1279 ロボ
どうしても黒い神とやらは俺を追い詰めるのがお好きらしい。目の前にはまるで「アーマー●コア」に出てくるようなロボットが立っているのだ。
しかしその大きさは高さ2m程度、まあそれでも充分に大きいのだが。その胸部分には小型のバルカン砲のような穴が。
両腕にはロングライフルとでも言わんばかりな銃身に見える物が一体化している。そしてその両脚には三連ロケットランチャーのような物が。
頭部には赤い不気味なセンサーライトが光り、それでこちらを照らしてきていた。
「嘘だろ・・・排除って、俺、何だよな?・・・一体この島に何があってこいつはここを守ってるんだよ・・・」
ぴぴぴ、ががが、と未だにその俺へと向けているセンサーからは他に何も反応が無い。俺はゆっくりと後ずさりながらここからどうにか脱出できないかと思考を巡らせる。
ズリズリと摺り足で俺がこのロボから遠ざかる音だけが響いている。そしていつまで経ってもこちらへと何らアクションを見せてこないロボ。
だからこそ異変に気付いた。あのロボは漆黒の壁だと思っていた所からぬーっと現れた。俺の背後にもその壁があるはずなのに一向にその壁に背中が当たらない。それ所かどんどんと俺は後ろに下がり続けている。
しかしロボは俺をちゃんとセンサーで捉えているみたいだし、俺も闇の中に埋没して視界が無くなりロボを見失った訳でも無い。
お互いが見えている。こんな漆黒の空間の中で。そしてその距離が大体30mも離れた時だった。
「解析確認、相手は使者。行動を開始する。排除!排除!」
「やっぱりこうなるのか!」
俺へと赤い弾丸が迫って来る。それは「銃弾」では無いらしい。もしそんな物であったならばきっと俺は身体をハチの巣にされていたはずだ。
そう、これ、小さな炎弾なのだ。恐らくは魔法なのである。銃みたいな馬鹿げた速度で弾丸が発射されているのではないのだ。
幾分か俺の反射神経で躱せる速度。しかしそれが無数にばら撒かれたらこちらも堪ったモノでは無い。
「くっそ!何で加速状態に入ってるのに全然相手が止まらねえんだ!」
これには俺は参った。こんなピンチの時には必ずこの力に頼っていたのに、この今のピンチな場面で発動しようとも相手のロボは止まらないし、飛んでくる炎弾も空中に止まってくれる様子が無い。
俺はアクション映画さながらにロボ相手に半円を描く様に走り、その飛んでくる炎弾を躱し続けている。
「この真っ黒な空間のせいか!?くっそ!俺はここで死ぬのかよ!痛いのも苦しいのも熱いのも嫌だ!せっかく死ぬなら俺の意識を即座に絶って死んだ事にすら気付けないような殺し方をしてくれなくちゃ受け入れられん!」
「目標、未だ撃沈せず。次の攻撃を開始する。」
容赦無いロボの俺への行動が第二段階に引き上げらた。胸のバルカンが火を噴く。
それでもやはり炎弾が出てきているだけで先程の攻撃と変わりない様に見えた。
でも、油断は駄目だった。
「うおおおおお!爆発した!小っちゃいけど!爆発しやがったクソッたれええ!」
そのロボの胸から放たれた炎弾は爆発した。俺の側で。直撃とまでは行かなかったのは運だ。しかしコレで俺の行動をより一層阻害された事は確かだ。
小さな爆発が俺の行く手を遮るようにばら撒かれ、追撃に炎弾が俺を狙って飛んでくる。
「力を使ってるのに!加速状態に入ってるのに!通用しないとか!マジで辛い!」
俺が今までどれだけこの「力」に頼って来たかを心の底から実感する。そして恨む。
「黒い神って奴にもし出会ったら一発その顔ぶん殴る!」
俺はそう叫んで急カーブし、一方向に走っていたのを反転させて逆へと走る。その緩急に一瞬付いて来れなかったロボの挙動は少しだけ弾幕の隙間を作った。
俺はそこへと飛び込んでロボへと近づく。最初にロボから離れたのは失敗だったのだ。最初から即座に近づいて魔法カバンから刀を取り出して斬りつけていれば良かった。
「もう遅いけどね!もっと近づかないと!・・・おいおいおい!今度はそれかよ!」
 




