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1295  頭固い、頑固

「あそこの御令嬢か。まあ、そこら辺は分かったがの?で、どうするんじゃ?それでもまだまだ城に戻りたいのか?」


「真実が、知りたい、と言うと恐ろしいです。御姉様の本心を、どうしてこのような事を私にしたのか。ですが私は王族、行かねばならないのです。」


 何ともまあ頑固だ。でも、こうした性格に育ったことは、別段王族と言う意味では失敗と言う事にはならないのだろう。寧ろ、成功したと。まあ言い方が悪いが、そんな風に言うと。


 さて、コレでどうこの後に展開が転んでいくのか、またしても俺は空気になろうとした。だけどもそんな俺へと声を掛けてくる王女。


「・・・私はここにこうして居続ける訳にはいかないのですが、貴方はどうなのです?森を抜けたいと仰っておりましたね?ならば私の御供をして頂けませんか?賢者様はどうにもお力を貸して頂けない様子。ならばもうここに留まるつもりはありません。私と共に参りませんか?」


 顔を上げて俺へと視線を真っ直ぐに向け、王女はそう言って来た。俺は後悔した。あの思わずツッコミを入れてしまった事に。

 あの時にツッコミさえ入れずに我慢できてさえいれば王女がこちらに意識を向ける事は無かったのではないのか?と。

 そして内心で王女に「早まり過ぎだ」とツッコんでいる。俺が何者かも、善性か悪性かも知らない、調べようとも、観察しようともしていない状態で何故ここで俺に頼ろうと思ってしまうのか?そんな申し出をしてきてしまうのか?

 焦り過ぎだ。落ち着けば今の言葉が迂闊に過ぎるモノだったと理解できるだろうが、今の王女の心理的に見て「早く戻りたい」と言うのがあるのでこの場では何も疑問にも思ったりしなかったのだろう。


 ここで俺が黙って居る訳にもいかない。何せ相手は王女だ。返事をせねば無礼になる。だけど俺は冷静になって考えた。

 別に俺はこの国の国民じゃないし、ましてや権力とかどうでもいいとか思っている質だ。そしてこのような森の奥でこの家に三人しかいない。

 ならば俺が別段王女にへりくだるとか畏まるといった態度で接しなければならないと言う事も無いだろう。はっきり言って、そんなの面倒臭い。


「あんたな?この爺さんがそもそもどっちに行けばいいかを教えてくれなけりゃ森すら抜けられ無いって言ってるんだよ。運に任せて適当な方向にでも行ってみるか?それこそ、運良く城に行けたとして、それで?さっきの話の問題を解決できてもいないのに、どうするって言うんだ?俺が付いて行く?お供に?それ、俺の利点は何だ?そこで俺が得られる物が何も無いのに、いきなりはい、行きます、とはならねえよ。」


 この頭固い王女に少し呆れた部分もあるので、俺はぶっきらぼうにそう言い放つ。

 コレに再びギリリと歯を食いしばって悔しがる王女。そこに爺さんが余計な事を言いだした。


「案内してやろう。別に暇潰しには丁度エエじゃろ。まあ、ワシは城には行かんが、街までは案内してやるわい。」


 最初王女に案内しないとか言っていたはずだ。舌の根が乾かないうちに言った事を引っくり返してきた。

 爺さんはしかも俺と王女をセットで、と考えている。これに俺だけで良いのに、と言えない。下手にそんな風に言うとまた爺さんが言った事をひっくり返してこないとも限らないから。

 ここで爺さんが案内すると言い出さなかったら、王女はきっと迷うのを覚悟で森に特攻をかましていたはずだ。この家にお留守番して頭を冷やせ、と言った所でいてもたってもいられず、みたいな感じで飛び出してしまうに違いない。そんな事になったら一層面倒な展開になるのは必須だ。


(このままなし崩し的に巻き込まれるのか・・・いつもの事?勘弁してくれ・・・)


 俺はそう思うしかなかった。王族関係、貴族関係、その他もろもろ、俺の人生はどうしてこう振り回されなければならないのか?どっと疲れが俺の肩にのしかかる。

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