1298 今こそ大脱走、でも捕まる
飯を食い終わって30分程食休みをしてから俺はテントの中に入る。そしてすぐに寝袋の中に入った。
森を抜ける方向を示さない爺はいい加減無視だ。そして問題抱えた王女も知らん。
俺は気が少々立っていたのかもしれない。こうしてこちらのレブン大陸に戻っては来れたが、その代償はどれ程だろうか?
ロボとの戦闘に、これまたワープに次ぐワープだ。こうまで振り回されると俺も堪ったモノじゃない。不貞腐れると言うモノだ。
一旦全て寝て忘れる。翌朝の俺が何とかする。それでもういいだろう。溜まった心の疲れを癒してくれるモノはここには無い。唯一、睡眠だけが精神回復手段だ。
俺は黙って目を瞑り、努めて何も考えない様に呼吸を整えてそのまま眠りについた。
そして翌朝。俺はぼーっとした頭で考える。そして現状を思い出すと不機嫌になる。
「何も解決してねぇよ。マジかよ。どうすっかな。もうこの際だから遭難確定で俺一人だけでここから離れた方が良いか。」
王女の問題は勝手にやってくれ、と。爺さんは賢者なんて言われていたくらいだから、良い知恵を王女に貸してやればいい。
そこに俺は一切関係無い。関係無いのだ。巻き込まれる前に今回は多少無理矢理にでも王女と爺さんから離れようと決心した。
「まだこの時点では俺の中にモヤモヤした気分は発生してない。これ以上深い部分にまで巻き込まれていたら分からんかったけど、これなら・・・いける?最初で最後かもしれないけど、今回だけはもしかしてこれ以上は巻き込まれないんじゃないか?」
俺は淡い期待を持つ。今ここからこのタイミングで出発すれば俺はこの国のゴタゴタに巻き込まれないで済むのでは?と。
「よし、外には・・・爺さんも王女もいないな?片付けをしちゃうか。朝食は無しにして速い所ここから去ろう。」
俺はテキパキと片付けを熟す。そして素早く全てを片付け終えたら気の向くままの方向へと歩き出そうとして思い止まる。
「どっちに向かったって運だ。情報は一切無い。あ、いや、爺さんを見つけた方向はあっちか。ならソコへ先ず向かった方がより街に辿り着ける可能性は高くなりそうだ。」
俺はこの森で出会った爺さんとの最初の場所へと方角を決める。そして今度は振り向かずに真っ直ぐに止まらず森の中へと入った。
そうして歩き続ける事、一時間。どうやらまだまだ森を抜けないのか、あるいはもしかしてあらぬ方向に、見当違いの方へと向かっているのか。一向に人の気配を感じられない森の中だ。
「やっぱりこうなるよなぁ。でも、もう決めたしなぁ?ソレに今こうして森を行っていて、爺さんと王女とまた顔を突き合わす、って言う感じになっていないし。成功って言えば、成功なのかな?油断はできないけどさ。」
これまでだと俺が去ろうとするとその行く手を絶妙なタイミングで塞がれたり、もしくは引き留められたりなどをされていたはずだ。
だけども今回はそれが無い。俺は内心でコレに喜びつつも油断はしない方が良いと心を引き締める。
もしかしたら斜め上の、俺の予想だにしない方法でまた巻き込まれる可能性があるからだ。
有り得ないだろうって位のご都合主義なんかが最大の敵だろう。俺はそう言った事に幾度も遭っている。
「おい、きさま。そこで止まれ。このあたりに女が居なかったか?」
このフラグ高速回収に俺は眩暈がして倒れそうになった。




