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1293  懇願

 俺が言った言葉にどうやらある程度の納得がいったのか、女性は大きく深呼吸を二度した。そして次には自分の名を名乗る。


「私はキャレーナと申します。御老人、貴方のお名前をお聞きしても?」


「ほほう?ソレはまた。この国の王女の名と同じとなぁ?ははは、コレはこれは。おっと、ワシの名であったな。ケラロスと言う。まあ、そんな名はどうでもいい。今は只の爺じゃわい。」


 多分俺の事は今回の事に無関係だと判断したんだろう。この国の王女と同じ名だと言うキャレーナはこの爺さんとだけ会話をする気でいるみたいだ。俺は無視である。


(というか、またコレ貴族、王族関係じゃねえか!もうドロドロのグズグズな権力闘争の中に放り入れられるのは勘弁だぜ)


 今後の展開がコレで読めてしまうというモノだ。きっと俺はこの爺さんか、もしくはキャレーナに助けを求められて城への帰還に手を貸すとか言ったモノになるだろう。

 そうして城内のゴタゴタに俺も巻き込まれてさあ大変、と言った所か。


「ケラロス!?まさか・・・この様な森の奥に隠れ住んでいらっしゃったのですね。賢者ケラロス、どうか、そのお力を私にお貸し願えないでしょうか?どうかこの通り!」


 キャレーナが床に手を付き頭を下げて爺さんにお願いをし始めた。コレに困惑したのは、俺だ。


(ええ?どう言う事!?・・・爺さんが賢者?ふーん?いきなりな展開ではあるけど、あるあるだなぁ?俺の予想よりちょっと斜めに飛んだけど、まあコレはこれでその流れの邪魔はしない方が良いな)


 もしかしたらこのまま行けば、この王女が頼るのは賢者だと言う爺さんで、俺にはならないかもしれない。

 そうなれば俺はこの事案に全く関与する事無く、ジャアネバイバイ、ができる可能性が。

 二人の世界になっているこの場を邪魔してはいけないと思って、俺は空気になるつもりで気配を消そうと努力をする。

 王女様は賢者に頼り城に戻って今回の件の落とし前を付けに行く。そしてそこに俺は居ない。グッジョブである。そんな展開は今までに無い。ぜひその流れでこのまま行ってもらいたい所である。


「ワシの事を知っておったか。まあお互い様かのう?だが、王女のその願いは聞けんのぅ。ワシは城の中で起きるそう言ったくだらない権力闘争に辟易して出てきた身じゃからな。今更あの中へと飛び込みたいとは思えんのじゃよ。スマンが、助けてやろうとは思えん。」


 俺はおいおい、と一瞬だけ思ってしまう。けれどもこう言った展開も無くは無いのだ。テンプレとしてはこの後の展開的に見て王女がそれでも必死に爺さんに縋りつく、と言った感じか。


「そこをどうか!どうか!いえ!私を城へと連れて行っていただけるだけでよろしいのです!貴族、王族の愚かさをその目にしたくないというのであれば街にだけでも!私はいつまでもここに居る訳にはいかないのですどうか!」


 ハズレはしなかった予想、しかし王女様の要求がどんどんと下がる。力を貸してくれなくても良いから城へ、からの、街にまで連れてってくれるだけでいい発言。

 しかし必死さは伝わる。けれどもこの展開的に見てこの王女、一人でも戦う覚悟であるようだ。未だに頭を下げたままで上げようとはしないでいた。

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