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1289  話の順番

 目を覚ましたと言っても綺麗にゆっくりと起き上がった、と言った感じでは無く、ガバッと上半身をバネの様に跳ね上げて身体をかばうようにシーツと掴んで纏っての起き上がりだ。


「ここは何処!?あ、貴方達は一体何者なの!?・・・ふー、ふー・・・」


 一気に意識が覚醒したのはいいが、どうやら興奮が過ぎる。自分の身の貞操を気にしてそうやって警戒心を剥き出しにしているのだろうが。

 逆にコレに白けるのはこちらの方だ。何もしていないのを解ってくれなくては話ができない。しかもこうして俺たちに敵意を向けられたらできる話もできやしない。

 コレに爺さんが優しく語りかける。


「お嬢ちゃんが落ち着くまではゆっくりすると良い。それまでは何も言わんで待っておく。自分がどう言う目に遭ったのかを先ずは思い出したらええじゃろ。一旦深呼吸するとええ。思い出せたら話せるだけの範囲で良い。事情を説明して欲しいのぅ?」


 そう言ってズズズと音を立てて茶を飲む爺さん。コレに俺から追加する所は何も無い。

 どうやら俺たちが一向にそうやって動かずに茶を啜る事でこちらに害意が無い事を理解してくれたのか、女性は幾分か緊張を解いて身体の力を抜いている。


 そして静かに息を整え始めた。俺はこの女性の事情など聞きたくは無いのだが、だからと言ってこの森から出るための道しるべも無い状態だ。

 この家からこのまま出て行ってもまた森の中を彷徨うだけだ。爺さんから何とか森から出られて街や村に向かう方向くらいは教えて貰わねばならない。

 爺さんは今、この女性が落ち着きを取り戻すまで口を開かないでいる気だ。ならばここは俺の都合的にも付き合うしかない。

 先ずは真っ先に俺の都合を優先してくれそうにも無い事から、この女性の「事情」とやらに今回も巻き込まれるんだろうなと思う。


 そうしていれば自らの現状の整理がついたのか、女性は事情を話し始めてしまった。


「私は追放を、いえ、暗殺されたのだと思います。」


 コレに俺はウンザリと言うか、またかよ、と言うか、いきなりそんな事を言いだしたこの女性に「神経大丈夫か?」と問いたくなった。

 先ずは何故自分が今ここに居るのかと言った質問をするべきだろう。なのにいきなりそんなディープな切り出し方をしてくるなよ、と。


「こうして命があると言う事は、貴方達が助けてくださったのですね?どうも有難うございました。」


 そう言って頭を下げてくる女性。何だか気品が満ち溢れている。そんな風に俺が感じると言う事は、だ。コレは御貴族様のドロドロ問題突入だろうと確信した。


「あのさ、俺は無関係だ。あんたを助けたのはこの爺さんだぜ。」


 俺はなるべくこの女性の事情に巻き込まれないようにと、先ずは「関係者じゃ無いよ!」と、やんわりと断ってみる。

 すると爺さんがどうにも「ふむ?」とその白くて長い顎髭を撫でつつに言う。


「どうやらお前さんにはもっと深い事情が有りそうだが。どうする?お嬢ちゃんの前に、お前さんからワシに聞きたい事を聞いておくか?飛ばされた、とか言っていたじゃろ?何だかお嬢ちゃんが事情を話そうとしたら一気に顰め面になりおったなお前さん。どんな事情があるか全然読めん。」


 俺へと爺さんはそう聞いて来るのだった。

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