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1249  逆さまになる

 ソレは怒りだった。何で俺は今、逃げなければいけないのか?こうして何故俺が嫌な思いをしているのか?

 俺の方がこんな虫如きよりも圧倒的に強い「力」を持っているハズなのに、何故弱腰でこうして怯えなくちゃいけないのか?

 キレたのだ、とうとう。俺の感情は突き抜けてしまい、逆に頭の中が芯まで冷えてしまった。


 先ず先頭に出て来ていた蟻の頭を正面から唐竹割で真っ二つにする。あまりに勢い良く蟻が突っ込んできていたので刃がかなり食い込んで首の部分まで綺麗に切断してしまっていた。

 その動かなくなった躯をかなり強めに蹴り飛ばして二匹目に備える。所詮は虫、只の蟻だ。こいつも俺の正面からその顎で挟み込んで来ようとするだけ。

 単純で単一、そんな面白くも何とも無い動きしかしてこないのだからソレに捕まる何て事はあり得ない。

 横一文字に刀を振るう。蟻はその一撃で上下に分かれてずしゃりと地面を滑っていく。


 この時点で俺はまだ加速状態には入っていない。通常状態で二匹を片付けていた。無言で、無表情で。

 俺の中に燃える静かな怒りはこの時にはまだまだ鎮火する様子は無い。

 そのまま三匹目に突撃した。今度は蟻の眉間に「突き」をお見舞いする。そしてそのまま刺さった刀を力づくで上へと振り上げて頭を掻っ捌く。

 その振り上げた勢いをそのままに振り返って四匹目へと返す刃で一刀両断する。


 この時にようやく蟻は俺への包囲陣形を完成させていた。俺を追ってきていた蟻は最初十五匹だったので、ここで残り十一匹。


「お前ら、覚悟しろよ?追って来なかったら死んで無かったんだ。それをこうして一々俺にちょっかい出してきておいて、そのまま無事に帰れると思うなよ?」


 俺の言葉は魔獣に届いていた、今まで。なのでもしかしたらこの蟻にも届くかもしれない、なんて思ったがそんな事は無かった。

 どうにも虫には、少なくともこの蟻には俺の言葉は届かないようだった。囲ってきていた内の三匹が同時に俺へと突進してくる。

 でもやはり仕掛けてくる攻撃はその顎での挟み込みだけを狙っての攻撃だ。俺は間合いを計ってそのまま一回転をした。刀を横向きに構えて振り込みながら。

 ほぼ同じ間隔、同じタイミングで仕掛けて来ていた蟻はカウンター気味に、その刀の餌食になって三匹は同じ様に顔面を横に真っ二つする事になる。


「残り八。おら、来いよ。徹底的にヤってやんぞゴラ?」


 頭の中は凄く冷えているのに心の中が怒りで真っ赤っかに燃えている。俺は今「全てがどうでもいい」と思っている、心の底から。

 コレが治まるには目の前の蟻が全滅する事が条件だ。只それだけが俺の今の状態を元に戻す事ができる。

 怒りで我を忘れている訳でも無いのに、しかし怒りでこの蟻どもを許す事ができない。こいつらがすぐにでも俺の側から逃げ出したりすれば、恐らくは少しくらいは溜飲が下がると思われたのだが。


「こいつら・・・仲間を呼びやがった。危険を仲間に知らせてここから離れ去るように知らせるんじゃなく、俺を排除するために仲間を呼ぶのかよ。」


 脅威を取り除く、それは凄く大事な事だろう。でも、俺との力の差をこの蟻は理解できていないみたいだ。


「虫だから思考能力が無いのか?敵と見なしたから全力で狩るのか?・・・まあ、どうでもいいや。ホント、どうでもいい。全部潰せばいいんだろ?・・・俺に喧嘩売ってきた事を後悔させてやんぞゴラァ!」


 先程まで気持ち悪いと叫んで逃げていたのとは全く逆だ。俺は次々に集まって来る蟻どもを目の前にして闘争心がモリモリに沸いて来ていた。

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