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1303  取調室

 その後、御用となった男は喚きながらも連行されて行った。俺はと言うと。


「君、あの男に襲われていたね?怪我は?ああ、それと悪いんだが、事情聴取を行わなければならない。一緒に来てもらえるかい?」


 俺はコレに素直に従う。別にここで逆らっても良い事は一つも無いからだ。なので素直にこの声を掛けてきた衛兵の後ろを付いていく。


 そうして街の中へと入り、衛兵詰所だろう建物へと入る事になった。どうやらちゃんとした取調室に連れて行かれたらしく、そこの部屋はまさしく「B級サスペンスドラマ」で良く見る様な小さな小部屋だった。


「で、君は何故あの男に襲われたんだい?理由も無くあんな風に男が君へと斬り掛かるなんて、相当に恨みを買っているんじゃないかな?」


「はあ、そうですね。確かに恨まれても仕方が無い事をしたかもしれません。最初は二人組でしたが、片方は俺が殺しましたので。」


 俺が正直に喋ったら取り調べをしてきていた衛兵がギョッとした顔になった。しかし次には冷静な顔つきに戻って質問を続ける。


「詳しく話してもらって良いかな?君は殺人犯?それとも?」


 余りにも正直にモノを言うのは時に誤解を生むものだ。順序立てて説明をせずにぶっ飛ばした言い方をしてしまったのでこの衛兵に勘違いさせかけてしまっている。


「あの、信じられないかもしれないんですけど。あの森の奥に俺はいきなり気が付いたら居たんですよ。」


 俺はあれやこれやと話の「選別」をするのが面倒になってしまい、森に転移してきたと言った部分だけを言わない様にしてその後に起きた事を全部吐き出した。

 それこそ王女の事も、賢者だと王女から言われていた爺さんの事も、洗いざらい喋ってしまう。


 これを聞いていた衛兵が「ちょっと待って!書記官!書記官を呼んで!」と叫んで俺の説明を途中で止める。そしてまた一から説明をしてくれと言われてしまった。


 それらを全て説明し終えた後に衛兵と書記官は部屋から出て行ってしまう。急いだ様子で。俺を置いてけ堀にして、だ。


(コレはマズったか?・・・ああ、俺から王女やら賢者の爺さんやらの話を積極的にしちゃったら、この問題に関わっているのと一緒だな?不味いぞ?まさかコレってこのまま、ここに閉じ込められる?もしくは何かしらの容疑者に勝手にされて牢獄行き?)


 俺はそもそも油断していた。迂闊に過ぎる。王女とも、爺さんともこうして物理的に離れているのだから、もうかかわる事も無いだろうと思ってしまっていた。

 そんな気が緩んでいる状態でこうして取り調べを受けて、何も考えずに「洗いざらい」喋ってしまったのは俺の過失だ。大いに過失だ。


「まさかこのままずっとここで待たされ続ける?やべえな?逃げ出した方が良いか?でも、そうなると俺の事が勝手に犯人に仕立て上げられていたりすると余計に面倒だし・・・」


 このままここに残っていたとしても、偉い人の一声で「犯罪者」として決めつけられてしまうと言った事はあるあるだろう。どちらにしろ俺は最悪なパターンになると、罪人としてこの街でウォンテッドだ。


「ヤバいぞ?どんどんと白けていく自分が分かる・・・そう言った最悪パターンになった場合には俺を犯罪者だと決めつけたそいつがこの件の犯人だって言う確率が一番高くなるだろ?そうなったら俺はどうやってその汚名を雪げばいいって言うんだ?」


 俺はこうして最悪パターンにならないで欲しいと願いながらも、未だに戻って来ない衛兵を待つ。

 最悪の方に話が転がって行かなかった場合でも、俺の自由がこの後にどうなるかはちゃんと衛兵の口から聞いておかねばならないからだ。

 今の俺は「街道で男に突然斬り掛かられていた被害者」だ。なのでここで逃げるなどと言った選択肢は無い。逃げた場合は「何に対して?」逃げたのかが衛兵たちの疑問になる。

 そうなったら俺は犯罪者では無くとも要注意人物だと言う点でこの街で捜査対象へと変わるだろう。そうなったら身動きがこの街で取りにくくなる。


「・・・ああ、別に俺はこの街に何ら未練も何もないから暴れたって別に良いか。この街には初めて来たんだし?思い入れも無いし、知り合いもいないし。別にどうって事無いな?」


 こうして衛兵がいつまでも戻って来ない間考え続け、俺は白けていく心のままにこの結論に至り、精神の安定を得たのだった。

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