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1306  短気が本気

「お止めなさい。御免なさいね、彼は非常に短気なの。貴方が落ち着いて気持ちの整理をつけてから話してくれればいいわ。お茶でも飲んで肩の力を抜いて。」


 マッチポンプと言えばそうだ。怖い怖い短気な騎士が相手を脅し、それを諫める侯爵令嬢。これでマリストラ侯爵令嬢の印象は穏やかで優しい落ち着いた人物だと印象付ける。

 そうなるとそうした作り出した印象で話をしやすい空気に仕向けて「怒らないよ」とのアピールにこちらの緊張を解こうとしてくる、と。


 こうやって俺はソファに座るよう、お茶を飲むように勧められたが、立ったままでいる。腕を胸の前で組んで「うーん?」と唸る。


「先に聞いておきたい事が多すぎて質問したいんだけど、何から言えばいいか分からんなあ?そうだなあ?先ず、侯爵令嬢様は俺の敵か?」


 俺は真剣に聞いた。これには言葉が足りなかったな、とは思えども、端的に、率直に、単刀直入でこの答えだけは一番最初に聞いておきたかったのだ。

 コレは俺からの勝手な事情を押し付けているだけに過ぎない。この質問の意図などをマリストラ侯爵令嬢は理解などできないだろう。

 そして思った通りに護衛の騎士の顔が真っ赤になる。怒りで、だ。


「貴様あ!自分がどの様な立場に居るのか理解できておらんのか!マリストラ様の求めに応じないどころか!その口は何をほざくか!」


 マリストラ侯爵令嬢が止めようとするよりも早く、その護衛は剣を抜いて俺へと斬り掛かって来ていた。

 相当に怒りのツボにでも入ったのか、もしくはこれすらもマッチポンプ用の演技か。まあ、顔の赤さでコレが本気で怒っていると言うのは即座に分かったが。この騎士が短気だと言うのは本当の様だ。


「護衛の騎士がこんなに短気で務まるのかね?いや、務まらねえな、普通。じゃあ今この状況は普通じゃねーんだな。」


 俺は既にそこにはいない。護衛の騎士の剣の先は床に刺さっている。と言う事はこの護衛は俺を一息で、一振りで殺す気で剣を振り切りっていた、と言う事に他ならない。

 護衛が剣を抜いた時にはもうすでにそちらへと俺の意識はいっていた。マリストラ侯爵令嬢の背後にその護衛は居たので、そこから俺との距離的に見て充分躱すのに意識を集中する時間の確保は簡単だった。

 加速状態に入って俺は部屋の窓際に近寄ってから「力」を解除した。恐らくはこの護衛には俺が「消えて」見えただろう。


「貴様!妖しい術を使うか!マリストラ様!お逃げを!こやつはいかにも危険に過ぎます!」


 これにはさすがに侯爵令嬢も慌てたようだ。ソファから立ち上がってこちらを見つめてきた。いつでもその身が逃げ出せるように俺を観察してきている。

 それを守るように護衛は剣をこちらに向けてきているのだが、そこで侯爵令嬢が声を掛けた。護衛に、である。


「剣を収めなさい。聞こえませんでしたか?貴方は部屋を出て行きなさい。これでは話ができません。護衛の交代を呼んできて。・・・私の命令が聞こえないのかしら?」


 こんな状況になってもまだ侯爵令嬢は俺の話をちゃんと聞きたいと言う事らしい。どうやら器がデカイようだ。


(王女を嵌めた?この侯爵令嬢様が?どうにも変だな?面倒な事はこれ以上は勘弁してくれよ・・・)


 何だかどうにもまだ裏がありそうで、そんなものに引き込まれたくない、と願いながら俺は大きな溜め息を吐いた。

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