1287 どこからどこまでが罠だったのか?
3Dプリンタが有るから今では蝋人形と言うモノにしないでも本人そっくりな等身大人形はできたりするよな、などとくだらない事を考えてしまいながらも、爺さんの話を聞く。
「どうやらお前さんはこの嬢ちゃんの心配をしとるようだが、安心せい。ワシが助けたんじゃ。と言うか、お前さんは関係者でも無さそうだしな。どうしたらいいモノか。まあ、ワシの家に一緒に来い。この嬢ちゃんを早く休ませてやろう。」
互いの事情説明をするにしても、ここに何時までも居るのはかったるいだろう。爺さんの言葉に従って俺はその後を着いて行く。
「おう、交代してくれ。ワシはもうソロソロ疲れた。お前さんが嬢ちゃんを運んでやってくれ。」
俺は言う通りに交代してその女性を爺さんから受け取り御姫様抱っこで持ち上げる。
「あー、随分と軽いなぁ。ちゃんと飯食ってるのか?細い細い。なんか腕なんてぽっきりと折れちゃいそうに細い。・・・だけど、髪の毛は凄く手入れされてるな?・・・違和感が酷い、嫌な予感が酷い。」
もうここまで来た以上はこの二人にこの場所の話を聞いた方が自分の現状を理解するのに手っ取り早いだろう。だからこうして爺さんの案内で森の中をこうして素直に付いて行っている。
それにしてもこの女性の身なりの良い事。着ている服は一見はパッと見で冒険者「風」なのだが、パリッと綺麗で高級品だろう事が窺えるくらいには良い生地を使っている。
しかし胸には革の胸当てがされているのだが、この部分だけ「使い込まれた」物で大きなチグハグを生み出していた。
そして何より肌も綺麗なものだし、髪の毛の手入れも充分過ぎる位にされているキューティクルだ。
穿いているズボンは動きやすい生地で出来ているようで膝の部分の伸縮性が高い様子だし、履いている靴も良く磨かれてキラリと革が光っている。
こうして冒険者風なのにもかかわらず武器は一切持っていない。小さな一振りのナイフですらだ。
(何だろうか、前にも同じシチュエーションがあったようなキガス。この女性絶対に「良い所」のお嬢さんだよ・・・)
巻き込まれる事必至。俺はここで天秤にかける。このまま付いて行くか、もしくは爺さんに女性を託してトンズラこくか。
でもそれ以上は悩む時間を確保できなかった。到着してしまったのだ。
森の中のポツンと一軒家。しかも大分立派な造りをしていて頑丈そうだ。
「おう、中に入ってくれ。遠慮は要らん。入ったら奥のベッドにそいつを寝かせてやっておいてくれ。」
どうやら俺は完全に今回も巻き込まれるのを覚悟しなければならないらしかった。
「もうあの空き地を見つけた時点でこうなると言う事だったのか?・・・孔明の罠的な?」
どの様に考えても納得がしきれない俺は今更渋々と言った感じで家の中に入った。




