端な王女誘拐事件を起こす事だったとはどう言う了見なのか増々分からなくなる。


「今回の事でね、私の駒が思い通りに動いたと言うのは素晴らしい事なんだ。コレでまた一歩、計画を進められる。と思ったら、君が出てきた。ましてや王女は賢者と共に居るらしいじゃないか?ダメなんだよなぁ。私の計画に狂いが生じそうになる邪魔者は消えて欲しい所なんだが。」


 まだ次の段階があるらしい。まあ気にならないと言えば嘘になるが、俺はこの場で王女誘拐事件の中途半端なやり方の「意味」を知る事ができたらここから、この国から出ていくつもりだ。

 王族のごたごたは俺抜きで勝手にやってくれ、と言う事だ。今回は本気で深い部分までこれ以上はかかわらない気でいる。


「おっと、話が逸れかけたね。それじゃあ何でこんな中途半端な真似をしたのかって言う事なんだがな。中途半端じゃ無いんだ。狙いをいくつか込めていていてね。どう転がって行っても面白くなるように、と、そう言った事を考えての事だったんだよ?殺したらお仕舞いだからね。楽しくないじゃないか。」


 もうここらへんで俺はお腹いっぱいになりそうだった。王弟は頭おかしい、それだけは充分に理解ができた。

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― 新着の感想 ―
[一言] この手の話は結局聞かなきゃ良かったとか、聞いただけ無駄だったとかそういう結末になりがちだねぇ。 だからといって聞かないわけにも行かなかったりするジレンマ。
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